2004年1月26日(月)「しんぶん赤旗」
参院選を前にした国会で、本格的論戦の場となった衆参の各党代表質問が終わりました。日本共産党と自民・公明、民主党の主張を比べると――。
今国会最大の焦点の一つであるイラクへの自衛隊派兵をめぐっては、日本共産党の志位和夫委員長、西山とき子参院議員が派兵計画をただちに中止するよう求めました。小泉純一郎首相は派兵を合理化する一方、与党もそれを後押しする質問に終始しました。
志位氏は、(1)イラク戦争は「大義」のない侵略戦争だった(2)テロ横行の原因になっているのは米英軍の不法な占領だ(3)自衛隊は法的にも実態的にも占領軍の一員であり、占領・占領行政を禁じた憲法違反は明確(4)国際社会は派兵拒否が多数派だ―という四つの根本問題を、連合国暫定当局(CPA)のブレマー行政官から日本政府にあてた書簡などの新資料も示して追及。西山氏も「違憲の自衛隊派兵の正当化に、憲法を持ち出すほど恥ずべきことはない」と首相の姿勢を批判しました。
小泉首相は「イラクへの武力行使は国連憲章に沿ったもの」「テロに屈してはならない」「自衛隊の活動は武力行使にあたらない」と繰り返し、問題の核心に正面から答えませんでした。
自民党は、額賀福志郎政調会長が「イラクの再建は…石油資源の九割近くを中東に依存する日本の国益にも直結する」と「国益」論をもちだし、竹山裕参院議員会長は「唯一の同盟国である米国との信頼関係の向上を図る」と「日米同盟」論を強調しました。
公明党も「国際社会の一員として支援する責務がある」(神崎武法代表)、「自衛隊の活動のニーズは高い」(浜四津敏子代表代行)と首相を“援護”しました。
民主党は、菅直人代表がイラク派兵を「憲法違反」と批判する一方、本当に必要とするなら「自衛隊をイラクに派遣できるような憲法改正を提起するのが筋」とのべました。松本剛明衆院議員は「わが国にとって必要なら、自衛隊の派遣も行わなくてはならない」とのべ、イラク国民による政権の樹立と国連主導の復興支援の枠組みがあれば「自衛隊の活用」もありうると主張しました。
民主党と小泉首相・自民党は改憲を競いあうという異常な論戦を繰り広げました。
切り出したのは菅氏。「国民主権の立場に立った新しい憲法をつくることを国民運動として国民に呼びかけた」と先の党大会での提案にふれ、「国民のなかで広く議論を」と呼びかけました。
小泉首相も「一党だけで憲法改正ができるとは思っていない」「お互い胸襟を開いて大いに議論をしたい」と応じました。
自民党の額賀氏が「新しい憲法草案を作成していくことが大事だ」とのべれば、民主党の松本衆院議員も「民主党は、安全保障にも憲法改正にも真正面から取り組む決意だ」と表明しました。
小泉首相は施政方針演説で「改革の芽を大きな木に育てる」とのべ、国民に痛みを押しつける「構造改革」路線を続ける姿勢を表明しました。
日本共産党の西山参院議員は「国民には耐えられない激痛を与え、得をしたのは大企業だけだ」と批判。「大企業応援でなく、国民生活を守る方向に転換すべきだ」と求めました。
与党から「改革の痛みがあらゆる方面に出ている」(自民・加藤紀文参院議員)との声も出たものの「これまで進めてきた構造改革を完成させていく」(額賀氏)、「国民に負担増という痛みと覚悟をお願いする」(公明・神崎氏)ことを求めました。
民主党の藁科満治参院議員は「総理の意欲には一定の評価」としたうえで「改革の実績は貧弱」「(小泉政権のやり方は)財務当局の意向にそったもの」などとのべ、「構造改革」路線を競う姿勢を示しました。
保険料引き上げと給付水準引き下げを国会審議なしでできる仕組みをつくる年金大改悪案。それへの姿勢も鮮明になりました。
公明党の浜四津氏は「年金改革の確かな道筋をつけることができた」と自画自賛。
自民党は「歳出の見直しだけで財源捻出(ねんしゅつ)はできない」(加藤氏)とのべ、自公の「税制改革」合意にもとづいて消費税増税に踏み出す姿勢を示しました。
日本共産党の西山議員は、年金改悪に反対するとともに、基礎年金への国庫負担を二分の一に引き上げるなど財源も示して安心できる年金制度の改革案を提案。年金財源と称して消費税率引き上げを狙う計画は「撤回すべき」だと迫りました。
民主党の菅直人代表は政府の年金「改革」案について「厚生年金の数字あわせ」と批判、基礎年金財源に消費税を充てる民主党案こそ「抜本的な改革」だと強調しました。
道路公団民営化や「三位一体」改革などで自民、民主とも「改革」の名に値しない政策を競ったのも特徴です。
政府の道路公団民営化案は、ムダな高速道路建設を続けるものです。
小泉首相と自民党道路族の「対決」と報じられてきましたが、加藤氏が「一日も早い成立を望む」とのべ、両者の利害が一致したことが浮き彫りになりました。
民主党は「高速道路無料化が最も必要」(菅代表)とのべ、急ぐ必要もない無料化に血税をつぎ込む立場を示しました。
補助金削減など自治体に負担を転嫁し、住民サービスの低下をもたらす「三位一体改革」について、自民党が「総理のリーダーシップを」(加藤氏)と政府が決めた四兆円の国庫補助負担金削減の断行を要求。民主党の菅代表は「補助金の原則全廃」を求めました。
日本共産党の西山氏は公立保育所補助金削減などを例に「予算を削減し地方まかせにすることをやめよ」と主張しました。