2004年1月28日(水)「しんぶん赤旗」
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本紙がイラク占領軍(CJTF7)にメールで送った質問と回答の訳は次のとおりです。 〔質 問〕2004年1月23日 CJTF7(第七連合統合任務軍)と、自衛隊の関係について質問します。陸上自衛隊はイラク南東部のサマワ周辺に駐留し、オランダ軍と協力することになります。 すなわち自衛隊は、CJTF7の指揮下に入るのでしょうか。それとも、独立した活動を行うのでしょうか。 〔回 答〕2004年1月25日 自衛隊は、CJTF7の指揮下に入ることになります。 サンチェス中将(司令官)は、彼らの特性を認識しており、自衛隊は彼らの任務の特性の範囲内で活動することになります。 グラント・キング少佐 連合軍報道情報センター、バグダッド |
「自衛隊はCJTF7(イラク占領軍)の指揮下に入る」との占領軍司令部の回答を示した日本共産党の穀田恵二議員の追及(二十六日、衆院予算委員会)は、自衛隊のイラク派兵は憲法違反の占領行政への加担という本質を突いたものとして、大きな反響を呼びました。この回答は、穀田氏の質問に先立つ二十三日、記者が占領軍司令部に問い合わせて、二十五日に送られてきたものでした。竹下岳記者
占領軍への問い合わせを思いついたきっかけは、先週来の国会審議でした。
「自衛隊は連合軍の指揮下に入ることはない。わが国の指揮下で活動を行う」「自衛隊は戦争に行くのではない、人道復興支援に行くのだ」。十九日に開会された通常国会。小泉純一郎首相は衆参両院の本会議で繰り返しました。
それはそうでしょう。「連合軍の指揮下に入る」ことは占領行為への加担を意味します。このことを認めれば、政府見解でも、憲法九条二項が禁じる交戦権の行使に当たるのですから。
しかし、そんなはずはありません。そもそも、占領軍司令部の意に反して、日本政府が勝手に自衛隊を動かすことなど、常識で考えてありえません。
日本共産党の志位和夫委員長が二十二日の衆院本会議で指摘したように、自衛隊には、イラク駐留軍隊に対する一切の裁判権を免除するとした、CPA(連合国暫定当局)命令十七号を適用することが、CPAのブレマー長官の書簡で確認されており、法的には占領軍の一員であることも確定しています。
「人道復興支援をやる」から戦争に参加するのではない、という理屈もまやかしです。
記者は二年前、アルカイダやタリバン残党の掃討作戦の前線司令部となっている、アフガニスタン南部のカンダハル空港を訪れました。当時、同空港には米陸軍の空挺(くうてい)師団や空軍が駐留しており、民家の襲撃や空爆を繰り返していました。記者が訪問した直後、彼らは民間人の結婚式を爆撃し、五十人以上を殺害しています。
一方、同師団は一般住民を掌握するために、学校建設や井戸掘りなどの「人道援助」も行っていたのです。
他国を侵略・占領する軍隊が右手で殴り、左手でアメを与えることは決してめずらしいことではありません。仮に、自衛隊の活動がアメを与えるだけだとしても、軍事占領の一環であることに変わりないのです。
「何か材料はないか」と考えているうち、「CJTF7」というホームページを目にしました。第七連合統合任務軍(別項)の略称で、イラク占領軍のことです。目を通してみると、彼らが報道機関の質問を受けつけていることを知りました。
米軍は情報操作やねつ造などを軍事作戦として行う一方、公開してもかまわない情報については、どこの国の報道機関からの問い合わせであっても対応します。
憲法違反と知りながら、姑息(こそく)なごまかしで軍事作戦を行う政府・自衛隊とちがい、「われわれは正義だ」と信じて疑わないからです。加えて、米国内の情報公開法が米軍にも徹底されているということもあります。
ただし、「将来の行動にかかわる内容」など、質問内容によっては回答を拒否したり、回答が返ってくるまで数週間を要することもあります。
そこで、質問を「自衛隊は、イラク連合軍(CJTF7)の指揮下に入るのか」の一点に絞り、二十三日午後、バグダッドに質問を送付しました。一刻も早く回答を得たかったからです。
二十五日午後二時三十分すぎ。英文でわずか三行ですが、「自衛隊はCJTF7の指揮下に入る」と明記された返答が返ってきました。
「自衛隊は彼らの任務の特性の範囲内で活動する…」という回答後段の部分には、彼らの検討の後が見られます。しかし、前線司令部からの回答が二日以内で届いたということは、自衛隊の任務が「人道復興支援」だろうと、治安維持活動や掃討作戦を意味する「安全確保支援」だろうと、イラクに部隊を派兵する以上、占領軍司令部の指揮下に入るのは当たり前だということを意味しているのです。
米軍を主体としたイラク占領軍のうち、地上部隊の司令部で、イラク占領行政の実力部隊です。
米研究機関「グローバル・セキュリティー」によると、「多国籍軍をふくむ、イラク内に駐留するすべての軍隊の行動を統制する」権限を有しています。現在、CJTF7の構成員として三十六カ国が部隊を派遣しており、米軍十三万人、英軍一万一千人、その他約一万人となっています。
CJTF7のホームページによると、「作戦地域において、残存する抵抗軍を打破し、不安定勢力を無力化するために、攻撃的な作戦を行う」ことを使命としています。
具体的には、フセイン政権残党やテロ勢力の捕獲・掃討、デモ隊の鎮圧などで、一般住民の拘束や殺傷も繰り返しています。