2004年1月28日(水)「しんぶん赤旗」
【ロンドン=西尾正哉】人権問題をテーマに国際的に活動する非政府組織(NGO)「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は二十六日、ロンドンで年次報告を発表し、米英が強行したイラク戦争を「人道的介入」と定義することはできないと断言。米英が戦争の口実とした大量破壊兵器の問題だけでなくフセイン政権の“非人道性”の点でも戦争に正当性がなかったことを強調しました。
大量破壊兵器の脅威を口実に軍事侵攻した米英両国は、主要な戦闘終結後も大量破壊兵器をイラクで発見できず、戦争の口実を“サダム・フセインがいなくなってイラク国民の生活は改善した”などと“人道的介入”へと変化させてきており、年次報告の指摘は、米英政府を厳しく批判するものとなりました。
同団体の発表した「年次報告」の冒頭論文でケネス・ロス事務総長は、サダム・フセイン前大統領に残虐な人権抑圧記録があるが、彼の最悪の虐殺は米英の軍事介入の相当以前に行われたと指摘。米英軍がイラクに侵攻したときには、予防的な軍事介入を必要とするような進行中または顕著な大量虐殺はなかったとして、米英軍のイラク戦争は「人道的介入」にはあたらないと結論付けました。
同論文の結論では次のように指摘しています。「軍事介入は、イラクの虐殺をストップさせる理性的な最終の選択肢ではなかった。軍事介入は人道的な懸念が主要な動機となったものではなかった。国際法の順守を強化するやり方で行われなかった。国連安保理の承認もなかった。…軍事介入はイラクの人々のニーズを第一に念頭において計画が立てられたり実行されたわけではなかった」
ロス氏は、報告発表の記者会見で質問に答え、イラク戦争の理由について、「(米英の軍事侵攻の理由としての)大量破壊兵器は消えていってる。また、人道的介入という正当化もあてはまらない」と指摘しました。