日本共産党

2004年1月30日(金)「しんぶん赤旗」

イラク派兵は撤回しかない

「大義」も前提も崩れ去る


 政府・与党は、自衛隊のイラク派兵承認案を三十日の衆院本会議で採決しようとしています。派兵承認案が審議入りしたのは二十七日、イラク特別委員会では二十九日に質疑が始まったばかり。そのわずかな質疑でも、イラク戦争の「大義」も派兵命令の前提もことごとく崩れ去っていることがあきらかになりました。

■首相が認めた

 「イラクが大量破壊兵器を保有している」。イラク戦争の支持の際、こう断言した小泉純一郎首相ですが、その大量破壊兵器はいまになっても見つかっていません。

 イラクでの大量破壊兵器調査団の責任者だった米中央情報局(CIA)特別顧問は「大量破壊兵器はもともと存在しなかった」と明言。かつて国連の安保理公開討論でイラクに大量破壊兵器があると断定していたパウエル米国務長官も「あったか、なかったか、疑問のまま残っている」と発言するなど、戦争支持の「大義」の誤りが、だれの目にも明らかになっています。

 小泉首相自身、日本共産党の穀田恵二議員の追及で大量破壊兵器の存在について「未解決なのは事実だ」と認めざるをえなくなっています。

 派兵される陸上自衛隊の任務は、占領軍への軍事支援です。本紙の問い合わせに対し占領軍司令部は、陸自が「第七連合統合任務軍の指揮下に入る」と認めています。政府が「憲法違反ではない」「人道復興支援活動だ」と言いつくろおうが、自衛隊派兵が、違憲の交戦権行使になり、占領支配の一翼を担うことになることは紛れもない事実です。

■ウソ報告・答弁

 また審議では、派兵命令の前提そのものが崩れ去っていることも明らかになりました。

 自衛隊派兵は、現地サマワの治安情勢の「安定」が建前。政府・与党はその根拠の一つにサマワ市評議会の「存在・機能」をあげて報告書をつくり国会と国民に説明し、陸自本隊の派兵命令を出しました。小泉首相、石破茂防衛庁長官は国会答弁でも市評議会が「存在し、機能している」と繰り返しました。

 ところが、市評議会は実際に解散し、その情報を政府が派兵命令を出す前に知っていたことが判明。評議会解散の事実を知りながら、派兵命令を出すためにウソの報告・答弁をするという、国会審議そのものが成り立たなくなる事態になっているのです。

 ことは政府の「情報伝達の機能不全」(「読売」)、「凡ミス」(「東京」、いずれも二十九日付)などではありません。派兵命令の前提にかかわる問題です。

 小泉首相は評議会を「存在」とした答弁は撤回はしたものの、評議会の問題が「治安情勢の悪化に直接関係があるとはみられない」(二十九日の衆院本会議)と開き直りました。評議会をあげて「治安」うんぬんをいったのは小泉首相自身のはず。この姿勢一つをとってみても、政府・与党が平気で事実を隠ぺいし、問題の重大性を認識していないかがわかります。

 政府・与党がしゃにむにイラク承認案を強行しようとしているのは、戦争の「大義」も派兵の前提もボロボロに崩れ、国民の批判が広がることを恐れているからです。

 徹底審議で政府・与党の隠ぺい問題の真相を明らかにし、派兵の前提が崩れた以上、派兵命令そのものを撤回すべきです。

 (高柳幸雄記者)


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