日本共産党

2004年1月30日(金)「しんぶん赤旗」

衆院イラク特別委 参考人質疑から

憲法も国際ルールも無視

軍隊と人道支援は両立しない


 「憲法にも国際法のルールにものっとらないことは、やめるべきだ」「軍隊的なものが人道復興援助に関係することで、本来の人道援助機関・団体が危険な立場となる」−。二十九日午前の衆院イラク特別委員会で、自衛隊のイラク派兵について参考人質疑が行われました。四人の参考人のうち、静岡大学人文学部の小沢隆一教授と日本国際ボランティアセンターの熊岡路矢代表理事は、自衛隊派兵に反対する立場から意見を述べました。そのポイントは−。



小沢氏

自衛隊のイラク派兵交戦権行使そのもの

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小沢隆一氏

表

 小沢隆一氏は、自衛隊の派兵について、(1)「交戦権」の行使(2)「武力の行使」にあたり、「憲法九条の規定に違反する」と指摘しました。

 「交戦権」について、政府は一九八一年の答弁書で「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」とし、「相手国領土の占領、占領行政」も含まれるとのべています。

 小沢氏は、自衛隊派兵が、「交戦権」の行使にあたる理由として、(1)自衛隊が占領軍司令部の指揮下で活動する(2)「安全確保支援活動」は占領軍の兵員輸送など占領軍の活動に深くかかわる(3)連合国暫定当局(CPA)やクウェートから裁判権の免除などの軍事要員としての特権を与えられること−をあげました。

 「武力の行使」について政府は、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」とし、「自己保存のための自然権的権利」としての必要最小限の「武器の使用」はこれに当たらないと説明。PKO(国連平和維持活動)法改悪で、上官の命令による武器使用を可能とした際にも、「任務遂行のための部隊としての武器使用ではない」(橋本龍太郎首相、九八年五月二十日の参議院本会議)とし、正当防衛の範囲内だと弁明していました。

 しかし、イラクへの自衛隊派兵の基本計画では、陸上自衛隊の部隊が「無反動砲及び個人携帯対戦車弾及び活動の実施に必要なその他の装備」を持っていくことができるとしています。

 小沢氏は、「活動の実施に必要な装備」の使用は、政府の見解に照らしても、「正当防衛ではもはや説明がつかない『任務遂行』のための部隊としての武力の行使にほかならない」とのべました。

小沢氏

国際法に違反し破壊占領行為参加は明白

 小沢氏は、米英による占領と、それに協力する行為について、国際法上の正当性がないことを強調しました。

 米英によるイラク攻撃が、国連安保理による決定のないもので、国連憲章が例外的に認めている自衛権の行使にもあたらないことを指摘。こうして開始された武力攻撃と、それに引き続く占領について、「侵略行為として、国連憲章をはじめとする現代の国際法に違反し、これを破壊するもの」と批判しました。

 こうした国際法違反の占領に協力する自衛隊の活動は、国際法上、どういう意味を持つか。安保理決議1483は、米英以外の国による占領への協力について、占領「当局のもとで」行われること、「すべての関係者」がジュネーブ条約・ハーグ陸戦規則といった国際人道法を順守することを求めています。

 小沢氏は「自衛隊の対応措置が、占領当局の指揮の下で、国際人道法の適用を受けておこなわれるべきこと、すなわち占領行為の一部であることは明白」と指摘しました。

 一方、政府は自衛隊の活動について「ジュネーブ諸条約やハーグ陸戦規則は適用されない」と主張しています。

 小沢氏は、政府の主張が、CPAやクウェートからは軍事要員としての特権・保護を受けながら、日本の国内法との関係では、国際人道法が規定する軍事要員としての義務は負わないというものであることを指摘。「(政府の主張が)自衛隊は占領に参加しないという立論の前提が崩れてしまうからだとすれば、あまりにも国際社会のルールに背を向けた姿勢だ」とのべました。



熊岡氏

NGOのグループは憲法に守られてきた

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熊岡路矢氏

 熊岡路矢氏は、過去二十四年間、紛争地などで国際協力活動をおこなってきた経験から、“「自己完結型」の自衛隊でなければ復興支援はできない”という政府の言い分に反論しました。

 イラクでは現在も、国際NGOや国連の職員、日本の外務省に資金提供を受けたNGOのグループが非武装で活動していることを紹介。「基本的に軍隊的なものが『人道復興支援』に関係することで人道援助自体がゆがみ、中立性が失われる」と強調し、国連人道援助事務所、赤十字など多くの機関が「軍隊的なものが人道支援をおこなうことに反対ないしは懸念を表明している」とのべました。

 NGOスタッフはどのように自らの安全を確保しようとしているか。熊岡氏は、(1)地域社会、人々に溶け込むことで、安全情報も受け、守ってもらう(2)武器を持たない(3)軍、軍隊的組織と明確に距離をとる−ことだとのべました。

 一方で自衛隊のような「自己完結型」の部隊が復興援助をおこなっても、(1)地域社会に根ざせないために、援助として成功しない可能性が強い(2)現地の雇用、収入につながらない(3)費用対効果が悪い−ことを指摘。「人道復興援助は国連、国際NGOでおこなうべきだ」と強調しました。

 そして「第二次大戦以降の日本の非軍事主義、平和主義、国際協調主義、より中立的立場、人道主義などで、われわれ国際NGOの活動者は守られてきたと思っている。いまそこが揺らいでいると思うので、もう一回確定してほしい」としめくくりました。



山口議員が質問

 この日の参考人質疑では日本共産党から山口富男議員が質問に立ちました。

 山口氏は、「占領が続き、戦乱が続いているもとに、重火器で装備した自衛隊を出そうというもので、二十一世紀の世界と日本の平和と安定にかかわる重大問題」と指摘。国際法と日本国憲法の原則、その運用の実態から、「厳しく吟味することが欠かせない」と強調し、イラク戦争と占領、自衛隊の活動についての国際法上の評価や、非政府組織(NGO)による人道支援活動の中立性の問題などについて質問しました。


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