2004年2月1日(日)「しんぶん赤旗」
イラク派兵承認案で、与党幹部も「後味が悪い」と嘆くほど、ボロボロになった政府・与党。イラク特別委の十五時間など短い衆院審議のなか、政府を追い詰める原動力となったのが、日本共産党国会議員団のたたかいでした。
「突然、早口、独り言…」とのナレーションとともに、しきりにつぶやきながら文書を繰る。一月三十日のテレビ朝日系「ニュースステーション」は、日本共産党の赤嶺政賢議員が明らかにした政府文書に見入る石破防衛庁長官の姿を映しました。政府に与えた衝撃を物語っていました。
二十九日のイラク特別委員会。「一つの文書を持っている」と日本共産党の赤嶺氏が政府側に手渡したところから、政府のイラク事前調査の虚構をあばく追及が始まりました。
「最新のイラク情勢と陸自派遣の調整状況等について」と題する八ページの文書。「一月二十日 防衛庁運用局運用課」と「一月二十一日 外務省安全保障政策課」という送信記録が残っています。
赤嶺氏が暴露した文書は、陸上自衛隊派兵の先遣隊が派遣される前につくられていたシナリオ。これにもとづいて報告がつくられた疑惑が浮かび上がりました。
「先遣隊は本当にサマワの現実を調査するのではなくて、『安全だ』という報告書をつくるために行った。だから調査が現地で始まる前に、国内ではこういう文書がつくられているのではないか」
こう追及する赤嶺氏に石破長官は三十日、「政府の文書をつくる過程でこのようなもの(文書)がやりとりをされることはある」と存在を否定できませんでした。
「どうやって入手したんですか」。二十九日の質問終了後、マスコミの記者が赤嶺氏のところに殺到。高知新聞、熊本日日新聞など地方紙は一面トップで報じました。他の野党委員からも「ぜひあの文書を使って私たちも追及したい」と問い合わせが相次ぎました。
こうした追及に追い詰められた政府・与党は単独で強行採決。参院与党幹部は「最悪の形で参院に回ってきた」と嘆きました。
虚偽発言 |
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サマワ市評議会はあるのか、ないのか−先遣隊報告書をめぐって二転三転する政府答弁。そのでたらめぶりを突き、本会議での首相答弁撤回のきっかけをつくったのは、日本共産党の佐々木憲昭議員でした。
首相の答弁撤回は、「撤回という分類がないので調べようがない」(衆院議事課)というほど前例のない出来事。いかに追いこまれたかを示すものでした。
二十八日午前の衆院予算委員会。冒頭、小泉首相と石破茂防衛庁長官が「評議会が存在しているとの発言を撤回する」とのべたことをうけ、佐々木氏が質問に立ちました。
政府が評議会の解散情報を知ったのはいつか−佐々木氏の追及に、石破氏は「二十七日正午過ぎ」と答弁。ところが…
佐々木 つまり、昼過ぎには知っていた。知っていながら「有効に機能している」という答弁を夕方にやっている。
石破 承知のうえで答弁した。
佐々木 虚偽の答弁を意識的にやった。そういう状況のもとでまともな審議ができるのか。
これ以上質問ができないと座りこむ佐々木氏。野党の理事がいっせいに委員長席につめよります。笹川堯委員長(自民)が「速記を止めて」
質疑は中断。他党も追及し、委員会終了は約一時間半ずれこみました。野党側は本会議での訂正答弁を要求したため、二十八日午前に予定していたイラク特別委の審議入りが結局できなくなりました。
結局、この佐々木質問が引き金となって首相は翌日、衆院本会議で答弁を撤回するという事態に追い込まれたのです。
市評議会をめぐっては、陸自先遣隊がだれに面会したのかもくるくる変更。日本共産党の赤嶺政賢議員の追及で、石破茂防衛庁長官は「サマワ市評議会の議長、議長代行、そして代表というふうに答弁内容が変わっておったということはご指摘のとおり」と答えざるを得ませんでした。
大義なし |
「古賀(誠)氏は二十二日、代表質問が行われた本会議で、『僕は(派遣中止を迫った)志位和夫共産党委員長に全面賛成だ』と周囲に語った」(時事)
イラク派兵承認案で棄権した自民党の古賀誠元幹事長。同氏が「全面賛成」した志位質問は、イラク派兵の大義のなさを四つの角度から骨太く明らかにしました。
その第一にあげたのが、首相がイラク戦争支持の「大義」にしていた大量破壊兵器の「保有」問題。志位氏は、米軍捜索チームの撤退、ブッシュ政権の元財務長官の証言など、抜き差しならない材料を示し、首相に迫りました。
「戦争開始から十カ月、大量破壊兵器が見つからない事実をどう説明するのか。誤りだったと認めるべきではないか」
まともに答えられない首相は「引き続き捜索を注視する」と答えるだけでした。
二十六日の衆院予算委でこの問題を引き続き追及した穀田氏。米調査グループ前団長・デビッド・ケイ氏の「もともと存在しなかった」との証言を突きつけ、戦争支持の誤りを認めるべきだと迫ったのです。
「未解決なのは事実だ。もっているとも、もっていないとも断言できない」。小泉首相は事実上自らの言明の誤りを認めざるを得なくなるまで追いつめられました。
その夜。「あると思ってますけどね」「あったと思って不思議じゃない」。首相は昼間の国会で追及された感想を聞かれ、悔しそうな口調で語りました。
憲法違反 |
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「占領軍からの回答を示したのは大ヒットだった」「ムネオ疑惑追及と同じくらい、すばらしい質問だった」−穀田恵二議員が衆院予算委員会で質問した二十六日夜、赤旗編集局や党本部にこんな電話やファクスがあいつぎました。
穀田氏は、自衛隊が占領軍の指揮下に入るのか、本紙の問い合わせに対するイラク占領軍司令部報道情報センターの回答をつきつけたのでした。
「自衛隊は連合軍第七統合任務軍(CJTF7)の指揮下に入ることになる」−占領軍の明確な言明に、首相は「占領軍の一員と認定されていない」と根拠も示さず繰り返すばかりでした。
この問題は、憲法にかかわる核心をつくものでした。これまで政府自身、占領や占領行政への参加は、憲法が禁じる「交戦権」の行使にあたるとしてきたのですから。
先べんをつけた志位質問では、連合国暫定当局(CPA)のブレマー行政官から日本政府にあてた書簡(昨年十二月十二日付)を提示。「自衛隊は連合国要員として、CPA命令第一七号に定められたように、処遇される」と明記した内容を示し、「連合国要員」として「処遇される」とは、「法的に占領軍の一員としての地位をもつ」ことではないかと追及したのです。
さらに山口富男議員が三十日のイラク特別委員会で、CPAのホームページが日本を「連合軍」の一員にあげていることを指摘。「占領軍の保護と特権を受けながら、占領軍の一員ではないというのは国際社会では通用しない」と迫りました。
川口順子外相は「わが国は連合の司令部の指揮下にはない。米英に確認済みだ」とのべましたが、最後までどんな「確認」をとったのか明らかにできませんでした。