2004年2月1日(日)「しんぶん赤旗」
| イラク戦争の口実消え政権苦慮 |
|
【ワシントン=遠藤誠二】ケイ前イラク調査グループ(ISG)団長による大量破壊兵器の存在否定証言を受け、ブッシュ米政権は、ISGの捜索結果とイラク侵攻以前の情報を比較照合する必要がある(ブッシュ大統領)など苦し紛れの言い訳をし、苦境に立たされています。昨年暮れのフセイン元大統領拘束後はイラク問題でのブッシュ批判を弱めていた野党・民主党は、非難のトーンを強めています。イラク問題が改めて大統領選の中心課題として浮上しています。
民主党の大統領選予備選が三日に実施されるサウスカロライナ州で二十九日夜に開かれた同党候補の討論会では、論議の半分近くはイラク問題に集中。過半数の候補者がブッシュ政権を厳しく批判しました。
イラク戦争反対の立場で支持を得てきたディーン前バーモント州知事は、「戦争を始めた時、大統領は国民に率直な態度で対応しなかった。チェイニー副大統領は報告された情報が気に入らないものだったので、米中央情報局(CIA)に行き中間レベルの担当官をしかりとばした」と発言。
クラーク元北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官は、「私は9・11(同時多発テロ)の二週間後に、ブッシュ政権はイラクに(戦争に)行くと国防総省から聞いた。9・11と関係あろうがなかろうが、それを口実にイラクを侵攻する。これがワシントンでの共通した認識だ」と指摘。
アイオワ、ニューハンプシャー両州での党員集会・予備選で連勝中のケリー上院議員は、「彼(大統領)は査察という方策を追求しなかった。最後の手段として戦争を始めなかった。最高司令官としての試験に失敗した」と言明しました。
現職議員としてイラク戦争容認の米議会決議に反対した唯一の候補者であるクシニチ下院議員は、「(米軍がイラクに)行ったのは間違いだった。そこにいるのも間違いだ。彼ら(米部隊)は(政権が)米国民についたうそに基づいて駐留している。うそは国際政策の根本原理に絶対になるべきでない」と訴えました。
英国防省顧問で科学者だったケリー博士の自殺を調査していた独立司法調査委員会(委員長・ハットン判事)がブレア首相には責任がないとする最終報告を発表しましたが、英国民のブレア首相への印象は逆に悪化していることが明らかになりました。
同報告発表後に行われた英紙タイムズ三十日付掲載の世論調査によれば、「ブレア首相にこれまで以上の好意を持った」との回答は11%にとどまり、「好意が後退した」とする回答は36%に上りました。
一方、ブレア首相らが機密情報を故意に脚色したと報道した英BBC放送のギリガン氏は三十日に辞任を表明。「私の報道の一部は間違っていた」と謝罪しつつ、「もしハットン委員長が、証拠を公正に考察したならば、私の報道の大半は正しかったとの結論に達しただろう」とする声明を発表しました。
これに先立ち、英ジャーナリスト協会は二十八日、ギリガン記者が懲戒されるか解雇された場合にはストも辞さないと表明しました。
同協会はハットン報告について、「えり好んだ、極めて一方的なものであり、調査報道の未来にたいする重大な脅威だ」「彼(ギリガン氏)の報道は基本的に真実であったということを忘れないでおこう」と指摘しました。