2004年2月2日(月)「しんぶん赤旗」
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子どもへの虐待をめぐって、全国の児童相談所が実施する家庭への「立ち入り調査」が急増する一方で、都道府県・政令指定都市によって、かなりばらつきがあることが、厚生労働省の調べでわかりました。
厚労省調査によると、立ち入り調査の件数は、二〇〇〇年度が百五件、〇一年度が二百件、〇二年度が二百三十件(グラフ)。
児童相談所は、子どもが虐待されているおそれがあると判断した場合、職員が家庭を直接訪問し、立ち入り調査。子どもの様子を確認します(注)。
大阪府岸和田市で起きた中学三年生虐待事件の場合、中学校が「岸和田子ども家庭センター」に「虐待の疑いがある」と通報しましたが、家庭への訪問にはいたりませんでした。
〇二年度の場合、熊本県三十八件、岡山県二十件、東京都十八件などの一方、ゼロ件だった県は、相談処理件数全国一の大阪府をはじめ二十府県、政令指定都市は四市ありました。
立ち入り調査はしたものの、子どもの安否を確認できなかったケースもあり、全国児童相談所長会の調査によると、〇一年度は二十九件、〇二年度は十八件にのぼっています。
立ち入り調査については、保護者が施錠してしまったケースへの対応に苦慮している意見が多く出されています。家にきたら殺すと脅すなど、保護者による児童相談所職員などへの加害・妨害事件も起きており、一九九八年から二〇〇一年上半期の三年半で、三百五十二件ありました。東京都足立区では昨年五月、児童相談所職員が、虐待が疑われる小学六年生の男児を保護するため母親の同意なく立ち入り調査を実施。警察官がドアチェーンを切断して男児を保護しました。
大阪府岸和田市の中学三年生虐待事件を受け、「日本子どもの虐待防止研究会」、「こどもの虐待防止センター」など虐待防止の活動をすすめてきた七団体の代表がこのほど、厚生労働省へ共同声明を提出しました。
声明は岸和田市の事件について、「関係機関の連携の不備、立ち入り調査制度の不備、親への指導に関する制度の不備など、虐待防止のシステムと取り組みの欠陥を、あらためて示すものとなりました」と指摘。事件を十分に解明して今後の防止に役立てること、各関係者からの提言を反映させた「児童虐待防止法・児童福祉法のすみやかな改正」を求めています。
七団体を代表して「日本子どもの虐待防止研究会」の平湯真人弁護士は、児童相談所に、立ち入り調査や保護者への指導についての強力な権限が与えられていない現状の問題点をあげました。「児童相談所が、親が抵抗してもかぎを壊して立ち入り調査をできるような法改正や学校との連携の仕組みが必要」と訴えました。
注 児童福祉法、児童虐待防止法にもとづく。立ち入り調査を実施する際、必要であれば警察の立ち会いを求めることができます。