2004年2月3日(火)「しんぶん赤旗」
イラク北部・クルド自治区のアルビルで一日に発生した自爆テロは、昨年八月末に南部のナジャフでイスラム教シーア派指導者ハキム師ら百人以上の命を奪った自動車爆弾テロに次ぐ大惨事となりました。
今回の自爆テロによる死者は六十五人、負傷者も二百人以上に上りました。これは許すことのできない無差別テロです。
これまでイラク中部などに比べて治安状況が比較的安定しているといわれていた北部での大規模テロの発生は、米国による無法な戦争と占領が、イラクの全土をテロの温床に変えてしまったことをまざまざと示しています。
イラク人口の二割弱を占めるクルド人は、かつて旧フセイン政権から激しい弾圧を受けました。一九九一年の湾岸戦争後は、米英軍の軍事的保護のもと、北部一帯で自治権を獲得し独自の議会も選出していました。
自爆テロの犯行声明は出ていませんが、テロの背景に、標的となったクルド民主党(KDP)とクルド愛国同盟(PUK)の親米路線があることが広く指摘されています。
両組織は米政権から「イラク戦争での最大の同盟者」と位置づけられ、その武装部隊はイラク戦争で米軍と協力してフセイン政権打倒のために動きました。米占領当局が任命したイラク統治評議会にも、両組織の代表が有力メンバーとして参加しています。
両組織は過去には反目しあった時期があります。現在は、六月末を期限とした米主導の主権移譲計画にあわせ、クルド自治の維持、強化を目的に組織連合を協議しているとされます。今回の自爆テロは、クルド自治の維持、強化に反対する勢力が関与した可能性も否定できません。
アルビルの自爆テロは、イラク攻撃を扇動してきたウルフォウィッツ米国防副長官が首都バグダッド入りした同じ日に発生しました。同副長官は自爆テロを受け、「われわれは(テロに)勝利する」と宣言しましたが、この日を前後してイラク各地で自爆テロや米軍への攻撃が断続的に発生しています。
イラクのクルド人の問題を占領支配に利用している米軍の撤退とイラクへの民主的な主権移譲が実現しないかぎり、イラクの混乱がさらに激化する可能性が強まっています。(小泉大介記者)