2004年2月4日(水)「しんぶん赤旗」
宮崎県の高校三年生が武力によらないイラク復興支援を求める五千三百人の署名を提出したことについて、小泉首相が請願内容も読まずに「イラクの事情をよく説明して、なかなか国際政治、複雑だという点を先生が生徒に教えるべきだ」と発言したことに、怒りの声が広がっています。
署名は、今村歩さん(18)が、市民が殺されていくイラクのニュースに、いたたまれなくなって、一人で始めたもの。二日、上京し「小泉首相に届けてほしい」と、内閣府に提出しました。
首相は、官邸で記者団の「署名を読みましたか」との質問に、「いや読んでいません」。「読む考えは」と聞かれ、「自衛隊は平和に貢献するんですよ。学校の先生もよく、生徒さんに話さないと。…この世の中、善意の人間だけで成り立っているわけじゃない」などと語りました。
「首相は、イラクの子どもや市民に思いを寄せて署名を集めた高校生の声を真正面から受けとめるべきで、署名を読まずに、心を傷つける発言をするのは許せない」と、話すのは日本高等学校教職員組合の岡田愛之助委員長。「高校生は、憲法をしっかり学び、自衛隊では平和的解決にならないと行動したのだと思います。この高校生の声こそ、世界の流れにそっているし、未来を感じます」
バグダッドに事務所を構える「イラク救済基金」代表の大平直也さんは、宮崎での写真展を通じて今村さんと出会い、署名提出につきそいました。「提出の際、内閣府の担当者は憲法で請願権が保障されており、その行使によって不利益はこうむらないといったのに、こうして彼女が傷つけられるのはおかしい。日本政府はイラクの子どもにも、日本の子どもにも背をむけている」
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全日本教職員組合(全教)の山口隆教文局長は三日、「一国の首相としての見識を根本から問われるにとどまらず、おとなとしての最低限の常識にさえそむく小泉首相の対応に強く抗議し、発言の撤回を求める」との談話を発表し、小泉首相に送りました。
全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)の谷正比呂中央執行委員長は同日、「教育の場に特定の政治的な見解の押しつけを強要しようとし、請願権にもとづく高校生の行動を二重、三重に裏切る小泉首相の発言の撤回を要求」する談話を発表しました。