2004年2月7日(土)「しんぶん赤旗」
これ以上、イラク派兵計画のボロが出ないうちに採決にもちこみたい−参院での九日採決を提案してきた自民・公明両党の姿勢には、こんな思惑がすけてみえます。参院イラク有事特別委理事懇では、民主、社民も採決日程の提案を受け入れました。
しかし、イラクへの自衛隊派兵承認案の審議の実際はどうだったでしょうか。参院での審議は三日から始まったばかりですが、審議をすればするほど問題点は噴出しています。戦争の根拠も派兵の根拠もことごとく崩れ去っています。
イラクの大量破壊兵器「保有」という戦争支持の論拠はどうか。日本共産党の宮本岳志参院議員の追及にたいして小泉純一郎首相は「保有」を断定した根拠をまったく示すことができませんでした。
派兵命令の前提となる陸上自衛隊先遣隊の報告書の原案が事前につくられていた問題も重大です。衆院で日本共産党の赤嶺政賢議員が内部文書で明るみに出したこの問題では、八田ひろ子参院議員が追及。石破茂防衛庁長官が「送信記録が残っている」と事実上、内部文書の存在を認める答弁をしました。治安情勢など派兵命令の前提はくずれています。
米英占領軍の司令部に自衛隊要員が派遣され、憲法が禁じる占領軍の一員となる問題も、新たな展開をみせました。日本共産党の小泉親司参院議員が新資料を示し、派兵された自衛隊員が占領軍のそれぞれの司令部に駐在することも浮き彫りになりました。
これらは派兵計画の根本にかかわる重大問題であり、徹底審議こそ求められています。
しかも、参院での審議は、衆院で政府・与党が一方的に審議を打ち切り、採決を強行するという議会制民主主義を踏みにじる異常事態を受けてのものです。
衆院で政府・与党は、イラク派兵の矛盾をごまかすため、審議の打ち切り、強行採決という暴挙でしのごうとしたため、大混乱をまねきました。
これを受けて与野党国対委員長会談で自民党の中川秀直国対委員長が陳謝。参院でも与野党が「審議時間の枠を決めず十分な時間を確保する」ことを各会派が合意したうえで審議に入ったという経過があります。
審議の内容からも、こうした経過からも、いま審議を打ち切る道理はありません。
イラク派兵は、二十一世紀の日本の進路にかかわる重大問題であり、今国会最大の焦点の一つです。
徹底的に審議を尽くすことこそ国会に課せられた責任です。(深山直人記者)