日本共産党

2004年2月7日(土)「しんぶん赤旗」

CIA長官発言 イラク大量破壊兵器

「存在せず」のケイ証言追認


 テネット米中央情報局(CIA)長官が五日ワシントンで行った講演は、「米英のイラク攻撃前のイラクに大量破壊兵器はなかった」とのケイ前米政府調査団団長発言が引き起こした混乱の収拾を図ったものですが、結局は核・生物・化学兵器のいずれも存在しなかったことを確認した内容となっています。イラクの大量破壊兵器についてのテネット氏の発言を整理すれば、次のようになります。

核兵器

 イラク攻撃前のイラクの脅威の評価の基礎とされた二〇〇二年十月のCIA発表の「全米情報評価」では、「サダム(・フセイン元イラク大統領)は核兵器を持っていない」と言ったが…。

 イラクが核兵器製造のための濃縮ウラン用遠心分離機に用いようとしているとされたアルミ管については、「バグダッド(政府)が追求していたような高度に特化された管は、今までのところイラクでは何も発見されなかった」。

 「私の暫定的結論は、サダムは核兵器を持っていなかったということだ。彼は、それを欲していたし、核計画を再構成する意図があった。しかし、われわれは、サダムの進展を過大評価していたかもしれない」

生物兵器

 「全米情報評価」では、「攻勢的計画のすべての側面は依然として稼働している」と述べていたが…。

 イラクは生物兵器「生産再開の基盤と才能を持っていたようだが、イラクが実際にそうしたことをまだ発見していないし、兵器を発見していない」。

 生物兵器用とされたトレーラーについては、その目的に関し「情報機関のコンセンサスはない」。

 「私の暫定的結論は、イラクは生物兵器を開発する意図を持っていたということだ。われわれはまだ、生物兵器を発見していない」

化学兵器

 「全米情報評価」では、「イラクはそれらを保有していると大きな自信をもって言っていた」が…。

 「物理的な証拠は、まだ何も発見されていない」「私の暫定的結論は、サダムは民生産業を化学兵器製造に急速に転換させる意図を持っていたということだ。しかし、われわれが予期した兵器を、まだ発見していない」

 ケイ前団長・前CIA特別顧問は一月二十八日の米上院軍事委員会証言で、イラクの大量破壊兵器についての事前の推定では「われわれは、私自身も含め、ほとんどすべて間違っていた」と公言しました。

 テネット長官は総論では「情報収集の仕事では完全に間違っていたとか完全に正しかったということは決してない」と否定しました。しかし結局、各論になると、「開戦前に大量破壊兵器はなかった」とのケイ証言を再確認しているのです。

 同長官はまた、フセイン政権に関しCIAは「差し迫った脅威があるとは決して言わなかった」と言明。「大量破壊兵器がなかったとしてもフセイン政権は高まりつつある脅威だった」としてイラク攻撃を正当化するブッシュ政権首脳の最近の釈明と矛盾する発言をしています。


大統領も「兵器なかった」

 イラクの大量破壊兵器の脅威を最大の口実にしてイラクへの先制攻撃を指示しておきながら、同兵器が発見されないとなると「私も知りたいんだ」と述べて(一月三十日)世界の失笑と怒りを買ったブッシュ米大統領。二月五日のサウスカロライナ州での演説では、イラクの大量破壊兵器が発見されていないことを自ら認めました。

 ブッシュ氏は「(ケイ前)兵器調査団長が述べたように、われわれがあると思っていた兵器貯蔵を、われわれはまだ発見していない」として、ケイ発言を追認。しかし、フセイン元大統領は大量破壊兵器製造の「意図、科学者、技術、必要な基盤」を持ち、大量破壊兵器で政権を武装する「意図」を持ち、同兵器を使用した「記録」がある、だからフセイン政権打倒により「米国はイラクで良いことをしたのだ」と戦争を正当化しました。

 もし、こうしたブッシュ流の新手の先制攻撃論が通用するならば、大量破壊兵器製造の「意図、科学者、技術、必要な基盤」を持ち、大量破壊兵器で政権を武装する「意図」を持ち、広島や長崎などで同兵器を使用した「記録」がある国、しかも大量破壊兵器を保有、開発していることを全世界が知っている国である米国が攻撃されても、ブッシュ氏は何の文句も言えなくなるでしょう。

 ブッシュ演説は、米国主導の対イラク先制攻撃戦争には何の道理もなかったことを自己暴露しているのです。

 (坂口明記者)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp