2004年2月10日(火)「しんぶん赤旗」
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北海道内の四分の一を超す弁護士が代理人に名前を連ねたイラク派兵差し止め訴訟、携帯電話のメールで運動を広げる高校生―。九日、国会では与党が自衛隊派兵承認案の採決をおこないましたが、派遣部隊の中心となった陸上自衛隊第二師団を抱える旭川市はじめ北海道では派兵反対の声と運動が新たな広がりを見せています。(渡辺浩己記者)
反対59%、賛成37%―。北海道新聞が行ったイラク派遣についての道内の世論調査の結果です。全国を対象とした他社の世論調査と比べ、反対が8%も高くなっています。
それを示すのがイラク派兵反対署名にたいする市民の関心の高さ。冬まつり期間中の八日におこなわれた有事立法反対旭川連絡会がおこなったイラク派兵反対の署名には三十分間で、約九十人の市民が署名しました。
気温はマイナス一度。中学生の子どもと一緒に署名した母親、初めて署名した女子中学生の二人組、買い物途中の青年…。「幼友達のお父さんがイラクにいっている。親せきに隊員もいるしイラクにいってほしくないんです」「復興支援っていうけど、結局は戦争」「兵は簡単に出せるけど簡単には戻ってこれない」と思いを語りました。
小泉首相も出席した隊旗授与式の一日には、一時間で四百四十四人が署名。連絡会の湯川界事務局長は「イラク入りしてから、かえって署名行動に参加する人や署名数も増えてきています」
高校生による反対運動も広がっています。
昨年十二月、旭川でひらかれたイラク派兵反対旭川集会に約四十人の高校生が先生たちと参加。札幌市内では有志の高校生がピースウィンド(平和の風)という携帯やパソコンを利用したネットワークを結成。すでに四十校、百四十人の高校生が加入しています。
箕輪登元郵政相がおこしたイラク派兵差し止め訴訟には、道内四百二十一人の弁護士のうち、百九人が代理人として名を連ねました。その一人である佐藤博文弁護士は「実質三日間でこれだけの弁護士が集まった。百人を超える弁護団の結成は初めてのことではないでしょうか。法治国家としてこれでいいのかという思いが賛同してくれた弁護士の思いです。弁護士魂が問われているんですよ」と強調します。
旭川市内では「黄色いハンカチ運動」もおこなわれています。隊員の無事帰還を祈って、黄色いハンカチを店の軒先などに掲げるもので、経済界や自衛隊の父兄会などが中心になって推進。スーパーや商店街、タクシーやホテルなどにも広がっています。しかし、市内の商店街振興組合の幹部は、「この運動に参加している人の気持ちはさまざまだ」と話します。
「隊員といっても同じ旭川市民。みんな無事に帰ってほしいと願っている。もちろん派遣に反対する人もいます。私も実は派遣には賛同できない。だから組合の事業としてはやってはいけないし、強制をしてもいけないと考えている」
先の戦争で、千人針をもった父親を見送ったのが最後の見納めとなったという町内会長の一人は振り返りながら語りました。
「無事に帰ってきてほしいという感情的なものと派遣によって国の政治がどうなるのかという質的に異なる問題を一緒にしてはいけない。千人針をもたせるような誤りはもう二度とくりかえしたくない」