日本共産党

2004年2月11日(水)「しんぶん赤旗」

大量破壊兵器 「誇大な脅威」で戦争に突入

リッター元国連主任査察官

米大統領の責任は免れない


 元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のスコット・リッター氏は、米イラク調査グループ(ISG)のデビッド・ケイ前団長が米議会で開戦前のイラクに大量破壊兵器はなかったと証言したことに関し、ケイ氏の証言は、この問題でブッシュ米大統領に責任が及ばないようにするためのもののように思われると述べ、「誇大な脅威」論をもとに無法な戦争に突き進んだブッシュ政権の責任は明らかだと主張しています。パリ発行の英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン六日付に寄稿しました。

 ケイ氏は証言で、イラクに「大規模な大量破壊兵器の貯蔵はない」と述べ、「私も含めて、われわれはほとんど間違っていた」と主張しました。

大統領免罪狙う

 リッター氏は「兵器を見つけ出せなかった責任は不正確な評価を下した米情報機関のせいだとケイ氏は強調している」と述べ、「この発言はブッシュ大統領の政治的利益になるようにデータを改ざんする試みのようにみえる」と指摘しています。

 その論拠として、リッター氏は米中央情報局(CIA)が二〇〇二年十月にイラクの脅威についての調査報告の準備にとりかかる前の同年八月二十九日に、ブッシュ大統領がすでにイラク侵攻を決定していたことを、昨年秋の米国防総省の報告書「イラクの自由作戦」を用いて明らかにしています。

 大量破壊兵器についての調査を始める前に戦争の決定が下されていたとなれば、ブッシュ氏の責任は免れません。

 リッター氏はさらに、ブッシュ政権が設置を命じた独立調査委員会は、大統領の免罪という「この疑惑を強める」ものだと指摘。同委員会の調査任務が戦争に至る政策決定過程ではなく情報データの検討だけになっていること、さらに調査結果発表が今年十一月の米大統領選挙後に予定されていることをあげています。

助言、事実を無視

 「われわれは間違っていた」とのケイ氏の主張についてリッター氏は、同氏自身が二〇〇〇年六月の米軍備管理協会の『アームズ・コントロール・トゥデー(今日の軍備管理)』誌に掲載された論文で、「UNSCOMの査察の結果、(一九九八年十二月の段階で)イラクはほぼ武装解除されていたと公正に主張できる」と書いたことを紹介。その後も「可能な限り多くの場所で偽りの脅威を根拠に戦争を行うことの危険性を米国民と世界に説得する努力をしてきた」と述べています。

 さらに、▽すでに九六年にも、ロルフ・エケウス元イラクUNSCOM委員長が「基本的にイラクの大量破壊兵器が除去された」と宣言したこと▽イラク戦争前に査察を指揮したブリクス前国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長が、査察官たちは大量破壊兵器もしくはそれに関連する計画の証拠を発見しなかったと述べたこと▽イラク情勢に通じているジョセフ・ウィルソン元駐イラク米大使、グレッグ・テールマン国務省情報分析官らが、イラクの核兵器能力に関するブッシュ政権の主張が立証されていないことを明らかにしたこと―を挙げています。

 その上でリッター氏は、「戦争を急ぐブッシュ政権が、私たちの助言や事実に基づく多数のデータを無視し、代わりに、うわさや推測、誇張や事実のねつ造に依拠して、米国民や彼らが選出した議員らを戦争支持に誤って導き、それは急速に泥沼化しつつある」と糾弾しています。


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