2004年2月12日(木)「しんぶん赤旗」
日本の対外侵略を肯定する歴史逆行の動きがあいついでいます。
一つは、十日の衆院イラク特別委員会での小泉純一郎首相の発言です。
小泉首相はA級戦犯が靖国神社に合祀(ごうし)されていることについて「私は抵抗感を覚えていない」「よその国からああしなさい、こうしなさいといわれて、今までの気持ちを変える意思はまったくない」とのべ、中国や韓国からの批判を意に介さない態度をあらわにしました。
A級戦犯とは、戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)で侵略戦争を計画・準備・遂行した「平和に対する罪」「人道に対する罪」で裁かれた戦争犯罪人で、侵略戦争の中心的指導者です。靖国神社がA級戦犯十四人を「昭和の殉難者」としてまつっていることは、侵略戦争を「正義の戦争」として肯定するものです。
首相は「多くの戦没者の犠牲のうえに今日の日本の平和と繁栄がある。そういう思いを込めて靖国神社に参拝した」などといいますが、靖国神社は戦没者一般ではなく天皇のために「名誉の戦死」をとげた人々だけを「英霊」としてまつる特異な神社であり、戦前の侵略戦争を推進する精神的支柱としての役割を担いました。その靖国神社を首相として参拝することは、侵略戦争肯定の立場にたつものとして批判されるのは当然です。
まして、A級戦犯は「戦没者」ですらなく、その合祀を「抵抗感がない」と肯定することは、戦後日本の国際誓約に反し、侵略戦争を違法化した戦後国際社会の諸原則にも背を向けるものです。
もう一つの動きは、日露戦争で日本がロシアに宣戦布告して百周年にあたる十日午前、自民・民主両党の国会議員四十三人が明治神宮を参拝したことです。参加者らは、近く「日露戦争に学ぶ会」を発足させるとしています。
参拝した平沼赳夫前経済産業相は、中国東北部、朝鮮の支配権を帝政ロシアと争った日露戦争を「明治のみなさんが国を思い、心を一つにして国難に対処した精神を引き継ぐ」などと美化しました。日露戦争が終わった年の一九〇五年、天皇制政府は朝鮮を「保護国」とするなど、対外侵略を加速化させました。平沼氏の発言は対外侵略美化にもつながりかねません。
小泉首相の発言とあわせて、日本の政界に侵略戦争を肯定する黒い流れがいまだに流れていることを示しています。