2004年2月12日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の大沢たつみ議員が九日の参院本会議で行ったイラク派兵承認案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。
承認に反対する第一の理由は、イラク戦争の「大義」が根本的に問われているにもかかわらず小泉内閣が派兵を強行していることです。イラク戦争は、米英両国が国連安全保障理事会の承認なしに一方的に始めた無法な侵略戦争です。国際法上の正当性・合法性もまったくありません。米英両国はイラクが大量破壊兵器を保有していると一方的に決めつけ、それを開戦の最大の口実にしました。
ところが大量破壊兵器はいまに至るも発見されないどころか当のアメリカのイラク調査団長デビッド・ケイ氏が「大量破壊兵器はもともと存在しなかった」と証言しました。このもとでブッシュ米大統領やブレア英首相ら戦争を強行した当事者は開戦前の発言を事実上訂正せざるをえない事態に追い込まれています。
米英両国では、真相解明を求める世論におされ、独立した調査委員会を設置することになりました。ところが「イラクは大量破壊兵器を保有している」と断定し、イラク戦争を支持した小泉総理は、自らの責任がきびしく問われているにもかかわらず、「保有」を断定した根拠をまったく示すことができず、論拠のすり替えで開き直っています。戦争を支持した総理の責任をあいまいにしたまま派兵を強行するなど絶対に認められません。
第二に、「戦争をしない国」としてアジアと世界の平和を希求する日本国憲法を踏みつけにする歴史的暴挙を、小泉内閣が国会と国民をあざむいて強行していることです。小泉内閣は、自衛隊の派遣命令は先遣隊の現地調査をうけて「慎重の上にも慎重に検討して判断する」と繰り返し国民に言明しました。陸上自衛隊の派遣先であるサマワの「治安が安定している」ことの最大の根拠として、「住民の意向を反映した市評議会」の「存在」をあげました。
ところが、市評議会は存在せず、総辞職し解散していたことが明らかになり、衆議院の本会議で総理発言を撤回するという、国会史上かつてない事態に陥りました。さらに、わが党議員が暴露した防衛庁「内部文書」によって、陸上自衛隊の派遣を決断する前提である現地治安情勢にかかる「先遣隊報告書」が事前につくられ、市評議会議長のコメントが作文される一方、米軍やオランダ軍への襲撃件数などを隠していたことが明らかになりました。
この内部文書をめぐる参議院の質疑で政府は、防衛庁と外務省の間で送信した記録があることを認めました。いまや、先遣隊の調査や政府の「慎重な検討」が形だけのものであったことは明白です。虚構の上に虚構を重ね、虚偽の国会答弁を繰り返し、国会と国民をあざむく小泉内閣の責任はきわめて重大です。派遣の前提が崩れた以上、派遣命令自体を撤回すべきことは、あまりにも当然ではありませんか。
第三に、自衛隊のイラク派兵は、無法な戦争につづく不当な占領支配のもとで、占領軍の一員として占領支配の一翼を担うものであり、これは明らかに交戦権を否認した憲法九条に真っ向から違反していることです。
派兵される自衛隊は、「連合国要員として」刑事・民事・行政のいかなる裁判権からも免除され、占領軍と同様の特権・保護を受けます。連合軍司令部のホームページは、連合軍の軍事作戦への軍隊派遣国の一つに日本をあげ、私たちの問い合わせに「自衛隊は連合軍司令部の指揮下に入る」ことを公然と認めています。この連合軍の司令部に自衛隊員も駐在するのであります。
総理は、「自衛隊は戦争にいくのではない。イラクの人道復興支援にいくのだ」と言いますが、自衛隊がイラクで実際に行う任務は、米英占領軍が行う軍事作戦への支援そのものです。「安全確保支援活動」の中には「掃討作戦への支援」「武装した米兵の輸送」「イラク国民の米英占領軍に対する抗議・抵抗運動の鎮圧への支援」が含まれることを小泉総理も認めているではありませんか。
航空自衛隊の輸送部隊は、「米中央軍前線司令部」の一元的な統制の下にバグダッド、モスルなどイラク全土にわたって、兵員・軍事物資の航空輸送を行うことも明らかになりました。占領軍と同様の特権・保護を受け、米英占領軍に対する軍事支援を行う自衛隊が占領支配の一翼を担い、まさに憲法違反の占領参加となることは明らかです。
イラクはだれがみても戦争状態です。先日も、自衛隊の活動区域であるバグダッド飛行場で、米軍に対する迫撃砲弾による攻撃がおきています。まさにゲリラ戦の様相を呈しています。国際法上イラク戦争は終結しておらず、いまなお戦争状態が続いているもとで「非戦闘地域」などありえないことは、イラクの現実にてらせば明白です。
占領軍の一員として活動する自衛隊が武力攻撃をうけ、それに対して自衛隊が「正当防衛」として「武器を使用する」ことになれば、それはまさに「武力の行使」そのものです。自衛隊がイラクの人々と「殺し、殺される」関係をつくることは断じて容認できません。イラクに派兵される自衛隊員を見守る家族の硬いあの表情、子どもたちの泣く姿を、小泉総理や与党のみなさんはどうみるのですか。
最後に、いま日本は第二次世界大戦の敗戦の大きな犠牲によって平和を得てから半世紀以上、日本国憲法のもとで、軍隊を海外に派兵することなく、武力で他国を侵略せず、一度も他国の人々を殺してきませんでした。これは、戦後日本の大きな誇りです。この「戦争をしない国」日本という世界への信頼が、小泉内閣によって、つき崩されようとしていることはきわめて重大です。
イラク特措法が強行成立させられた後も米英占領軍や他国軍隊が相次いで攻撃され、国連までもが攻撃をうけるというイラクの泥沼化の深刻な事態にもかかわらず、小泉内閣はアメリカから「逃げるな」「お茶会じゃない」と圧力をかけられ、自衛隊派兵へ突っ走ってきました。異常なアメリカ追随の政府によって、現地情勢やイラクの人々の感情などおかまいなしにイラク派兵がすすめられているのです。
イラク問題の解決のためには、米英軍主導の軍事占領支配を一日も早くやめさせ、国連中心の枠組みによる復興支援に切り替え、イラク国民に速やかに主権を返還することが必要です。そのための外交努力を行うことこそ、憲法九条をもつ日本の政府がとるべき道であります。憲法違反のイラク派兵を承認することはできません。日本共産党は、イラク派兵をやめさせるため全力を尽くす決意を表明し、討論を終わります。