2004年2月13日(金)「しんぶん赤旗」
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民医連(全日本民主医療機関連合会)は十二日、〇四年度予算で特別養護老人ホーム建設にたいする国の補助を大幅削減する政府通知の撤回を求めて厚労省と交渉しました。日本共産党の小池晃参院議員(党政策委員長)が同席し、地方自治体が立てた整備計画の実施に混乱を招いていることを指摘し、緊急の打開策が必要と強調しました。
通知は、昨年末の予算確定を受けて厚労省が一月に都道府県、大都市の担当者あてに出したものです。寝たきりの老人などを介護する特別養護老人ホームへの国庫補助については、〇四年度の新規事業の場合、建設単価を3・5%引き下げたうえで、三分の一をカット(前年度実績の三分の二補助)します。リハビリなどを行う介護老人保健施設の補助基準額は二千五百万円に一本化するとし、大都市加算(七千万円)など各種加算の凍結を通知しました。
民医連は要求書を提出し、建設予定の事業者が基本設計終了の段階で計画の全面見直しを余儀なくされたり、申請を取り下げざるを得なくなるなど「大きな混乱を生じている」と指摘。永田勝美事務局次長、林泰則常駐理事をはじめ石川、岐阜、奈良の関係者が交渉に参加して実情を訴えました。金沢市からの参加者は「順番待ちをしている特養の待機者の家族は、補助削減でますます入居の願いが遠のくと、不安が広がっている」とのべました。
小池議員は「厚労省は、特養ホーム整備のスピードをゆるめたのか」と指摘。厚労省老健局の担当者は、「三位一体の改革」のなかで削減にいたった経過をのべ、〇五年度予算で地方の「負担にならないように考えたい」とのべました。
介護保険で提供される施設サービスにたいする補助金削減は、各地で深刻な問題になっています。
坂口力厚労相にたいし埼玉、千葉、神奈川三県の知事は連名で要望書を提出(一月二十二日)。「各事業の見直しを迫られるだけでなく、事業の実施自体を断念せざるを得ない状況も生じます」とのべ、一律の補助カットをやめて、個別事業の内容を十分考えた対応を求めています。同様の苦情が自治体から厚労省に殺到している状態です。
今回の補助削減は自治体にとって突然の通知でした。小泉内閣は昨年夏の概算要求段階では重点四分野の一つとして高齢化・少子化対策をかかげ、介護関連も二割増の予算要求を厚労省から出させました。それを受けて地方は介護施設の整備計画をすすめます。
ところが、〇四年度で実際についた特養ホームなど介護施設の整備予算は九百三十九億円で〇三年度当初予算(千五十億円)から増えるどころか逆にダウン。介護施設整備はこれまで、前年度補正予算との合計で地方からの要望にこたえてきています。〇三年度当初予算に〇二年度補正を合計すると千三百二十億円。これにたいし〇三年度補正は介護施設整備をもりこんでいないため、〇四年度の当初予算だけとなり、前年度(〇三年度当初・〇二年度補正)に比べ三百八十一億円減、マイナス28・9%という大幅削減となりました。
厚労省の一月通知は、この「三位一体の改革」にそった小泉内閣の予算削減を施設整備の現場に押しつけるためのものといえます。さらに背景には、急増する介護給付費を抑制するため、来年の介護保険見直しに向けて厚労省が特別養護老人ホームの建設を極力抑制する考えを示していることがあります。
特別養護老人ホームは入居申請者が順番待ちをしている状態で、整備促進が強く求められています。待機者は日本共産党国会議員団の調査(〇三年二月)でも全国で二十三万人に達します。整備予算の拡充が求められており、入居待機に拍車をかける補助金削減は撤回し、実態に合わない介護施設への“過少予算”はただちに改めるべきです。
(斉藤亜津紫記者)