2004年2月13日(金)「しんぶん赤旗」
「われわれは安全の確保もないまま“戦地出張”させられるのか。死傷した場合の補償のあり方も決まっていない」と語る技術者――。十二日、日本共産党の佐々木憲昭議員が衆院予算委員会で追及したように、防衛庁は自衛隊イラク派兵にともない、航空機、艦船、車両の修理・整備のため軍需産業にクウェートなどへの技術者派遣を要請、その内容も隠しています。
|
現地での安全確保と責任の所在をめぐって、防衛庁も企業側も責任をとらず、技術者は怒りの声をあげています。
防衛庁は、空自のC130への砂塵(さじん)対策やミサイル攻撃の被害を想定して、エンジン整備を契約している石川島播磨重工には昨年末、機体整備の川崎重工には一月十四日、クウェート基地での技術者常駐派遣を要請しました。これに対し、石播側は「整備の要請があるごとに派遣を検討したい」としています。
同庁は技術者の危険地域への派遣に関して「契約は修理契約であって派遣契約ではない。派遣にあたっての人数、装備、安全対策、補償などは契約に応じた企業自身が決める問題。(技術者に対する)安全配慮義務は労使関係の問題であり、防衛庁が指示する立場にない」といいます。安全については、「作業中の安全は自衛隊が責任を持つが、移動や宿泊先の安全は最大限の努力をする」と述べるだけです。
厚生労働省も「自衛隊の要請で海外で作業するなら国内の労働基準法や労働安全衛生法は適用されない場合もある」とし、防衛庁同様に責任は派遣する企業側にあるとの立場です。
他方、企業側は、派遣対象者に「防衛庁の要請でいくのだから、当然、安全は確保されているはず」と苦しい説明をするだけ。技術者には渡航に際して一般国民が参考にしている外務省渡航情報や石播の「海外安全センター」情報での安全確認をすすめる程度です。
派遣予定の技術者らは「会社も防衛庁も無責任だ。クウェートが百パーセント安全だという保証はない。労災補償も海外やテロ攻撃は想定外として適用されないという。せいぜい海外旅行保険に入るしか補償はない。何もクリアされていない」と語っています。