2004年2月14日(土)「しんぶん赤旗」
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日本共産党の佐々木憲昭議員が十二日の衆院予算委員会でおこなった総括質問は次の通りです。(大要)
佐々木憲昭議員 イラクへの自衛隊派兵がわずかな審議で強行されました。日本共産党は、もちろん反対です。
きょうは自衛隊とともに派遣される民間技術者の問題をとりあげます。
先日、航空自衛隊のC130輸送機が愛知県の小牧基地からクウェートなどに出発しました。C130は、イラクのいくつかの空港との間で輸送を行うとされています。問題は、その輸送機の修理、維持管理、メンテナンスのために、防衛庁が民間企業に対して技術者を派遣するよう要請したということです。
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配布した資料は、川崎重工の広報室などが社内でやりとりした三つの文書です。日付は一月二十九日。防衛庁が川重に対して、準備要請をしたことがある、と書かれているわけですが、川崎重工に対して技術者の派遣の準備要請をした、このことは事実ですか。
石破茂防衛庁長官 ご提示の文書は民間企業内の文書でございますので、コメントはいたしかねます。
防衛庁が修理をお願いしたことがあるかということでございますけれども、これはそういうような場合もあり得るということは、これはもう通常ございますし、これは契約にもとづいて行うものでございまして、なんら問題になるものではございません。
佐々木議員 今、事実上、そういう要請をすることはあり得る、これを認められたわけですが、問題は、「準備要請をしたことが外部に漏れぬよう細心の注意をすることが求められておりますが、本日内局航空機・通電課長よりこの趣旨についての再々度の念押しがありましたので、遺漏なきよう重ねてお願いを致します」と。特に、その背景は、「自衛隊派遣に係(かかわ)る国会審議が山場を迎えている事」というふうに書いています。
別な文書を見ますと、「国会審議が山場を迎えており、記事が出る可能性を一日でも後に延ばしたい」と。これはとんでもない内容です。
防衛庁は、民間企業に技術者の派遣を要請し、そのことが表に漏れないように、隠すようにと何度も念押しをした。こういうことをやったんですか。
石破長官 防衛庁から関係企業に依頼を行ったことに関連して、依頼先の企業名の公表等についてどのような考え方であるのかとの問い合わせがあったことから、防衛庁の担当者から企業名の公表に関する考え方を精査する必要があること、および、当日は国会審議中であり、部内調整にも時間がかかるということで、速やかにはご回答はできないということは申し上げたと承知しております。
佐々木議員 やっていたということを、事実上認めたわけですね。これは非常に重大だと思います。国会審議がヤマ場を迎えているからそのことを隠しておきなさいと、防衛庁が指示してやらせたと。とんでもない話で、しかも、参事官までこれに加わっている。防衛庁のやり方は極めて秘密主義で、これまでも、事前に報告書をつくって、治安情勢のカギである襲撃事件をひた隠しにしていた。民間技術者が派遣されるという問題についても、国民にも国会にも知られないようにこっそりやる。命にかかわる重大問題です。そういう体質は極めて悪質だということを指摘しておきたい。
石破長官 極めて悪質だとも全く思っておりません。
企業名を公表することで、企業にご迷惑がかかることもあるであろうということでして、ひた隠しにする理由もございません。
佐々木議員 悪質なことは事実です。
防衛庁は、言論統制をやって、マスコミにも実態を知らせない。マスコミの取材があっても、それに対しては隠すように、一日でも先に延ばすように、隠せ隠せ隠せと、再々度念を押した。とんでもない話だ。
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佐々木議員 経済問題にいきたいと思います。
小泉総理は、施政方針演説で、日本経済というのは着実に回復しております、といいました。
大企業の方は確かに利益が急増しております。昨年三月末の決算、二兆二千八百十五億円の利益が上がっています。これは経団連の役員を出している十七の企業の当期純益だけですが、問題は、家計収入がこの間ずうっと落ち込んでいるわけです。家計調査報告では、三年間で四十三万七千円の減少となっています。非常に格差が拡大している、落差が非常に大きいと思いますが、小泉総理は、重大な問題という認識はお持ちですか。
小泉純一郎首相 今のところ大企業中心でありますが、収益も改善して、利益も上げて、業績も上がってきた。これを中小企業にも家計にも結びつけていくようにしていかなきゃならない。まだ本格的な家計収入の増加には結びついておりませんが、明るい兆しも見えてきたのではないかなと思っておりますので、努力していきたいと思っています。
佐々木議員 大企業の利益が伸びた原因は、労働者に対するリストラを徹底してやった、賃金を抑えた、そのためにこれだけ収入が減っているわけであります。下請け中小企業も、大企業の下請け単価の切り下げということで大変な被害を受けています。格差がますます拡大している中でごくごく一部の大企業だけが利益を増やした、これが実態で、そういう格差の拡大が大変重大だという認識を持つべきだと思います。
本来痛めつけられた庶民の家計をどう応援するかというのがやはり政治の責任じゃないかと思うわけですが、小泉内閣の三年間で負担が次々と増やされて、来年度予算でも新たな負担増というのが計画されています。
この間の国民負担増の一覧表をつくってみました。これはまだ一部です。
税金では、酒税、たばこ税、配偶者特別控除の廃止、老年者控除の廃止、その上、所得税の定率減税の廃止・縮減、これも予定されている。医療では、老人医療の負担増、サラリーマンの窓口負担が二割から三割に去年なりました。介護保険料の引き上げ。雇用保険は、保険料が増える、しかし給付は削減される。年金の負担増、厚生年金の保険料、国民年金の保険料が引き上げられる、しかし給付は物価スライドで引き下げられる。さらに、生活保護の老齢加算を廃止するなどなど、ともかく大変な種類であります。
すでに四兆円を超える負担増が昨年決められ、その後、今はっきりしているものだけでも三兆円、合わせて七兆円を超える大変な負担増になるわけです。これを見ただけでも、個人消費が、家計が大変な状況になることは容易に想定されます。
個人消費に与える影響、これは非常に大きいと思いますが、消費を冷やす、そういう結果をもたらすという認識はお持ちですか。
小泉首相 経済全体を見ると、消費は極めて重要な要素なんですが、消費だけではない、やはり財政、金融、全体を見なきゃいかぬ。
負担増と言われますが、これは、税負担がないと本当に負担ではないのかというと、そうでもないのであって、やはりある面におきましては、国債発行というのは、現在の負担は目に見えませんが、将来に返ってくる、これも負担なんです。
財政、金融、総合的に見て今の経済をどう見るかということでありますし、確かに厳しい状況の中にも企業業績の改善も見えてきた。この厳しい中にもやる気を出してきた皆さん方の意欲を支援するような形で、経済を活性化させていくのが小泉内閣の責任だと思っております。
佐々木議員 消費は日本経済全体の六割を占める大変重要な要素です。その消費をどんどん冷やしていったら経済全体がおかしくなることは、民間の研究所でも指摘しています。
第一生命研究所の十二月のレポートは「今回の制度改正によって国内需要の大黒柱である個人消費が景気を牽引(けんいん)することは当面考えにくく、むしろ足を引っ張る可能性も否定できない」とのべ、家計の負担増がどんなに日本経済を痛めつけているかということを指摘しています。
大企業は利益がどんどん伸びているけれども、先行減税で大企業の税負担は軽くなっている、法人税はこの間どんどん下がっている。そういう状況を考えると、これは非常に一方的な、国民消費を冷やす負担ばかりが続いているではないか、平等じゃないじゃないかということを指摘しておきたいわけです。
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佐々木議員 次に、政治と金をめぐる問題についてお聞きします。
総選挙後、あちこちで選挙違反事件が発覚し、自民党の衆議院議員が逮捕されたり、事情聴取などを受けています。
日本歯科医師会の政治団体、日本歯科医師連盟というのがあります。日歯連。この事務所や会長の自宅などが東京地検の家宅捜索を受けました。直接の疑いは、政治資金規正法違反、虚偽記載です。これに関連した愛知の自民党元議員も参考人聴取されています。
日本歯科医師連盟は、自民党最大のスポンサーです。自民党の政治資金団体である国民政治協会に、年に四億六千万円。三年間で十五億円、五年間で二十六億円、政治献金を行っています。業界団体の献金としては、日本医師連盟を抜いて断トツの一位になっているわけです。
自民党総裁でもある小泉総理は、こういう巨額の資金をどのようにして集めているのかご存じですか。
小泉首相 私は会員でもありませんし、どのように集めているかは知りません。
佐々木議員 歯科医師会に入りますと、自動的に政治連盟に加入させられているところがほとんどです。埼葛歯科医師会の「入会希望の皆様へ」という、歯科医師会への入会希望の方に配布をしているパンフがあります。これを見ますと、歯科医師会への入会の説明がありますが、どこにも政治連盟へ加入することは書かれていないんです。
ところが、「年度会費その他の負担金」という項目を見ると、歯科医師会の会費と同時に、自動的に政治団体の連盟会費が徴収される。歯科医師会に入ると政治団体への会費が徴収される仕組みになっています。埼葛歯科医師会連盟会費一万円、埼玉県歯科医師会連盟会費一万二千円、日本歯科医師会連盟会費三万五千円。歯科医師会に入ると、自動的に政治団体への会費合わせて五万七千円を払わされる。本人は政治団体に入った意識は全くない。にもかかわらず、自動的に支払う仕組みになっている。
愛知県の「会費・負担金徴収予定一覧」表を見ると、連盟会費まで含めて、同一口座に自動的に入金されるという形になっています。こうして集められた資金は日歯連だけで年間十七億七千万円。さらに、都道府県の連盟という資金が十一億五千七百万円。その多くの部分が自動的に自民党に流れている。
これはあまりにもおかしい、異常な資金の流れ方だと思うんですが、どうお感じですか。
小泉首相 どういう状況かわかりませんし、その団体、細部について存じておりません。
佐々木議員 よく調べていただきたい。
自民党の歯科医師支部には、党員がゼロのところが結構あります。それなのに、日歯連から、あるいは県段階の歯科医師連盟、その両方から自民党歯科医師支部にお金がどんと入っていく。党員がいないのにお金が入る。それが組織活動して消えている。だれがどう使ったのか、極めて奇怪です。
それだけではない。虚偽記載という問題もある。二〇〇二年の政治資金報告書を見ると、日本歯科医師連盟の本部から合わせて四億五千四百万円が都道府県の歯科医師連盟に出ている。ところが、都道府県の歯科医師連盟が受け取ったと記載されている金額は三億一千五百万円しかありません。何と、一億四千万円も開きがある。これはおかしい。どこにいったんですか、これは。
また、自民党歯科医師支部には日歯連から寄付を受けたという記載がある、ところが日歯連には支出した記載がない。十二県あるんです。これが逆に、日歯連には支出の記載があるのに自民党支部に記載がないのが三都県ある。一体これらの資金はどこにいったのか、極めて不明朗です。
少なくとも政治資金報告書の虚偽記載にあたると思いますが、これは調査して、仮に法令違反があれば厳正に対処するというのは当然だと思いますが、いかがですか。
樋渡利秋・法務省刑事局長 一般論として刑事事件として取り上げるべき事柄があれば、厳正公平、不偏不党で、法と証拠にもとづいて適正に対処をするものと承知しております。
佐々木議員 これは厳正に調査をして対処していただきたい。
都道府県の歯科医師会、歯科医師連盟、自民党歯科医師支部、この三つの組織を四十七都道府県調べてみましたら、さらに重大なことがわかりました。なんと、会長も三つ同じ、あるいは会計責任者も三団体同じ、住所も同じ、こういうところがほとんどです。
各県の歯科医師会、歯科医師連盟、自民党支部、三団体の代表者が全く同じ、事務所住所がすべて同じというのが、二十四県。連盟、自民党支部の代表者が同じで、三つの団体の住所も同じ、これが十三都府県。医師会、連盟の代表者が同じ、三団体の住所が同じ、五府県。三団体の代表者と連盟、党支部の住所が同じが一県。ほとんどの県が、同じ人が会長を兼ね、会計責任者を兼ねている。あまりにも異常な状況で、組織もお金も場所も同じだ。組織としては本来別な組織なはずですけれども、こういう実態になっているわけです。
人も会計責任者も住所も同じだと。これは明らかに奇妙な状況です。総理として調べて、これを峻別するというのは当たり前じゃないかと思うんですが、いかがですか。
小泉首相 日本歯科医師会の問題だと思うんです。その問題というのは歯科医師会じゃなきゃご存じないんです。私どもはわからないんです。
佐々木議員 自民党支部と歯科医師連盟と歯科医師会が同じだといっているんです。会計責任者が、みんな一人がやっている、会長を全部一人がやっている、同じ住所、同じ事務所にある。完全に一体じゃないですか。こういうやり方で、歯科医師会に入った方々は何をさせられているかというと、結局、自民党の応援団にさせられているわけです。
例えば、愛知県歯科医師連盟、それから愛知県の歯科医師会、会長は別々に一応なっています。しかし、連名で歯科医師会の会員に対して、「各地区歯科医師会に於いても一人でも多くの支援者を獲得するため、活動いただいております」。これは、大島参議院議員を(選挙区候補として)推薦決定しているからやってくれと。
「今回の予備選挙で勝利しなければ、七月の参議院選挙に自民党公認候補として立候補することは出来ません」「職域代表である笹井ひろふみ(比例代表)候補の必勝には大島参議院議員に是非勝利していただかなければなりません」「全会員一丸となりこの予備選挙に取り組んでまいりたい」
医師会とはいろいろな思想信条の方、政党支持の方が参加している。そこに特定の自民党の候補を応援するように。しかも、笹井先生の名簿の依頼が十名分来ているが、もうこれ以上依頼は絶対ないかというようなことを、これは愛歯月報、愛知県歯科医師会のこの雑誌のなかで歯科医師会会長が、市の会長がですよ、十名の推薦依頼が来ているが、これ以上ないかと聞いているんです。それで、それ以上ありませんと。
これは、歯科医師会そのものが完全に自民党の下請け団体になっていると言わざるを得ない。これほど異常な状況というのはないと思いますね。これは極めて正常だというんですか。
実態を調べて、その癒着関係についてただすというのが当たり前じゃないですか。このぐらいやれなかったら「改革」にならんでしょう。総理、どうお考えですか。
小泉首相 歯科医師会の先生方は自民党を応援する人もいるでしょう。なかには共産党を応援している人もいるでしょう。それの実態を私ども調べようがないですよ、個人の自由だから。全部が、歯科医師会の会員が全部自民党を応援しているとは私は思っていません。
佐々木議員 小泉総理は答弁に窮してそういう逃げを打っているわけですけれども、自民党がこのような大衆団体を下請けとして使い、組織的にもお金も一体となって、まことに驚くべきぐるみ選挙をやっている、このことを証明しているわけです。
こういうことはきちっと改めていくということが必要だ。日本の政治にとってこの点は極めて重要だという点を指摘して、質問を終わらせていただきます。