2004年2月16日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】米大統領選の民主党候補の指名を争う西部ネバダ州の党員集会が十四日に行われ、ジョン・ケリー上院議員(60)が63%の得票率で圧勝しました。首都ワシントン(特別行政区)での党員集会でも同氏が47%を獲得し、勝利しました。
民主党大統領候補に指名されることが確実視されるケリー氏は、「反ブッシュ」機運の高まりのなかでブッシュ政権批判を強め、「リベラル」色を印象づけています。しかし同氏は民主党主流派。仮に大統領選挙で勝利しても、何が、どこまで変わるかには、疑問符もつきまといます。
「安全保障問題なら、かかってこい」。ケリー候補は、ブッシュ陣営にこう宣言。ブッシュ大統領の単独行動主義を批判し、最大限の国際的支持を得る努力を強調します。
「単独・先制(攻撃)戦争の戦略は米国社会の安全と繁栄を深く脅かしている」(昨年十二月三日の外交演説)とブッシュ政権を批判。「大胆で進歩的な国際主義」と銘打って「疑いない軍事力に裏付けられた外交政策の第三の道」(昨年十二月十六日の演説)を提唱しています。
「米国にとって根本的に間違っている単独行動主義と先制(攻撃)戦争の道を変えるべきだ」とし、同盟関係の重視と国連の活用を掲げています。またブッシュ政権の小型核兵器開発を批判。同政権が離脱した地球温暖化防止の京都議定書については、「交渉に再び参加する」と公約しています。
そこには、国連憲章の世界平和のルールへの言及がないなど、あいまいな点もありますが、ケリー氏のブッシュ批判には、ブッシュ政権の戦争政策に多くの国民が抱く不安が反映しています。
ケリー氏の名を高めたのは一九七一年。「反戦ベトナム帰還兵」代表として、米上院外交委員会で証言したことでした。「自分たちの経験にたって、米国に脅威をもたらすものは南ベトナムに存在しない」。ベトナム侵略を批判した証言は、ベトナム反戦世代の記憶に今なお残っています。
しかし、八五年に上院議員になってからのケリー氏は、米国による侵略戦争に次々に賛成しました。パナマ(八九年)、ソマリア(九二年)、ユーゴスラビア(九九年)、アフガニスタン(二〇〇一年)のいずれも支持したと『タイム』誌は指摘します。
ケリー上院議員は二〇〇二年十月、対イラク武力行使を認める議会決議に賛成を投じました。決議は、ベトナム侵略戦争で米国の本格的侵略につながった米議会のトンキン湾決議(六四年八月に採択、七〇年に廃棄)にも匹敵するもの。これに賛成を投じたことは、同候補の安全保障政策が、覇権主義に立つ民主党主流派の対外政策を踏襲していることを示しています。
ケリー氏は、テロとのたたかいでは武力行使を「ためらわない」とも述べています。昨年末の演説では、「国連安保理が承認しない限りイラク戦争をすべきでない」とのディーン前バーモント州知事の発言を批判。ディーン発言を「大統領がどう米国を守るかについての根本的誤解だ」とし、米国の単独軍事行動を容認する余地を残しています。また米軍増強を公約しています。
ケリー氏はブッシュ政権と企業の癒着を批判し、政権と企業との「特別関係」を断とうと訴えてきました。
ブッシュ大統領は、破たんしたエネルギー企業エンロンから巨額の献金を受け、見返りに減税や企業寄りのエネルギー政策を進めた―。チェイニー副大統領が最高経営責任者になったことがあるハリバートン社は、イラク駐留米軍への石油供給などで大きな利益を上げている―などです。
ところが、ケリー氏自身にも、企業との特別関係を問われる問題が次々に表面化しています。同氏は、他のどの上院議員よりも多くの献金をロビイストから受けてきたことが一月末に明らかになりました。
二月に入ってからも、ケリー議員の地元ボストンでの高速道路建設に絡んで、大手保険会社AIGに便宜を図り、見返りとして献金を受けた疑惑がもちあがっています。
また、ケリー議員の自由貿易一辺倒ぶりは有名。いっそうの円高と対日輸出の拡大を公約しています。