2004年2月17日(火)「しんぶん赤旗」
小泉・自公政権は、有事法制の具体化をめざし、早ければ二月中にも関連七法案(表)を国会に提出する方針です。昨年六月、有事法制関連三法の成立を与党とともに強行した民主党にも協力を求め、早期成立を狙っています。(竹下岳記者)
有事法制は、米国による海外での先制攻撃の戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦し、国民を強制動員する戦争国家づくりを目的にしています。有事法制関連三法の一つである「武力攻撃事態法」は、日本が武力攻撃を受けていない「武力攻撃予測事態」の段階から、米軍や自衛隊の軍事行動を最優先で保障する措置や、「国民保護」のための措置などを実施することを規定。自治体や民間機関(電気・ガス・運送・放送・通信事業者、日本赤十字などの指定公共機関)にも、これらの措置の実施を義務付けました。
政府は、「武力攻撃予測事態」が、米国がアジア太平洋地域で起こす戦争に日本が「周辺事態法」(一九九九年成立)に基づいて協力することで発生することを認めてきました。「武力攻撃事態法」は、その際、自衛隊が本格参戦し、自治体や民間機関、国民を強制動員する仕組みづくりが目的でした。
しかし、同法は「プログラム法」であるため、個別法の制定が必要です。七法案は、この個別法にあたります。
米国が海外で起こす戦争に自治体や民間機関の協力を強制する法案の一つが、「特定公共施設等利用法案」です。
法案の概要によると、「武力攻撃予測事態」から適用され、米軍や自衛隊による空港・港湾、道路、海・空域、電波の優先使用を可能にします。
空港・港湾では、管理者である自治体や公団が米軍や自衛隊の優先使用を拒んだ場合、首相の権限で強制使用することが可能です。法案を所管する内閣官房の担当者は「(米軍機や自衛隊機、避難民の輸送機が)一日中、(民間空港を)使うことも想定される。港湾も同様」と述べ、空港・港湾から民間機や民間船舶をいっさい排除する可能性も認めています。
海・空域でも、船舶の航行を制限したり、飛行禁止空域を設ける権限を政府に持たせ、民間機や民間船舶の強制的な排除が可能になります。
道路については、首相が利用に関する指針を定めるとしているだけです。昨年十月、鳥取県が主催したシンポジウムでは、陸上自衛隊幹部が「(避難住民より)自衛隊車両を優先すべきだ」と発言。自治体側は強く反発しました。
米軍への物品・役務の提供=兵たん支援を可能にするのが、米軍支援法案です。同法案も、「武力攻撃予測事態」から発動されます。
「周辺事態法」では、米軍への兵たん支援は、戦闘が想定されない「後方地域」でしか実施できないことになっています。しかし、日本への武力攻撃が「予測」される事態だということを口実に、海外での「戦闘地域」でも自衛隊による支援が可能になる危険があります。武器・弾薬の提供も「検討課題」(内閣官房)になっています。
現行の日米物品役務提供協定(ACSA)も改悪します。
「国民保護」を口実に、戦争協力への国民の強制動員、国民生活を統制するのが、「国民保護法案」です。「武力攻撃予測事態」に加え、大規模テロなどの「明白な危険」がある場合でも発動されます。
自治体や「指定公共機関」には協力が義務付けられます。一般国民にも、物資の保管や土地・家屋の収用、道路の通行禁止、特定区域への立ち入り制限などが、罰則付きで強制されます。
五日に開かれた民間機関への説明会では、「能力以上のことを要求されても困る」(日本赤十字)「政府による損害補償はどうなっているのか」(JR東日本)など、疑問が噴出しています。
▼特定公共施設等利用法案…空港・港湾、海・空域、電波、道路の軍事優先使用を保障
▼米軍支援法案(米軍の行動に伴う実施措置法案)…自衛隊が「武力攻撃予測事態」から米軍に物品・役務を提供
▼国民保護法案…「国民保護」を口実に自治体や民間機関、国民に協力を強制
▼外国軍用品等海上輸送規制法案…外国軍の武器・物品の海上輸送を規制する停船検査などを規定
▼自衛隊法改悪案…米軍支援法案にあわせ、米軍への物品・役務の提供を規定
▼捕虜等取り扱い法案…「武力攻撃事態」での捕虜などの取り扱いを規定
▼国際人道法違反行為処罰法案…ジュネーブ諸条約等に違反する行為への処罰を規定