2004年2月19日(木)「しんぶん赤旗」
十八日の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長がおこなった質問(大要)は次の通りです。
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志位委員長 私は、年金問題について質問いたします。
小泉内閣が国会に提出した年金法案は、保険料の値上げと、給付水準の引き下げを、今後は国会の審議ぬきに自動的にすすめるという、ひじょうに重大な内容のものであります。
問題点はさまざまありますが、きょうは一点に絞って聞きます。
それは、この法案が、「マクロ経済スライド」という名で、年金の給付水準の実質15%もの引き下げを、一律にすべての年金受給者に押しつけるものとなっており、それは憲法二五条が保障する国民の生存権を侵害するものではないかという問題です。
給付水準について、政府は、現役世代の収入の五割を保障するかのようにいいますけれども、それはごく一部の世帯の問題であって、共働きとか、あるいは単身者の給付水準は三割台から四割台に下落する。さらに重大なことは、国民年金も、給付引き下げの対象とされることです。
国民年金だけしか受給していないお年寄りは九百万人にのぼりますが、受給額は、調べてみますと平均わずか月四万六千円です。こういう高齢者が、どういう生活をされているか。私は最近、東京・渋谷区に住むお年寄りから、こういう訴えをいただきました。
「私ども老人二人で年金は月十万円足らずです。介護保険料を二人で月四千六百円引かれ、国保料を月四千五百円払い、医療費は月四千三百円払い、残りは八万円あまり。毎月赤字で、たばこの吸い殻回収や公園清掃などの仕事で生計をつないできましたが、それも続かなくなりました。これでは生きていけません」
こういう訴えであります。
政府の法案をみますと、こうした苦しい生活を余儀なくされているお年寄りの年金も、一律に実質15%引き下げるものになっている。
政府はこれまで、基礎年金=国民年金の給付水準について、高齢者の「基礎的な生活費」――食費、住居費、被服費、水光熱費など、生きていくのに最低限度の生活を保障するということが建前だといってきました。しかし、その実態は、先ほどいったように、平均して月四万六千円。生活保護の生活水準は平均して月八万四千円。それにも遠く及ばない。そこにまで一律に、実質15%の給付水準の引き下げを押しつける。これがはたして憲法二五条に照らして許されるかという問題です。
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安心できる年金制度をどう築くかについて、わが党は抜本的な対案を明らかにしておりますし、この問題は大いに議論をたたかわせたいと思います。しかし、どんな制度であっても、憲法二五条が国に義務づけている「健康で文化的な最低限度の生活」をすべての国民に保障する―この土台に立ったものでなければならない。この土台を欠いていたら、もうその制度は失格です。私は、生活保護の水準すらはるかに下回る国民年金にまで実質15%もの給付水準の引き下げを押しつけることは、憲法で保障された生存権を国みずから侵害することになる。こう考えますが、総理、この一点について、端的にお答えください。
小泉首相 これはまったく違うのですよ。勘違いといいますか。生活保護と年金とは違いますから。年金ですべて生活ということではなくて、やはり年金というものは生活において、かなりおおきな糧になっております。そういうなかで、やはり年金制度を持続的に安定的に将来不安がないようにしていくためには、年金をいただく、給付される方と、これを負担する若い世代の、保険料を負担する方々の両方を考えなければいかん。
いま、厚生年金と国民年金におきましても、それぞれ保険料の負担の上限を定めましたし、国民年金でいえば、いま一万三千円ぐらいですが、将来、一番上げたときでも一万六千円。ところが、平均的には月四万から五万いただいているわけですから、どちらが、その間、税金も投入していきますから。私は、これは今後ますます高齢者が増えていくときに、負担している方々のことを考えないで、これを全体で総合的に考えていく必要がありますので、私はそういう点につきましては一部だけをとりあげないで、給付と負担を両面みて、その分、さらに税金をどの程度投入するかという両面をみていただかないと、これは一面的な議論になってしまうのではないでしょうか。
そして、生活保護と年金は違います。これを、ごっちゃにしないでいただきたいと思います。
志位 生活保護も基礎年金(国民年金)も憲法二五条に定められた生存権、そこからきているのですよ。その最低保障を割り込んでしまう、削り込むということは許されない。
私の質問に答えがなかった。あなたは(憲法)九条を破壊するだけではない。(憲法)二五条も破壊しようとしている。年金法案の撤回を求めて、質問を終わります。(拍手)
基礎年金額算定に関する政府の答弁●矢野朝水年金局長、一九九九年三月十九日の衆院厚生委員会 「基礎年金は老後生活の基礎的部分を賄う、こういう考え方に基づいて設定されているわけでございます。これは、今回の制度改正では一人当たり六万七千円、したがいまして、夫婦ですと十三万四千円、こういう水準でございます。これは高齢者の夫婦世帯の基礎的消費支出を十分賄える額だと認識しております。 ちなみに、これは全国消費実態調査から平成十年度で推計したわけですけれども、高齢者夫婦世帯の基礎的消費支出、これは食料、住居、光熱水道、家具・家事用品、被服および履物、こういったものの合計でございますけれども、平均値が十二万一千四百八円、一人当たりが六万七百四円、こうなっております」 |