2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 自衛隊のイラク派兵にかかわって問題となっている、「国外犯規定」とはなんですか。(東京・一読者)
〈答え〉 一般に犯罪はその行為が行われた国で、その国の裁判によって裁かれるのが通例です。
しかし、それだけでは不十分な場合があるので、日本の刑法では、(1)外国で行われても日本国内に重大な影響を与える犯罪(2)日本国民が国外で犯した重大犯罪(3)日本国民が国外で被害をうけた重大犯罪―などは、日本国外で行われた犯罪でも、処罰の対象とすると定められています。(第二条〜第四条の二)
逆に、外交使節や外交官、外国に駐留する軍隊などは、滞在するその国の裁判権に服さないことが、国際法や条約などで保障されます。
イラクでは、自衛隊は連合国暫定当局(CPA)命令一七号で、イラクの刑事法規などの適用が免除されます。クウェートとも裁判権免除の地位協定が結ばれています。
この結果、イラクやクウェートで自衛隊員の犯罪が起きた場合には、日本の法律で裁判するしかありません。イラクでは全土で占領軍などにたいする銃撃やテロが頻発するなど、戦闘状態が継続しています。そのため自衛隊員の誤った武器使用などによって現地住民への殺傷行為などが引き起こされる可能性が危ぐされています。
しかし、そういう場合、刑法などの「国外犯規定」では「業務上過失致死傷」などは該当しませんから、処罰の対象にならないという重大な不合理が生じます。これがイラク派兵をめぐる「国外犯規定」問題です。
この問題にかかわって二月六日、日本共産党の吉岡吉典議員が参院イラク有事特別委員会でとりあげた、▽航空機事故による殺傷▽部隊行動基準の適用を誤った武器使用による殺傷―のいずれについても、政府が「国外犯規定」に該当しないと答えたのは、そのためです。(清)
〔2004・2・25(水)〕