日本共産党

2004年2月27日(金)「しんぶん赤旗」

イラク派兵の深層(4)

4つのミッション

「時限でなく恒久法が必要」


 防衛庁の外郭団体が一月、都内で開いたシンポジウム。日米同盟を支持する研究者が発言しました。

 「湾岸戦争(一九九一年)のころ、イラクのような危険な地域に自衛隊が行くとは、想像できなかった。日本は自覚のないまま、軍事大国になってしまうのではないか」

 政府に近い立場の専門家が集まる会合で、こんな懸念の声があがるのは異例です。

 陸自の元幹部も、イラクに派兵される陸上自衛隊への隊旗授与式(一日)の様子をテレビで見て、次のように語りました。

 「現役の時には、想像もできなかったことだ。がんばってきてほしい。だが、一人の負傷者もないということはないだろう。世界のために血を流せというが、実際に血を流すのは自衛官だ。行かなければならないと思っても、複雑な思いがした」

■「違法建築旅館」

 九一年にペルシャ湾への掃海艇部隊の派遣が強行されて以降、PKO(国連平和維持活動、九二年〜)、米国の対テロ報復戦争への支援(二〇〇一年〜)と次々に拡大してきた海外派兵。イラク派兵では、ついに戦後初めて、戦争状態の続く他国領土に強力に武装した陸上部隊を派兵するまでに至りました。

 「正直言ってしんどい(笑い)。4つの海外ミッションが重なるというのは初めてですね」

 石破茂防衛庁長官は、こう語ります(自衛隊の準広報紙「朝雲」一月一日号)。自衛隊は現在、イラク、インド洋、ゴラン高原、東ティモールの世界四カ所に同時展開し、派兵規模は二千人を超えます。

 自衛隊の建前は「専守防衛」。そのため、海外派兵は「付随的任務」とされ、自衛隊法では「雑則」で規定されてきました。

 ところが、この間の自衛隊の活動は、「雑則」の海外派兵ばかり。「違法建築の温泉旅館」という批判も上がっています。「(温泉旅館で)一番注目を浴びている部屋が、ずっと離れの、渡り廊下を三本くらいわたったところにある」(防衛庁関係者)というわけです。

 これからは、海外派兵がいつでも可能な恒久法をつくり、「本来任務」に格上げをする―。石破長官は、こんな狙いをあけすけに語っています。

 「自衛隊が海外4カ所に展開したとなれば、(イラク派兵法などの)時限立法ではなく、恒久法をどのように定めるか、それを本来任務とするのかどうなのか、それを防衛力の在り方の中でどのように位置付けていくのかが必要になってきます」(前出の「朝雲」)

■新たな軍拡も

 すでに政府は昨年八月、内閣官房に海外派兵の恒久法に関する検討チームを設置し、準備作業を進めています。

 昨年十二月には、「防衛力」の在り方を示した「防衛計画の大綱」の改定方針を閣議決定。「国際社会の平和と安定のための活動に主体的・積極的に取り組み得る」ための「自衛隊の新たな体制への転換」を打ち出しました。八月までに草案をまとめ、年末までに策定する方針です。

 「本来任務にするからにはそれに見合った装備も整えなければならない」(前出の「朝雲」)と石破長官はいいます。海外派兵の本格化に向けた新たな軍拡も狙っているのです。

 (つづく)


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