2004年3月10日(水)「しんぶん赤旗」
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「政府の年金、雇用政策は社会保障を壊し、経済の基盤を揺るがす。この道に未来はない」――日本共産党の小池晃政策委員長は九日の参院予算委員会で、小泉「改革」路線と対決し、国民生活をまもり経済再建をはかる道をただしました。
「すでに年金をもらいはじめた人の年金の実質価値を引き下げるのは、史上初めてのことだ」――。小池氏は、政府の年金改悪法案によって、現在の年金受給者が二〇二三年度に受け取る実質の年金額(物価上昇分を差し引いた額)が、〇二年度に比べて15%も引き下げられることを明らかにしました。
政府は、少子化の進行や年金受給者の平均余命の延びを理由に、年金給付水準を引き下げる「マクロ経済スライド」を導入しようとしています。受給額は、物価上昇率から「スライド調整率」=0・9%を差し引いた分しか上がりません。一方で物価が下がれば、その分だけ下がります。
国民年金の平均受給額は、〇二年度の月四万六千円から、二〇二三年度には実質額で月三万九千円まで下げられてしまいます。厚生年金、共済年金の受給額も同じです。
小池氏は「必要な水準を割り込んでいるのに、こんな引き下げをおこなったら生きていけない。この声にどう答えるのか」と迫りました。坂口力厚生労働相は「ある程度やむをえない。(給付を下げるという)言いにくいことを言ったところに今回の(法案の)意義がある」と給付減を当然視しました。
生存権を脅かす国民年金の実質切り下げは、厚労相自身のかつての言明にも反していることです。小池氏は過去の主張さえ投げ捨てた公明党の責任を追及しました。
坂口厚労相が公明党の政審会長だった九九年十二月一日。衆院厚生委員会で「生活保護者にも及ばないような基礎年金(国民年金)は問題がある」として、国民年金の給付水準引き上げの「努力」を政府に求めていました。
小池 五年前の話ではないか。給付水準を引き上げるという当時の主張はどこへ消えたのか。
坂口厚労相 最近は五年前も一昔という(場内から失笑)。負担を増やさないでおこうと思ったら、年金は抑えなければならないのは当然だ。
年金問題でも、五年前の主張を投げ捨て、平然としている公明党と坂口厚労相。小池氏は「与党のとき、わずか五年前に主張していたではないか。本当に信用できない」と厳しく批判しました。
「基礎年金の国庫負担引き上げの財源を増税でまかなうなどとんでもない。税金の使い方の見直しで生み出すべきだ」。小池氏はこう提起しました。
政府は、基礎年金の国庫負担の三分の一から二分の一への引き上げを〇九年度まで先送りしたうえ、その「財源」として、年金生活者への増税(〇五年一月実施予定)や所得税の定率減税の廃止を計画し、〇七年度をメドに消費税率の引き上げまで狙っています。
小池氏は、増税に頼らない財源として「道路特定財源(揮発油税など)の一般財源化」を提案しました。
道路特定財源がつくられた一九五三年当時の道路舗装率は30%でしたが、いまは簡易舗装も含めると96%にのぼります。にもかかわらず日本の道路予算は年間約十兆円で国土面積が二十五倍のアメリカ並みの規模です。
小池 こういう例は世界にもない。道路特定財源、国の分だけで三兆四千億円、これを暮らしを支えるために使うべきだ。
小泉首相 廃止した場合に、ガソリン税はどうなるのかという問題が出てくる。一般財源化すればただちに減税してくれという要求、ほかの財源に使うなという要求も出てくる。そういう点も考慮しなければならない
小池氏は「結局『改革』というが、道路特定財源の一般財源化といいながら口先だけだ。一方で年金『改革』と言っても国民への痛みの押しつけだけだ。いったいこれがどこの『改革』なのか」と批判しました。
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小池氏は、年金財源悪化の最大の原因となっている支え手の減少をとりあげ、派遣、請負やフリーターなどの非正規雇用が激増(グラフ)している問題を追及しました。小池氏が取り上げたのは製造ラインや営業を一括して受託して労働者を送り込む「請負」労働の実態です。
富士ゼロックスの海老名事業所は、生産ラインはすべて請負と報じられるなど、日本の大手電機や自動車などの工場の多くは請負会社が担っています。その数は、一万社百万人ともいわれています。
労働者の実態も深刻です。小池氏は、「四年間で八カ所の職場を転々」「青森で働いていたのに明日からは佐賀へ行ってくれといわれた」などの青年の声を紹介。
若い労働者を過酷な条件で働かせて、ピンハネするようなやり方が日本中に広がり、それを大企業が使っていることを告発、「二十一世紀を担う日本の若者を、労働の切り売りのような働かせ方をしていてよいのか」と迫りました。
首相は、「一概に悪いとはいえない」としながらも「労働条件の改善は十分配慮しないといけない」とのべました。
こうした不安定雇用を拡大してきた政府の責任は重大です。政府は昨年、労働者派遣法を改悪し、派遣労働の歯止めをはずして製造業にも解禁し、不安定雇用の拡大をいっそうすすめました。
「こんなことをはびこらせていいのか。二十一世紀の大問題だ」。小池氏は、業務請負が激増しているにもかかわらず、監督官庁も、規制する法律もない、文字通り野放し状態にあることを指摘しました。
「監督責任をもっている大臣がいるなら手を上げよ」と小池氏が求めても、閣僚席からはだれも手を上げません。
小池氏は「労働条件の過酷さから過労死事件も発生している。こんなことをしていたら、日本経済にとってもマイナスになる。こんなことを放置していいのか」と追及。
首相は「意見をふまえ、どういう対応が必要か検討していく」とのべました。