2004年3月12日(金)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト |
日本共産党の小泉親司議員は十日の参院予算委員会の総括質疑で、今国会に政府が提出した有事関連法案のうち、米軍に自衛隊が物資や業務を提供する日米物品役務提供協定(ACSA)改定案をとりあげ、小泉純一郎首相らを追及しました。
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小泉氏は、ACSA改定案が、日本に対する武力攻撃がおこなわれる「武力攻撃事態」だけでなく、直接の武力攻撃がない「武力攻撃予測事態」でも、米軍への弾薬提供を可能にしたことを指摘し、その理由をただしました。小泉首相は「必要なことはできるようにする」とのべました。
「武力攻撃予測事態」は「たいへん幅広い範囲をもったもの」(小泉氏)です。これまでの国会審議で政府は、「武力攻撃予測事態」が、アジア太平洋地域で米軍が戦争を起こす「周辺事態」と「併存する」と繰り返しています。
「周辺事態」では、米軍への弾薬の提供はできません。しかし、「武力攻撃予測事態」で弾薬の提供ができるようになれば、それと併存する「周辺事態」でも提供は可能になります。
小泉 「周辺事態」でも弾薬を提供できる仕組みをつくったということか。
井上喜一有事法制担当相 これ(ACSA改定案)はあくまで、武力攻撃事態の発生が予想される場合(「武力攻撃予測事態」)に物品等を提供するもので、「周辺事態」とは違う。「周辺事態」に、提供した物品等が利用されることはない。日米の調整メカニズムを通して担保する。
小泉 「武力攻撃予測事態」で弾薬を提供できるとなったら、「周辺事態」も含むことになる。どう切り分けるのか。
井上氏は「周辺事態」と「武力攻撃予測事態」について「論理的には併存することもありうる」と認めながら、一九九七年の新ガイドライン(日米軍事協力の指針)で設置された協議機関である「調整メカニズムを通して調整する」と繰り返すだけ。小泉氏の度重なる追及に、最後は「日米のお互いの信頼関係の中で、きちんと対処していかないといけない」と答弁。「信頼」以外に何の担保もないことを浮き彫りにしました。
小泉氏は「まったく切り分けはされていない。『周辺事態』でも弾薬の提供が可能になる道が開けている」と強調しました。
小泉 周辺事態法で武器・弾薬の提供ができないのは、憲法上できないということか。
有事法制担当相 武力行使と一体化する場合、集団的自衛権の行使とからまってくることから、各般の議論がおこなわれた。政治的な判断として弾薬を含めなかった。
「周辺事態」は、米軍が戦闘行為をおこなっている状態です。そのときに日本が米軍に弾薬を提供すれば、憲法が禁止する武力の行使につながります。
だからこそ、九九年の周辺事態法の審議で、「周辺事態」のさいの米軍への武器・弾薬提供が問題になりました。ところが政府は「憲法上慎重な検討を要する」としながら、「絶対クロだというところまでの断定はしてない」(大森政輔内閣法制局長官=当時)として、憲法違反かどうかの判断は示していません。
小泉氏の追及に秋山收内閣法制局長官は、弾薬提供が憲法違反になるかどうかについて、「結論を出さない状況の中で、政策的に提供しないことが決定された」と、今も判断をしていないことを認めました。
小泉氏は「『周辺事態』での武器・弾薬提供は、憲法違反かどうかわからないということか」とたたみかけました。
しかし秋山長官はそれに直接答えず、「今回の法案(ACSA改定案)で『周辺事態』で弾薬が提供されるという懸念だが、運用の問題として分けてやっていく」「今回の法律ができても、実際上、(「周辺事態」での弾薬提供は)想定されない、ありえないことだ」と繰り返すだけでした。
小泉氏は、「憲法問題を回避して、どんどん『周辺事態』でも弾薬を提供できるようにする仕組みを作っていくというのは、非常に問題だ」と批判しました。