2004年3月13日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党は12日、スポーツ部名で「『サッカーくじ』4年目の実施にあたって」を発表し、サッカーくじに「見過ごすことのできない深刻な事態が進行している」として、「早期の中止、廃止」を強く求めています。
売り上げが激減しているサッカーくじは、昨年のコンビニエンスストア販売に続き、今年から当せん金の最高額を従来の1億円から2億円に引き上げ(賞金繰り越しの場合)、競技場販売にも踏み切りました。「実施にあたって」では、政府、文部科学省が「射幸心をあおらない」「当面、コンビニエンスストアでは販売しない」としてきた言明を「一方的にほご」にしていると指摘し、「率先して射幸心をあおり、…ギャンブルに巻き込んでいる責任はきわめて重大です」としています。
また、スポーツ団体への助成額が大きく落ち込む一方、文科省のスポーツ予算が3年間で163億円削減されていること、日本スポーツ振興センターのアンケートでも「購入しない」派が8割を占めていることなどを指摘。「国民から支持されていない『サッカーくじ』の販売をこのまま続行することは、“百害あって一利なし”」とし、「国民と共同して『サッカーくじ』の弊害とたたかう」としています。
「『サッカーくじ』4年目の実施にあたって」の全文は次の通り。
プロサッカーのJリーグがきょう13日に開幕します。それと同時に、Jリーグを賭けの対象にしたスポーツ振興投票(以下「サッカーくじ」)が実施4年目をむかえます。
多くの人びとがJリーグの好ゲーム好プレーを期待している一方で、ギャンブル性を強めてきている「サッカーくじ」への不安をつのらせています。
実施後、3年間を経た「サッカーくじ」の現状は、青少年の生活環境への影響の面でも、スポーツの振興の面でも、見過ごすことのできない深刻な事態が進行しています。
実施4年目をむかえるにあたって、あらためて「サッカーくじ」の重大な問題性に警鐘を鳴らし、その中止・廃止をつよく求めます。
まず指摘しておきたいのは、「サッカーくじ」が射幸心をいちだんとあおり、青少年にギャンブルを近づける方向が強まってきていることです。
今回から一等の当たりくじの最高額を引き上げ(従来の1億円を2億円に)、コンビニエンスストアでの販売ばかりか、直接サッカー・スタジアムでの販売に踏みきりました。
「サッカーくじ」の実施に際して、政府・文部科学省は「射幸心をあおらない」、「当面、コンビニエンスストアでは販売しない」としてきました。
ところが、「サッカーくじ」の売り上げは、2001年度が643億円、02年度が361億円、03年度が現在まで184億円と激減しました。それに危機感をいだいた文部科学省は、かつての言明を一方的にほごにして、02年8月にコンビニエンスストアでの販売を強行しました。そればかりか、今度は、多くの若いサッカーファンが集まるスタジアムでの販売に乗り出してきたのです。
現状でさえ、「19歳未満には売らない」との規定が守られず、実際に高校生などが買っていることが指摘されています。これにはふたをして、青少年をいっそうギャンブルに近づけることは、とうてい容認できるものではありません。
青少年の健全育成をつかさどる文部科学省が、それとは逆に、率先して射幸心をあおり、青少年をギャンブルに巻き込んでいる責任はきわめて重大です。
3年間の実施を経て、いまはっきりしてきたことは、「サッカーくじ」がスポーツ振興をゆがめる新たな障害物になっていることです。
「サッカーくじ」は、その収益金をスポーツ振興の財源にする、とのかけ声で始まりました。ところが、この間の助成金は、第1回配分(02年度)こそ57億8000万円でしたが、第2回配分(03年度)は半減して約27億円に落ちこみ、これから予定されている第3回配分(04年度)は10億円にもとどかないとみられています。
その結果、「サッカーくじ」を頼りにした地方自治体や競技団体のスポーツ振興事業はその多くが大幅な変更・縮小を迫られ、なかには事業中止に追いこまれたものもあります。また、助成事業へのロゴ「トト(toto)」の義務づけで、子どものスポーツ大会などがギャンブルの宣伝の場になるという、ゆゆしい問題も生じています。
しかも、文部科学省は、「サッカーくじの収益を理由に国のスポーツ予算を削減することはない」という約束を破って、この3年間だけで163億円も削減してきたのです。
「サッカーくじ」頼りのスポーツ振興という考え方は、もはや破たんしています。
「サッカーくじ」が生み出している深刻な事態を放置したままで、4年目の実施に踏み出すことは許されません。
「サッカーくじ」を運営する日本スポーツ振興センターが今年2月に発表した調査でも、「購入しない」「たぶん購入しない」が83・7%にも達しています。コンビニ販売についても、「評価しない」理由の一位は「青少年への悪影響が心配だから」(38・9%)となっています。
国民から支持されていない「サッカーくじ」の販売をこのまま続行することは、“百害あって一利なし”です。政府・文部科学省は、いまこそ、国民のつよい反対世論にまじめに耳をかたむけるべきです。一部に、「サッカーくじ」の経営を民営化すべきだとの動きも出てきていますが、その方向はただ射幸心とギャンブル性を増すだけであり、まったく論外です。
日本共産党は、今年1月に開催した第23回党大会で、「サッカーくじ」の弊害が子どもと社会をめぐる道義的な危機の要因のひとつになっていることを重視して、「サッカーくじの現状は、とうてい容認できない」との態度を表明しました。
この見地から、「サッカーくじ」の実施4年目にあたって、ひきつづきひろく国民と共同して「サッカーくじ」の弊害とたたかうとともに、「サッカーくじ」の早期の中止・廃止をめざして奮闘します。