2004年3月17日(水)「しんぶん赤旗」
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高校進学のため積み立てた学資保険の満期金を福祉事務所が収入とみなし、生活保護費を減額したのは違法として、福岡市の入口(いりぐち・旧姓中嶋)明子さん(31)とその妹が減額処分の取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は十六日、「高校進学のため費用を蓄えることは、生活保護法の趣旨に反しない」との初判断を示しました。その上で減額を違法とした二審判決を支持し、福祉事務所側の上告を棄却しました。原告側の逆転勝訴が確定しました。
同小法廷は「保護費を貯蓄に回すことを、生活保護法は予定していない」としました。しかし、「受給者が節約して貯蓄に回すことは可能で、法律は保護費を期間内に使い切ることまで要求していない」と指摘しました。
その上で「生活保護法の趣旨にかなう貯蓄は、収入認定の対象とすべき資産には当たらない」と条件付きで初めて貯蓄を容認。今回の学資保険は趣旨に沿うと結論付けました。
これは、生活保護費の使途の自由を原則的に認めたもの。また、「ほとんどの者が高校に進学する状況であり、進学は自立に役立つ」と言及しました。
判決によると、姉妹の父・中嶋豊治さん(故人)は一九七六年以降、生活保護費から月三千円を学資保険に積み立て、九○年六月に満期金約四十四万円を受け取りました。福岡市東福祉事務所は収入と認定し、毎月の支給額約十八万円を約九万五千円に減額。父娘三人が提訴しましたが、豊治さんは一審途中で亡くなりました。
一審・福岡地裁は訴えを退けましたが、福岡高裁は九八年十月、「高校進学のため節約して蓄えることは、生活保護法の趣旨を逸脱しない」として処分を取り消しました。
同日の記者会見で、明子さんは「(亡き母が)『よく頑張った』といってくれたらうれしい」と話しています。
生活保護法 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を規定した憲法二五条に基づき、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」を目的としています。保護には生活扶助、教育扶助など七種類があり、福祉事務所が法律の施行を担当。