2004年3月18日(木)「しんぶん赤旗」
公設秘書制度の見直しを検討している衆院議会制度協議会(座長・武部勤議院運営委員長)は十七日の懇談会で、武部座長が試案を提示し、協議しました。
試案は、給与の直接支払い、議員秘書の採用制限、兼職禁止などを法律として明記。焦点となっていた近親者の採用禁止については「配偶者および直系尊属(注)」だけを対象としました。
日本共産党の穀田恵二議員は、「秘書の氏名、続柄、勤務地などを公表し、透明性を確保すること」「近親者の採用禁止は少なくとも三親等にすべきだ」と主張しました。
また武部座長は、秘書の寄付について、「当該国会議員の資金管理団体または所属政党への寄付を禁止する」案と、「議員秘書に対して、議員の所属政党・支部・後援団体等への寄付の勧誘・要求を禁止する」案の二案を示しました。
穀田氏は、「秘書であれだれであれ個人の意思にもとづく寄付は政治参加の権利行使であり、憲法上禁止することはできない。したがって憲法上正当である寄付の勧誘・要求を禁止することも成り立たない」と主張。民主党は「政党への寄付禁止はすべきではない。憲法上許されない」と述べ、社民党も同様の意見を述べました。
今後、政党間協議などをへて、二十三日をめどに議会制度協議会を開いて正式に決める予定です。
(注)直系尊属 直系の関係にある父母、祖父母、曽祖父母など。
衆院議会制度協議会座長の武部勤議運委員長が十七日に示した公設秘書制度の試案は、秘書給与流用問題の本質にメスを入れず、憲法で保障された思想信条の自由や政治に参加する権利を侵害する重大な内容です。
秘書給与の流用で逮捕された辻元清美、佐藤観樹元衆院議員などの事件では、勤務実態のない公設秘書の「名義借り」で給与を詐取していたことが一番の問題でした。いま求められているのは、これを防ぐための実効ある措置です。
日本共産党は、秘書の氏名や勤務先などの情報公開とともに、不正の温床となってきた近親者や親族の秘書採用をやめるよう主張してきました。配偶者と三親等以内の親族採用を禁止する案は、昨年九月の「国会議員の秘書に関する調査会」(議長の諮問機関)答申に沿っています。しかし、座長案では採用の禁止が「配偶者及び直系尊属」にとどまっており、答申より後退しています。
また、秘書給与流用に絡めて、秘書から議員や政党への寄付禁止が盛り込まれているのも重大です。給与として受け取ったものを個人の思想信条に基づき支持する政党に自発的に寄付することは、国民が政治に参加する権利行使の一つです。「秘書に関する調査会」答申でも寄付について「特別な法規をもって禁止できるものでもない」としています。
自民、公明両党がわいろ性を伴う企業・団体献金を野放しにしておきながら、秘書の個人献金を禁止することは、国民の思想信条の自由や参政権を奪うことになります。
日本共産党の国会議員公設秘書は党の専従活動家として秘書の任務に就き、受け取った給与のなかからそれぞれの自発的意思で党へ寄付しています。寄付の同額を国会議員団会計に支出して調査や出張費など国会での立法・政策活動の共同経費に充て、収支は政治資金収支報告書で公表しています。
つまり秘書給与すべてが国会活動に使われ、その他の経費への流用は起こり得ないしくみになっています。
政党が構成員である職員に対し自発的な寄付を呼びかけることまで禁止するのは憲法に抵触するだけでなく、諸問題の解決に役立たないものです。
古荘智子記者