2004年3月22日(月)「しんぶん赤旗」
イラク戦争開始から一周年の二十日、欧州各国でも米英両国によるイラク戦争を糾弾し、無法な占領の終結を求めるデモや集会が行われました。参加者らは「戦争でテロはなくならない」「占領やめよ」の声を響かせ、英国やイタリア、エストニアなど派兵国では自国軍撤退の要求も大きく掲げました。
イタリア |
【パリ=浅田信幸】ローマではイタリア軍部隊のイラク撤退を要求するデモに、主催者発表で二百万人近い人々が参加。この日の国際統一行動では最大の規模となりました。
ローマからの報道によると、行動に賛同した団体は二千に達し、全国から特別列車や貸し切りバスを連ね、続々と集合地点の共和国広場に集合。立すいの余地もなく、デモは予定を大幅に繰り上げて出発しました。
デモ隊は巨大なにじの旗を広げ、「戦争屋、われわれはあなたたちを平和にはしておかない」「戦争反対、テロ反対」「イタリア兵のイラク撤退」などのスローガンを叫びながら行進しました。
デモに加わった共産主義再建党のベルティノッティ書記長は「平和の第一歩としてイタリア軍のイラク撤退というデモのメッセージは明確だ」と語りました。
イタリアのベルルスコーニ政権は、国民の圧倒的な反戦世論に背を向けて戦争を支持し、米英に次ぐ約三千人の部隊をイラクに派遣しています。昨年十月十二日に爆弾攻撃で十八人が死亡して以来、撤兵を要求する声が高まっています。
スペイン |
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【パリ=浅田信幸】一週間前に同時列車爆破テロと総選挙での政権交代を経験したスペインでは、自国軍部隊のイラク撤退を要求する大規模なデモが各地で行われ、マドリードで六万人、バルセロナで二十万人が参加しました。
マドリードでは「家に戻れ」と書かれたプラカードを持ち、「われわれは常に主張してきた。戦争反対」などと叫びながら市中を行進し、中心部のプエルタ・デル・ソル広場で終結集会を開きました。
集会ではポルトガルのノーベル文学賞受賞者ジョゼ・サラマゴ氏が演説し、死者二百人を超える犠牲者を出した列車爆破テロとその直後の総選挙でイラク撤退を明らかにしていた社会労働党の勝利に触れ、「きょうマドリードは欧州の精神的な首都になった」と発言。集まった人々の熱烈な拍手と歓声を浴びました。
イギリス |
【ロンドン=西尾正哉】ロンドンでのデモ・集会には、突風も吹く荒れ模様のなか主催者発表で約十万人(警察発表二万五千人)が参加しました。
集会には、「うそつき」「ブレアは辞任せよ」と書かれたプラカードを持った学生や労働者、家族連れなどが参加。ハイドパークから中心部のトラファルガー広場までデモ行進しました。
「もう、うそはごめんだ」と書かれた手製のプラカードをもったロンドン在住のエリザベスさんは、「ブレア首相は、英国民を守るためにイラク戦争をしたのではない。ブッシュ大統領についていくという自分の関心で誤って国民を導いた」と批判しました。
英国では六月に欧州議会選挙とロンドン市議会・市長選挙が行われます。「第三党に投票しブレア首相を罰しよう」のプラカードを持つポール・スタンニングさんは「スペインでは選択肢があったが、ここでは二つの保守政党があるだけだ」と、二大政党制のもとで国民の反戦世論が政治に反映しないことを指摘。平和団体「戦争ストップ連合」幹部も候補者になる連合組織への投票を呼びかけました。
フランス |
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【パリ=浅田信幸】フランスのパリでは一万人がバスチーユ広場から共和国広場まで約二キロにわたり、デモを繰り広げました。「イラク戦争反対、公正で平和な民主主義の世界を」のスローガンのもとに、平和運動全国評議会や人権同盟、全学連、労働総同盟、社会党、共産党ら約五十団体が呼びかけました。
デモの先頭グループは、イスラエルのシャロン首相、スペインのアスナール首相、ブッシュ米大統領、ブレア英首相の顔写真の下に「殺人者、イラクから撤兵せよ、パレスチナに正義を」と書かれたプラカードを掲げ、「占領ノン、連帯ウイ」などのスローガンを叫びながら行進しました。
一人でデモに加わったという主婦のペケフさん(55)は「スペインで社会労働党が勝ったことに励まされました。イラク問題はイラク人に委ねるべきです。外部からの介入で問題が解決しないことはいまの困難が立証しています」と話しました。
また大学の研究室に通っているペトロ氏(30)は「米国はもっと世界を理解すべきだ。欧州と米国は反テロでは協力しなければならないが、米国はもっと他国の主張に耳を傾ける必要があると思う」と語りました。
ギリシャ |
【パリ=浅田信幸】ギリシャのアテネでは、アテネ大学の学生ら五千人が米大使館に向けて抗議デモを行い、また、労働総同盟(GSEE)や、さまざまな非政府組織(NGO)でつくる社会フォーラム、左翼政党らが呼びかけたデモには一万人が参加しました。
第二の都市テッサロニキでは約二千人が、米国と英国の領事館に抗議デモを繰り広げました。
ポルトガル |
【パリ=浅田信幸】ポルトガルのリスボンでは、平和協力評議会、労働総同盟(CGTP)や左翼諸党の呼びかけに応えて、五千人(警察発表)がデモに参加しました。
リスボンからの報道によると、デモ行進者らは「戦争ノー、占領ノー」の横断幕を先頭に、「不法な戦争を非難する」「ポルトガルは警官を引き揚げよ」などのスローガンを叫んで市の中心部を行進しました。
ポルトガルはイラク戦争を支持し、昨年十一月からイラクの治安維持のために警官百二十八人を英国指揮下の部隊に派遣しています。
デモに加わったポルトガル共産党のカルバリャス書記長は「ポルトガルはイラク占領への関与をきっぱりと停止すべきだ。テロとのたたかいでは、まず諸国民の貧困や不満に取り組む必要がある」と語りました。
エストニア |
【タリン=田川実】旧ソ連のバルト三国の一つエストニアの首都タリンでは、同国軍隊のイラクからの撤退を求める集会が開かれました。
エストニアは米国の求めに従い、昨年七月から歩兵部隊四十五人をイラクに派兵。今年二月には二十一歳の兵士が攻撃を受け死亡しています。
時折小雨がぱらつく中、市内中心部の国会議事堂前に集まった「緑の会」のメンバーら約五十人は、「イラクに大量破壊兵器はなかった」「われわれの若い兵士を戻せ」などと書いた横断幕を掲げて訴えました。
元新聞記者で現在タリン市議会議員のドミトリー・クレンスキー氏は、「エストニアで集会が行われたのは重要だ。国会内では部隊の派遣期間を短縮しようとする動きも出てきている」と語りました。
中東諸国 |
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【カイロ=岡崎衆史】「これ以上占領を続けてイラク人の血を流させるな」―イラク戦争開始一周年の二十日、中東ではエジプト、トルコ、ヨルダン、バーレーンなどで、米国によるイラク占領に反対する集会やデモが行われました。
このうち、エジプトのカイロでは市内中心部のタフリール広場に約三千人が集まり、「イラク占領反対」「米軍の早期撤退」を訴えました。
集会に参加した技師のモハメド・イブラヒムさん(56)は、「米国占領下のイラクでは占領への抵抗がますます強まっています。イラクの混乱の大本は他国を軍事力で占領していることです」と強調。「エジプトでは、政府による規制でデモに参加できる人数は少ないけれども、ほとんどのエジプト人は、私たちと同じ気持ちです」と述べました。
会計士のオサマ・バハさん(45)は、「ブッシュ(米大統領)は世界を欺いて戦争を行い、いまでは世界でテロを起こす要因になっている」と述べ、スペインや中東でテロが続発している背景に、力によって世界を支配しようとするブッシュ政権の誤りがあると指摘します。
弁護士のサラ・サリムさんは、イラクへの日本の自衛隊派兵について、「米国の共犯者として、日本が派兵を行ったことはエジプトの多くの人々に衝撃を与えている」と非難しました。
同胞のアラブ人が多数を占める米占領下のイラクで治安が悪化し死傷者が相次いでいることに、アラブ諸国の人々の怒りは高まっており、カイロの集会では、米国旗を燃やす場面もありました。
一方、報道によると、トルコではアンカラとイスタンブールでデモが行われ、数千人が参加。ヨルダンやバーレーンでも小規模のデモがありました。
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ベネズエラ |
【カラカス=田中靖宏】ベネズエラの首都カラカスで二十日、イラク戦争一周年の平和集会が開かれ、参加者は外国への干渉と暴力反対、自決権の擁護を強く訴えました。チャベス政権の革命を支持する与党や平和、女性団体が世界の行動と連帯して開いたもの。
会場のモレロス公園周辺には千人以上が集まり、ロック演奏などをはさんで午前十一時から夕刻まで、連続のアピールや演説が続きました。
米国がキューバだけでなく中南米の革新的な動向に圧力や介入を強めていることに強い警戒と怒りが示されました。
参加した教員のドミンゴ・アルバレスさん(52)は、「世界はあらゆるテロに反対すべきだ。イラク侵略だけでなく米国によるキューバ封鎖も国家テロ行為だ」と批判。「スペインの選挙でも国民の平和の願いが強く示された。世界の人民は目をさましつつある。全世界の行動は励ましだ。日本はイラクに軍隊を派遣すべきでない。国民は頑張ってほしい」と語りました。
中南米各国 |
【サンサルバドル(エルサルバドル)=菅原啓】二十日、中南米各国でもイラク占領と米国の干渉政策に反対する抗議行動が取り組まれました。
メキシコからの報道によると、首都メキシコ市では、中心部のアラメダ公園から米大使館まで数万人がデモ行進しました。
子どもたちが書いた絵を掲げた参加者らが、「戦争はいや。平和がいい」「米軍はイラクからもハイチからも出て行け」と叫びながら行進すると、反対車線を走る多くの車がクラクションを鳴らして応援します。
参加者の一人セシリアさん(21)は、「イラクでは米兵もたくさん死んでいる。罪のない人々が何人死のうとブッシュ大統領は痛みを感じないのでしょうか。米国は、世界中に干渉するのをやめるべきです」と語ります。
南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、百を超す団体の呼びかけでイラク占領反対のデモが行われ、数千人が参加。米大使館前で「ブッシュはイラクから出ていけ」と唱和しました。チリの首都サンティアゴでも左翼政党や人権団体が呼びかけたデモに約三千人が参加しました。
アルゼンチンの有力紙ナシオン(電子版)によると、中南米ではこのほか、ウルグアイ、ブラジル、エクアドル、ホンジュラス、キューバ、プエルトリコなどで反戦行動が展開されました。
インド |
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【ナガルコイル(インド・タミルナド州)=小玉純一】インド最南端カニャクマリ岬を抱えるタミルナド州カニャクマリ地域の中心都市ナガルコイル(人口二十万人)で二十日、イラク占領反対の国際共同行動に呼応したデモ行進が行われました。
四百人の参加者は「米国はイラクから出て行け」「戦争のない世界をつくろう」と力強く市民に訴えました。デモ終結地点では平和の象徴のハトが放たれました。
キリスト教修道女のサロジャムさんは「米国はイラク人を支配し抑圧している。村の会合でもこの問題を話しあった。新聞を読めない人、買えない人の啓もうも必要。真実を知れば人々はたたかうのです」と話していました。
デモに先立ち屋内集会が行われ、女性団体や労組指導者の報告、寸劇が披露されました。
集会・デモの主催者は、ことし一月ムンバイで開かれた「世界社会フォーラム」への参加を組織したカニャクマリの地域委員会です。
世話人のジェイコブさんは「人々は宗教やカースト、支持政党の違いで分断されています。その違いを超えて平和と社会正義のため協力することが大事です。そうすれば新しい世界をつくれると思います」と語りました。
インドでは同日、首都ニューデリー千五百人、チェンナイ三百人などインド各地で国際共同行動のデモ、集会が取り組まれました。報道によるとカシミール地方スリナガルでは、インド共産党(マルクス主義)のタリガミ州議会議員と七百人のイスラム教徒がアメリカのイラク占領終結を求め行進しました。