2004年3月23日(火)「しんぶん赤旗」
小泉内閣の「三位一体の改革」で二〇〇四年度から、国の補助金や負担金が一兆円削減されます。それに伴い、特別養護老人ホームの建設補助がバッサリ削られます。一片の通知で削減を知らされ、頭を抱える設置者や自治体関係者たち。実情を宮城県内に見ました。宮城県・辻畑尚史記者
仙台市高齢企画課の担当者は、厚生労働省からの削減通知を手にしたときのことを、困惑気味に振り返ります。「あまりに急な通知でした。社会福祉法人にダメージがないように建設してもらうには、どうするかですが…」
〇四年度予算編成が大詰めをむかえていた一月中旬、突然のことでした。
同通知は、特別養護老人ホームへの国庫補助について、〇四年度の新規事業の場合、建設単価を3・5%引き下げたうえで、各都道府県・政令市への補助総額を、前年度に補助申請した実績総額の三分の二に抑えるとしています。このため政令市の仙台市では、新年度に三カ所建設する計画を、二カ所に抑制せざるを得ない事態になっています。
宮城県は、新年度に建設計画していた五カ所の特養ホームのうち二カ所を、急きょ今年度計画に追加して組み入れました。それでも、新年度に建設予定の三カ所の建設補助は、減額となります。
今年度計画に前倒しされた、社会福祉法人「宮城厚生福祉会」が利府町に計画している施設(特養ホームやデイサービス)の場合、新年度に建設するとなれば、国庫補助が総額六千六百万円も減額となります。同会が経営する老人福祉施設「宮城野の里」の小野ともみ所長は「施設は足りない。しかし、補助金は削られる。公的責任って、一体なんなのか」と疑問を投げかけます。
宮城県内の特養ホーム入所希望者(待機者)は、約九千人。入所を望む声は、切実です。
仙台市老人福祉施設協議会の高橋治会長は「現在の建設計画どおりやっても解消できる見通しがないのに、さらに建設を抑える。これでは入所希望者(待機者)は、ますます増えることになるだろう」と話します。
介護が重度化した高齢者のついの住み家となれる施設は、特養ホームしかありません。高橋会長は強調します。「一番困った人と介護者が最後に頼るのが特養ホームなのです。『三位一体の改革』で来年度も再来年度も一兆円削られれば、大変なことになります」
県北部の米山町でも新年度、特養ホーム建設が計画されています。町はじまって以来、待ちこがれてきた建設です。設置者は、町内で知的障害者施設を運営している社会福祉法人「槃(はん)特会」です。
しかし、国庫補助は、今年度基準より約千六百万円の減額です。今年度補助が出ていた非常通報装置(補助額三十九万六千円)までも、全額自己負担となりました。施設長の三島照義苑長は「自己負担が増えた分、借り入れとなりますが、返済できるかどうか。頭が痛い」と語ります。
町内で行政区長をつとめる泉田三男さん(73)は、話しました。「他町に特養ホームを探さなければならなかった町民にとって、町内への建設は悲願です」
町は、国の補助削減に立ちはだかるかのように、新年度予算で二億円の建設補助を決断しました。人口一万一千人余、農村部の小さな町ですが、国庫補助一億五千万円をはるかにしのぐ補助額です。郡内の七町も、合計五千万円をバックアップします。これらは、「三位一体の改革」で自治体への地方交付税も大幅減額され、苦しい財政事情のなかでの支援策です。
「町の援助がなかったら、計画から撤退するしかありませんでした。ギリギリの線ですがなんとかやりくりし、地域の役に立っていきたい」と三島苑長。
米山町保健福祉課は、補助の動機を説明します。「町としてもぜひ、建てたい施設です。それに、農村部は年金暮らしが多く生活が厳しい。利用者負担にはね返らないようにもしたい」