日本共産党

2004年3月26日(金)「しんぶん赤旗」

CS放送朝日ニュースター 志位委員長語る

イラク、パレスチナ問題、

通常国会、年金問題について


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CS放送・朝日ニュースター「各党はいま」で星浩朝日新聞編集委員のインタビューにこたえる志位和夫委員長

 日本共産党の志位和夫委員長が二十四日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演して発言した大要を紹介します。聞き手は、朝日新聞の星浩編集委員。

イラク戦争から1年――「有志連合」という名の侵略連合が大きな矛盾に

  イラク開戦から一年がすぎました。さまざまな動きが起きております。とくにスペインの政権交代に伴う外交方針の転換、新しい動き、「有志連合」にたいしても非常に陰りが出てきています。どうごらんになっていますか。

 志位 スペインの総選挙で、戦争を推進してきた与党が敗北したことは、世界に衝撃をあたえました。イラク戦争がはじまって一年。この戦争は、アメリカが「有志連合」と称していくつかの国を集め、国連を無視してはじめた、先制攻撃の戦争、無法な侵略戦争でした。一年たって、それが歴史によって裁かれ、世界で孤立を深める――この姿がはっきりあらわれてきたと思います。

 とくにスペインで大きな政変が起こり、次期首相になるサパテロ氏は、「状況が変化しなければ、六月末までに軍隊を撤退させる」と明言しました。これは(三月)十四日のことでしたが、二日後の十六日に、ホンジュラスでマドゥロ大統領が「派兵を継続する条件がなくなった」と撤兵を表明する。すでに中南米ではニカラグアが、二月に財政困難を理由にして撤退しています。イラクに軍隊を派兵したのは、日本政府の勘定でも三十八(カ国)なんですけれども、そのうちスペインが欠け、ホンジュラスが欠け、ニカラグアが欠け、少なくとも三つは崩れつつある。

 さらにポーランドの大統領が「われわれは(大量破壊兵器問題の)作り話にだまされた」と語ったと伝えられました。またイタリアの閣僚のひとりが「この戦争は間違っていたのではないか」ということをのべて、大きく報じられました。ポーランドとイタリアは、派兵の数から言ったら米英につぐ国ですが、こういう国で動揺が起こっている。スペインは米英の侵略に加わった国です。そこでああいう政変が起こった。こうして、一年たって、「有志連合」という名の侵略連合が、世界の批判の声のなかで、大きな矛盾をきたしています。

 三月二十日には、全世界で同時に、「占領やめろ」を叫んで大きなデモンストレーションが起こりました。ローマで二百万人、ロンドンで十万人、全米で数十万人、日本でも数十万人のとりくみがおこなわれましたが、人民のたたかいがまた澎湃(ほうはい)として起こってくる。

 アメリカ主導の侵略戦争と軍事占領の破たんが、これだけ明りょうになった状況ですから、イラクの問題の解決の軌道を、名実ともに国連中心の枠組みに移し替え、イラク国民に主権をすみやかに返還する、そして占領軍は撤退する、日本の自衛隊もただちに撤退するということが、強くもとめられている状況だと思いますね。

「テロとの戦争」論の誤り――アフガンでも、イラクでも証明された

  日本の一部ではスペインの総選挙結果は、テロに屈したんじゃないかという議論が出たりして、私もおかしな議論かなという気がする。小泉総理は、開戦一年を受けて依然として正しい戦争だったという認識を示しているんですけれど、スペイン、「有志連合」の変化についての日本政府の対応をどうごらんになっていますか。

 志位 テロとの関係について言いますと、私は、テロをなくすべきだ、テロを根絶すべきだというのは、全世界の共通した立場だと思うんですよ。問題は、その方法、手段だと思うんです。

 アメリカなどは「テロとの戦争」というわけです。つまり、テロに対して、戦争、軍事、この力で撲滅する、これがテロをなくす道なんだと。日本政府も「テロとの戦争」という立場にくみして、これに参加してきたわけです。(日本共産党は)そうではなくて、テロに対しては、全世界の団結した力で追い詰めて、法による裁きによってテロをなくすという立場です。二つの立場があるわけです。

 これはもとから考えますと、二〇〇一年の「9・11」に、ニューヨークで(同時多発)テロがおこった。このときにテロをなくすという点では全世界が一致したんですけれども、アメリカは戦争によってこれに対応する動きにのりだしました。

 それにたいして、日本共産党は、このアフガン(戦争)のときの対応でも、戦争ではテロはなくせない、国際的団結による法と裁きでテロはなくすべきだという立場にたって、戦争に反対する書簡を不破議長と私の連名で国際社会にむけて二度にわたって出したわけです。

 実際に、アフガン戦争をみても、タリバン政権をつぶしたけれども、テロはなくならない。逆にテロリスト組織が跋扈(ばっこ)する。暴力の連鎖が続く状況です。

 そこにイラク戦争です。いまは小泉首相は「テロとのたたかい」といっているけれど、最初は「テロとのたたかい」を名目にした戦争じゃなかったんです。「(フセイン政権が)大量破壊兵器を保有しているのはけしからんから、これをなくす」ということで始めた戦争だったわけです。

 ところが、大量破壊兵器がいっこうに出てこない。調査にあたっていた米国調査団の団長も「もともとなかった」と言い出す。ブッシュ大統領までNBCテレビのインタビューで、「間違いだった」と言い出す。これが通用しないというなかで、後知恵で「テロとの戦争」と言っているわけですね。

 そういう無法な侵略戦争をはじめたことで、イラクでも逆に国際テロリストグループが流入し、治安も悪化し、泥沼化という事態がすすむ。さらに、米軍が「掃討作戦」と称して、一般のイラク人の家屋にまで無法に侵入して家宅捜索をやって連行していく。一万人をこえる人々が無差別に逮捕・勾留されているという事態がある。不法な占領のもとで、米軍に対する憎しみがどんどん広がり、あの戦争をはじめたことでイラク全体がテロと暴力の温床にされました。さらに、イラクだけでなく、全世界にテロを拡散させる、暴力を拡散させるという事態をつくってしまった。

 戦争でテロはなくせない――これはアフガン戦争、イラク戦争を通じて国際社会がはっきり学ぶべき教訓だと思います。テロをなくすには、戦争や軍事力でつぶすというやり方ではなく、国際法にもとづく警察と司法の力こそ必要だという立場にたつことがもとめられていると思います。

米軍主導の軍事占領が破たんしつつある――国連中心の枠組みへの転換こそ

  米国は自分が設定した六月三十日の(イラクへの)権限移譲という期限が迫り、かといって軍隊を撤退するわけにはいかないということで、さまざまな巻き込みといいますか、外交の流れが出てくると思いますが、これから六月にかけてどう展開すると思いますか。

 志位 いま外交交渉もやられているわけで、あまり先をいうことはできないんですけれど、少なくともアメリカが当初描いていたシナリオは破たんしたと言えます。つまり、アメリカは六月の権限移譲の際に、選挙で議会をつくる。やり方としては間接選挙でやると。すなわち各地で実力者会議をもってそこで議員を選ぶという間接選挙によって、自分たちの管理下におかれるような議会と政府をつくろう――かいらい政府をつくろうという方針だったわけです。

 ところが、(現地に入った)国連のブラヒミさん(国連事務総長特別顧問)も、「これは通用しない」という判定を出す。それからイラク国民も「そんなやり方はとても受け入れられない」ということで、(間接選挙という)アメリカの思惑は破たんしました。アメリカの軍事占領を続けるもとでは、イラクのほんとうの国づくりはできないということがだんだんはっきりしつつあります。この破たんしつつある枠組みを、名実ともに国連が中心に座るような枠組みに転換する。その枠組みのもとで、占領軍が撤退する状況をつくるということが求められているのです。

 二月十四日、イラク周辺国の外相会談が行われ、周辺国がすべて参加しました。そこで共通して確認されたことが、「国連中心の枠組みへの移行」と、「占領軍のすみやかな撤退を準備」することです。こういう方向こそ、周辺諸国も望んでいるし、国際社会も望んでいることです。

イスラエルの暴挙――ブッシュ大統領の論理が一番悪い形であらわれた

  中東問題の震源地ともいえるパレスチナで、イスラエルの暴挙ともいえる事件が起きました。ヤシンさん(パレスチナ原理主義組織ハマスの精神的指導者)の殺害で、混乱が広がっていますが、どうごらんになっていますか。

 志位 イスラエル軍によるヤシン師の殺害は、国際法に違反した無法行為であり、中東和平にまったく逆行した愚かな残虐行為です。絶対に許すわけにはいかないと思います。これに対して中東諸国はもちろん、EU(欧州連合)も反対するなど、国際社会からごうごうたる非難が起こっているのは当然です。

 イスラエル・パレスチナ問題の基本というのは、イスラエルが国連決議に反して不当な占領を続けているという事態があるわけで、占領地からの撤退をはかるということが、なによりも大事です。

 同時に、私たちは、パレスチナ側の対応として、それに対してテロで立ち向かう、一般国民を無差別に殺傷するようなやり方で対応するならば、大義をなくすことになり、決して国際社会の支持も得られない、テロという手段をパレスチナ側はとるべきではない、といってきました。それから、イスラエルという国を抹殺するという立場が、(アラブ諸国のなかに)かつてはあったんですけれども、この立場にたってしまったら和平はあり得ませんから、抹殺論にたたないで共存という立場でパレスチナは対応する必要があるといってきました。

 この間も、(中東和平の)ロードマップ(行程表)というのがつくられて、「双方の共存」ということが確認されてきたわけです。そのなかで、またもやこういう形で一方的な殺害行為をやるということは、パレスチナ問題の今後にとって、はかりしれない深刻な逆流をもちこんだと思います。

 この問題を考えるうえでも、シャロン首相の論理というのが、ブッシュ大統領と同じだというところが重大ですね。

  テロリストという位置付けですね。

 志位 ええ。そしてテロとたたかうためには戦争が必要だと。つまり「対テロ戦争」という論理なんです。ブッシュ大統領が実行している、テロにたいしては戦争でたたきつぶすんだというのと同じ論理が、いちばん悪い形でシャロン政権に現れていると思います。

 ですから、(イスラエルが)こんどの事件のようなあれだけの無法をやっても、アメリカは批判ができず、支持している。もしもシャロン政権を批判したら、「私はブッシュ大統領と同じことをやっているだけだ。ブッシュ大統領はフセイン大統領をテロリストだといって(政権を)つぶした。同じことをやっているだけなんだ」といって開き直るでしょう。こうしてアメリカはイスラエルに対して軍事的な支援もやってきたし、無法を容認・支持してきたというのが実態です。こんどの事件は、アメリカの「対テロ戦争」という間違った論理、テロに反対するという名目ではどんな無法も許されるという論理が、一番悪い形で現れたものです。国際社会が、こんな無法は許さないということを強くいう必要がありますね。

  日本側の対応ですが、一応、批判声明といいますか、イスラエルに対して…。

 志位 おずおずとした声明ですね。最初は「双方に自制」を求めるという、“どっちもどっち”論の立場でしかものをいえなかった。しかし、国際世論がきびしいということで、あわてて(イスラエルは)「無謀な行為」をやったということをいっていますけれども、きっぱりと国際法違反の無法行為だということを政府として言明していない。どうもアメリカの顔色をうかがっているという姿勢が、そこから見えますね。

通常国会の折り返し点――日本共産党はどの問題でも責任ある姿勢つらぬく

  通常国会は折り返し点ですが、どんな総括をしているのですか。

 志位 前半国会では、まずイラクの問題が議論になりまして、私たちは、イラク派兵が、大義なき戦争への憲法違反の派兵だということについて、かなり突っ込んだ論戦をやりました。これは数の力で通されましたけれど、問題を明らかにするうえで、私たちの論戦は大きな力を発揮したと思います。前半国会では、年金や雇用など、暮らしの深刻な問題についても、国民の立場にたった論陣をはり、問題点を明らかにしてきました。

 この間の国会で印象的だったのは、予算案が衆議院で強行された際に、組み替え動議を出したのは共産党だけだったのです。民主党は組み替え動議を出さなかった。私たちだけが国民の暮らし中心の予算に組み替えるという提案を出した。そういう点でも筋を通した責任ある対応をとりました。

 北朝鮮問題では、経済制裁法案が、自民、民主、公明などの議員提出の法案として準備されました。私たちはこれに反対しました。これは六カ国協議が継続していて、(昨年)八月の六カ国協議での「(各国は)事態を悪化させる措置をとらない」という合意がある。この合意に違反するといって反対の態度をとりましたが、拉致問題の解決にとっても、核問題の解決にとっても、外交的な話し合いの解決が唯一の大道ですから、これを前進させる立場で、理性的な立場をとった。制裁法案については、他党からも「こんなことやっていいのか」という声が聞こえてきたのですが、批判されることを気にして反対の声をあげられない。そういうなかで責任ある立場をとりました。私たちは国会内の勢力は小さいですが、院外のたたかいとも協力しながら、責任ある態度をつらぬいてきたと考えています。

年金問題での対決――消費税大増税か、大企業の応分の負担責任か

  後半国会で最大の焦点である年金については、どういうたたかい方をされるのか。

 志位 これは国民的な大きな闘争をいま呼びかけています。今度の政府案は給付の削減と、負担の増加を、国会の審議抜きに連続的に国民に押しつけるという、かつてやったことのない大改悪です。負担増も重大ですが、給付を減らす方も、国民年金だろうが、厚生年金だろうが、年金をいまもらっている人だろうが、これからもらう人だろうが、一律実質15%カットです。こういうことを押しつけることになったら、憲法で保障された国民の生存権を侵害することになる。そういう大きな論を立てて、私たちは論戦してきましたが、これからがいよいよ本番になってきます。年金の大改悪にストップをかけるという論戦を大いにやっていきたいと思っています。

 ここで大きく問われているのは、年金のあり方です。政府はもっぱら「負担と給付のバランス」の計算しかやらないんです。私たちは、「この計算だけなら、電卓一個あればできる」とよく言うのです。問題は、国が公的年金にどういう責任を果たすのか、さらに言えば大企業に社会保障に対するどういう責任を果たさせるのか、ここにある。ここをしっかり議論する必要があると思います。

 財源の問題も、私たちは対案をしめしています。本当の意味で憲法で保障された生存権という土台に立った年金制度をつくるのか、それとも「負担と給付のバランス」だけだったら民間の保険と一緒だが、そういうものに年金制度をおとしめてしまうのか、ここがいま問われている。

  年金の掛け金が年金本体以外に使われている問題についてどう思われますか。

 志位 これは(年金)積立金が膨大にあって、その積立金の運用がグリーンピア(大規模保養基地)に示されるようなものすごい無駄遣いに使われ、事業も破たんしてしまった。その責任も含めて、国民が払った掛け金が無駄に使われている事態は、きれいさっぱり一掃する。そして責任の追及もあいまいにしてはいけないと思います。グリーンピアなどあれだけ穴をあけたわけですから、年金運用の責任というものもきちんと明らかにする必要があると思います。

 この問題になると必ず財源の問題が出てくるわけです。この前もNHKスペシャルを見ていましたら、わが党以外の党が消費税(増税)を言うわけです。自民も公明も民主も社民まで言いました。私たちは年金財源という名目で消費税を上げることには、絶対に反対です。もともと社会保障というのは立場の弱い方がたの生活を支える制度です。ところが、消費税というのは立場の弱い方がたに重くのしかかる税金――国民の生存権を侵害する税金ですから。

 では、どこに財源を求めるかということですが、歳出の削減という点では、公共事業費の削減、軍事費の削減など、削減するところはたくさんある。とくに六兆円の道路特定財源を一般財源化して、年金にも使えるようにする。「高速道路より年金」ということを私たち強く主張しています。

 さらに、新たな負担が出てきたときに、私たちは高額所得者と大企業に応分の負担を求めるということを主張しています。一つだけ数字を紹介したいのですが、日本の企業が社会保障のために払っている、税と保険料の総額は国民所得に比べてどのくらいかということを、主要国の比較でやってみたんです。そうしますと、イギリスで16%、ドイツで18%、フランスは24%にたいして、日本は12%です。この十年間、法人税の減税で、大企業にいたれりつくせりの恩恵を与えてきた結果です。企業の税と社会保険料の負担が国民所得比でここまで下がった。フランスの半分です。

  国際競争力という名目はあるんでしょうけれども…。

 志位 国際競争力と言うけれども、国際的スタンダード(標準)よりずっと低い負担しかしていないという現実があるんです。私たちは、大企業に応分の負担、世間並みの負担は求めて当然だと思っています。よく財界の人たちは、ちょっとでも負担を増やしたら大変だということを言っているんですが、フランスへ行ったら倍の社会保険料と税を払って、それでもフランスで商売をしているでしょう。トヨタにしても日産にしても。ですから、日本でできない道理はないわけで、きちんと大企業に社会保障に対する責任を果たさせるということが、私は大事だと思います。

 年金問題というのは、結局、「年金財源のため」と称して消費税の大増税に道を開いてしまうか、それとも大企業や高額所得者に応分の責任を果たさせて、民主的な歳入の仕組みをつくるかというところが大きな対決点ということになってくると思います。

  通常国会後半、年金、道路など問題山積ですが…。

 志位 もう一点、有事関連七法案は、去年強行された有事法制を具体化するもので、米軍支援の武力行使に道を開き、自治体や民間を強制動員する仕掛けをつくるものです。私たちは、これを許さないたたかいも強めたいと思います。

  今日はどうもありがとうございました。


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