日本共産党

2004年4月6日(火)「しんぶん赤旗」

“イラク人の限界点超えた”

占領への怒り 全土に


 【カイロ=岡崎衆史】米占領下のイラク各地で四日から続くイスラム教シーア派指導者の一人、ムクタダ・サドル師支持者と占領軍の衝突は、イラクの人口の約六割を占めるシーア派住民と占領軍の初めての大規模な衝突であり、米国の占領へのイラク人の怒りが従来、反米姿勢を明らかにしていたスンニ派地域を越えて全土で抑えきれないほど高まっていることを示しました。

シーア派住民の平和的デモまで

 サドル師側は、徹底抗戦の構えを表明しており、今後衝突がさらに広がる可能性があります。数日後には、シーア派の聖地カルバラで同派の宗教行事アルバインが盛大に行われます。イラク情勢は重大な局面を迎えています。

 シーア派の中の一グループというのではなく、アラブ系イラク国民全体を巻き込んだ市民と占領軍の対立という形でさらに深刻化することが予想されます。

 イラクでの占領軍と住民の衝突はこれまで、フセイン元イラク大統領が優遇してきた人口の約二割から三割を占めるアラブ系スンニ派地域が中心でしたが、今回は、これまで平和的なデモに終始してきたシーア派住民が中心です。人々の怒りをここまで高めた要因はそもそも米英などの占領軍の横暴な支配そのものにあります。

 シーア派指導者の一人、サドル師は、イラク国民の占領への怒りや憎しみを背景に影響力を拡大してきた人物。米国のイラク侵略後、バグダッドの貧しいシーア派住民地域を治安維持のため巡回し、食糧を配るなどして支持基盤を固めた同師の人気は高い。

 ほかのシーア派組織が米占領当局が占領補佐の目的で任命した統治評議会に加わる中で、サドル師がこれを拒否し、米国を最も厳しく批判してきたことでいっそう高まりました。

 同師の反米的言動に危機感を強める米国のイラク占領機関、連合国暫定当局(CPA)は三月二十八日、サドル師支持の週刊紙アルハウザを反米暴動を扇動しているとの理由で六十日間の発禁処分としました。サドル師支持者らは、言論弾圧としてこれに抗議し、ほぼ連日、デモに立ち上がってきました。デモは平和裏に行われたにもかかわらず、占領当局は、サドル師側近のヤクービー師を拘束し、徹底弾圧の構えを示しました。

 当局の力による押さえ込みに住民の怒りが頂点に達します。サドル師支持住民は四日、ヤクービー師の釈放、新聞発禁処分の取り消し、占領軍の撤退を求め、バグダッド、中部のナジャフ、南部のナシリヤ、アマラ、バスラなど各地でデモを実施。このうち、ナジャフのデモ隊は同市近郊のスペイン軍を中核とする占領軍基地で同軍と衝突し、占領軍側の発砲で、イラク人少なくとも二十人が死亡、約二百人が負傷しました。

 カタールの衛星テレビ・アルジャジーラの現地特派員によると、平和的なデモに対して、スペイン軍側が武装ヘリも投入して無差別に攻撃。これにより、同特派員も負傷しました。

“もはや沈黙を 続けられない”

 犠牲者発生にサドル師側は強く反発。同師事務所は四日、声明をだし、支持者に武器を持って占領軍とたたかうよう求め、ジハード(聖戦)を宣言しました。

 アルジャジーラのバグダッド特派員は四日現地からこう伝えました。「占領軍はイラク人の限界点を超えてしまった。もはや沈黙し続けることはできないだろう」

 日本の自衛隊が駐留するサマワ周辺ではまだシーア派サドル師支持者グループの動きは伝えられていません。しかし、今後、シーア派全体の動きとなった場合には、事態の悪化も予想されます。イラク国民からみれば、自衛隊も占領「連合軍」の一部であり、ナジャフでの衝突が市民とスペイン軍、エルサルバドル軍兵士との衝突という形で展開したことからみても、今後は予断を許しません。


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