2004年4月8日(木)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相が二〇〇一年八月十三日に靖国神社に参拝したことをめぐる住民訴訟で福岡地裁(亀川清長裁判長)は七日、「内閣総理大臣の職務による公式参拝で、憲法二〇条で禁じた宗教的活動に当たり違憲」との判決を言い渡しました。原告住民側の損害賠償請求は退けました。小泉首相の靖国参拝にたいする違憲判決は初めて。
戦没者遺族、宗教者、市民ら二百十一人が「憲法違反の参拝で精神的苦痛を受けた」として一人当たり十万円の損害賠償を求めたもの。
判決は首相の参拝を「(公用車を使い内閣総理大臣と記帳するなど)行為の外形において、内閣総理大臣の職務の執行と認めうる」と判断。「(その行為が)一般人に与える効果、影響を考慮し、客観的に判断すると、憲法によって禁止されている宗教的活動に当たる」として、憲法の政教分離原則違反と認定しました。
判決はさらに「靖国神社を四回も参拝したのは、政治的意図に基づいている」と指摘。「裁判所が違憲性の判断を回避すれば、今後も同様の行為が繰り返される可能性が高い。当裁判所は本件の違憲性を判断することを自らの責務と考えた」と異例の言及をしました。小泉首相は本件後も毎年参拝。全国六カ所で提訴されています。
判決について原告団の郡島恒昭氏(浄土真宗本願寺派僧侶)は「賠償請求は認められなかったが実質的には完全勝訴」と評価し、控訴しない意向を表明。主文で損害賠償請求を棄却したため、首相側は控訴できず、同判決は確定する見通しです。
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日本共産党の志位和夫委員長は七日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を憲法違反とした福岡地裁判決について、次のような談話を発表しました。
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本日(七日)、福岡地裁は、小泉首相の靖国神社参拝について、憲法第二〇条三項で禁止されている宗教的活動に当たり、同条項に反するとの判断を示した。この間、一連の裁判において、違憲の疑いがあるとの指摘はされていたが、国を相手とした訴訟ではじめて違憲と断定されたことは当然である。
憲法二〇条が国の宗教的活動を禁止したのは、日本のアジアへの侵略戦争が、宗教である神道と一体となっておこなわれたことへの、痛苦の反省にもとづくものである。侵略戦争の精神的支柱とされ、この戦争を遂行したA級戦犯をまつっている靖国神社に首相が参拝することは、この歴史の教訓をふみにじり、アジア諸国のきびしい批判をあびてきた。
福岡地裁の判決はきわめて当然であり、総理は憲法を順守し、今後の参拝をきっぱりと中止すべきである。
憲法第二〇条 (1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
(2) 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
(3) 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
靖国神社 一八六九年「東京招魂社」として東京・九段に建てられ、一八七九年に「靖国神社」と改名。内務省所管の一般神社と違い、陸海軍両省所管の軍事的宗教施設として造られました。教科書でも「ここ(靖国)にまつられてゐる人々の忠義にならって、君(天皇)のためにつくさなければなりません」(国民学校四年修身)と、天皇への忠誠死を教えるなど、侵略戦争推進の精神的支柱でした。戦後、政教分離原則を定めた憲法の下で一つの宗教法人になりましたが、一九七八年、東条英機元首相らA級戦犯十四人を合祀(ごうし)。現在約二百十万人がまつられ、日本の植民地時代に戦争にかりだされた「朝鮮・台湾出身者」四万七千人も含まれています。