2004年4月9日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党の「最低保障年金制度」を実現する政策は、「全額国庫負担の最低保障年金制度の確立」を、理念としても具体的システム改革としても政策のメーンテーマに掲げたものです。このことは全国の労働組合、社会保障推進協議会傘下の大衆団体に、今までの運動への確信と、これからの運動への勇気と展望を与えるものになると思います。
|
日本の年金は、国民年金のみの受給者が約九百万人いますが、その受給額の平均は月四・六万円という低さです。これは全年金受給者の三人に一人にあたります。無年金の人も、おそらく百万人はいるでしょう。
国民年金保険料の未納率は四割にたっし、免除や未加入者を含めると払っていない人は一千万人を超えています。
今日、年金制度をめぐる最大・緊急の課題は、こうした低額年金、予測される大量の無年金者といった制度の空洞化に歯止めをかけ、いかに解消するかということです。この問題を解決しない限り日本の年金制度に未来はありません。
ところが自民・公明政権が今国会に提出した年金改悪法案は、段階的に保険料を約27%(国民年金)、または約35%(厚生年金)も引き上げ、さらに年金額を実質15%削減するものです。それも一回決めればあとは国会審議の手続きなしに自動的に進行させる。一方、十年前に国会で全会一致で決めた基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げの公約は、いとも簡単に破り捨て、五年後に先送りしてしまいました。
また政府は、国民年金保険料の未納者にたいし、財産を差し押さえ強制徴収する行政指導を強行し、改悪法案にも強制徴収の強化策を盛り込んでいます。
|
政府の姿勢は、国民生活の実態を無視した高い保険料を押しつけ、それが払えない人は低年金、無年金になっても仕方ないというものです。これでは悪循環に拍車をかけるばかりで、空洞化の問題を解決することはできません。
これにたいして決定的な対抗軸を明示したのが今回、日本共産党が発表した「最低保障年金制度」の実現にすみやかに踏み出す政策です。
政策は無年金、低額年金という空洞化の解消を改革の重点課題に掲げ、それを目指してまず、最低保障額五万円からスタートすると宣言しています。しかも、その上乗せ部分として、それまで払ってきた保険料に合わせて月二万円から三万円積み上げるというものです。
将来的には憲法二五条の理念にもとづく水準にするとしていますが、最終的な金額は総合的な高齢期保障の充実のなかで考えればよいと思います。まず月五万円以下の低額年金をなくそうというスタートは、大きな意味をもっていると思います。
「最低を保障する年金」は全額国庫負担(税方式)でなければ日本の年金に未来はない、という年金改革の方向は、すでに全野党、学者、専門家を含めた多数の意見となっています。全労連、連合の改革案もこの基本となる枠組みでは一致しています。ただ、財源調達方式では少なからぬ違いがあります。
政策は財源について、「歳出の見直しと税制の民主的改革でまかなう」という視点で、大企業の社会的責任と負担のあり方を明確にしています。
日本共産党の年金政策は、これまでも年金制度の理念と到達点を日本国憲法に据え、大企業の社会的責任と負担を強調してきました。
さらに今回は、異常な公共事業費や軍事費などを削減する歳出の見直しとともに、歳入の見直しとして、法人税率や所得税の最高税率の見直し、法人税へのゆるやかな累進性の導入、外国税額控除など大企業向け優遇税制をあらためることで、安定した年金財政を確保するといっています。
いま財界の雇用・賃金政策の転換のなかで、大企業は際限のないリストラによって保険料の企業負担を減らすという現実が生まれています。そうしたなかで、大企業の社会的責任と負担を、抜け道をつくらせずに背負わせるためには、税制改革で大企業の特権的優遇税制をあらため、税収を増やすことが欠かせません。
このような歳出、歳入の見直しによって社会保障予算へ優先配分していくのが合理的であり、日本の現実に合っていると思います。
逆累進性の強い消費税増税をきっぱり否定しているのも特徴です。
こうした財源論は、全額国庫負担の最低保障年金を求める多数派のなかでの政策論議をいっそう活発化させ、まちがいなく一定の役割を果たすことになると思います。
また、最低保障年金制度の上乗せ部分となる、厚生年金や共済年金の報酬比例年金部分については、大企業を中心に労使の負担割合(現行は折半負担)を変更させるたたかいとして、今後も重視していかなければならないと思います。