2004年4月9日(金)「しんぶん赤旗」
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「まったくごしゃげる! 史上最悪の年金大改悪」―。“ごしゃげる”とは、「腹が立つ」「ふざけるな」という意味。秋田県のお国言葉。労働組合や市民団体でつくる年金改悪反対4・15県民大集会実行委員会は、全労連がよびかけた「4・15年金スト」にこたえ、秋田市で千人規模の集会を計画し、五百カ所での学習会や宣伝と多彩に取り組んでいます。
いま、新聞の見開きよりやや小さいB2判の黄色いポスターが目を引きます。実行委員会が作製したストップ年金改悪を掲げた意見ポスター。三月下旬に五百枚作製し、商店街や個人宅に張り出しています。四月下旬には第二弾のポスターをつくり、千人の賛同者を募って、世論と運動を広げようとしています。
ポスター第一弾に名前を出したのは、仁井田訪問看護ステーションで働く看護師さんたち五人。訪問看護とケアマネジャーを兼務しています。中通病院労働組合が開いた春闘学習会で、年金改悪の内容を学びました。
今年度で定年を迎える最年長の佐藤昭子さん(59)は最近、自分の年金額を社会保険事務所で計算してもらいました。
三十八年間働いてきた佐藤さんの年金額は、月十六万円程度。「四―五年前には二十万円近くもらえたのに。どんどん改悪され、こんなに減ってるとは思わなかった」と怒りをにじませます。
患者の病気はもちろん、暮らしぶりも相談に応じるのが、訪問看護の仕事です。鎌田津賀子さん(52)は「ごしゃげるなー」と繰り返します。
鎌田さんが担当する八十代の女性は、障害を抱える息子と二人暮らしで頼みは月二万七千円の国民年金だけです。生活保護を申請したものの、生命保険などで“資産”があるという理由で認められませんでした。
「病気のあとなので、訪問看護をすすめても『一回四百円の看護より、おかずを買いたい。ホウレンソウが食べたい』といわれてしまう。お金のない人は使えない制度になっています」と、鎌田さんは告発します。
後藤雅子さん(50)は、患者宅を訪問するたび、生活の自衛策も限界だと感じるといいます。「少しでもお金を使いたくないから、お年寄りが暖房もつけずに布団にくるまっているんです。看護師がくるときだけ、ストーブをつけるんです」
政治への怒りを持ちながら、「殺しはしめぇっし」と自らを納得させているお年寄りたち。医療改悪や介護保険で負担を強いてきたうえの年金改悪は「実際に殺さなくても、『いつ死んでもいいですよ』というのが政府のやり方よ」と後藤さんは憤ります。
「弱い人たちは、なかなか声をあげられない。せば、現場を知ってる私たちが立ち上がらねば」と、千円のカンパで意見ポスターに名前を連ねることにしました。
保険料は値上げする一方で、給付は削減…。こんな中身が明らかになるにつれ、県民の怒りもじわりと広がっています。
「とくに国会で審議入りしてから、街の反応がぐんと良くなった」というのは、実行委員会事務局の佐竹良夫さんです。秋田駅前で、JRの制服を着た職員が署名をしたり、ストリートミュージシャンの青年が署名集めに飛び入り参加したこともありました。
意見ポスターへの賛同も広がっています。秋田県保険医協会の呼びかけにこたえ、複数の開業医からも申し込みが寄せられています。中通病院労組が毎朝、門前で配っているビラを見て、「私も賛同します」と申し込んできた患者もいます。
秋田県労連や年金者組合を中心に、年金改悪中止と安心できる年金制度の確立を求める陳情も旺盛に取り組んでいます。県内六十九市町村のうち、四十二の自治体が意見書を採択しています。
十五日の当日、午後六時半からの県民大集会のほか、早朝街頭宣伝、県庁を一周する昼休みデモ、千秋公園での三日間(十三―十五日)の座り込みを実施します。