日本共産党

2004年4月9日(金)「しんぶん赤旗」

フセイン政権崩壊1年


イラクではいま、英米軍による首都バグダッド陥落とフセイン政権の崩壊一年の九日を前に、占領軍への抵抗は首都周辺の少数派イスラム教スンニ派住民が多い地域から人口の六割を占めるシーア派の多い中南部にも拡大、北はキルクークから南はバスラまで全土で反占領闘争が激化しています。これに対し米軍は大規模な掃討作戦を開始しましたが、イラク国内での新たな抵抗を呼ぶとともに、米国やイラクに派兵している諸国でも占領政策の行き詰まりへの批判が高まっています。



イラク
強まる占領への抵抗

 「いま進んでいるのは単にサドル師(反占領強硬派のイスラム教シーア派指導者)支持者と占領軍のたたかいではない。占領に反対するイラク国民と占領軍のたたかいだ」。アラブ首長国連邦(UAE)の衛星テレビ・アルアラビアの特派員が七日、イラク中部のナジャフから伝えました。

衝突が拡大

 占領当局による系列新聞発禁処分と側近逮捕に怒ったサドル師支持者と占領軍の衝突は、当初中部のシーア派聖地ナジャフで起こりましたが、首都バグダッド、中部カルバラ、クート、南部アマラ、ナシリヤ、バスラなどに拡大しました。

 戦闘が激化する中、四日から七日までのスンニ派地域を含むイラク各地の戦闘で、イラク人の死者は二百人を超えました。米軍など占領軍兵士の死者も三十五人以上に達しました。

 ナジャフに滞在するサドル師は七日、声明を出し、イラクの主権移譲を早期に行うよう求め、受け入れられなければ、「イラクは第二のベトナムになる」と警告しました。

 現地からの報道によると、ナジャフのサドル師事務所には、シーア派の他の勢力やスンニ派、イラクの各部族の代表などが押しかけ、連帯を示しているといいます。

反占領で団結

 イラクのスンニ派権威、ムスリム聖職者連盟の幹部は七日、カタールの衛星テレビ・アルジャジーラで、「米軍の行為は(イラクの)人々を反占領の立場で団結させることになるだろう」と語りました。

 米軍は、イラク西方のファルージャでも三月末に米国人四人を惨殺した犯人逮捕を名目に、町全体を戦車などで封鎖し、武装ヘリや攻撃機を用いて、激しい攻撃を実施しています。七日にはモスク(イスラム礼拝所)を空爆するなど、約97%がイスラム教徒のイラク人の怒りをいっそう強めています。

 (カイロ=岡崎衆史)

米政権
開戦後最大の危機に

 大量破壊兵器はなかったとするケイ元中央情報局(CIA)特別顧問の議会証言、同時多発テロ以前の対応は怠っていたと政権を批判したクラーク元大統領補佐官の調査委員会証言に続き、占領下イラクでの混乱激化はブッシュ大統領にとって新たな打撃となっています。

最低の支持率

 米軍と戦闘を交える相手がフセイン元政権残党派の枠を超えていることから、「戦争開始後最も危機的」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)との意見も聞かれ、世論調査では、ブッシュ大統領の支持率は過去最低を記録しました。

 十一月の大統領選挙にむけ各地を遊説しているブッシュ大統領は五日、六月末に予定しているイラクへの主権移譲は予定通りだと語るとともに、シーア派強硬指導者のムクタダ・サドル師を、「そのままにさせておくことはない」と述べ、対決姿勢をあらわにしました。

 同時多発テロを機に対テロ戦争を開始、アフガニスタンやイラクへ侵攻し、「戦争大統領」とまで自称するブッシュ大統領にとって、イラクの状況が泥沼化したとしても、その強硬路線を転換させれば、「弱腰」との非難を招き、大統領再選が極めて困難となるのは確かです。

 一方で、ファルージャで起きた米民間人の殺害と残虐行為、それに続くシーア派住民の蜂起などイラクの事態混迷は、ブッシュ政権の占領政策が招いたものであることに間違いありません。

 「サドルにたいする軍事行動を起こしたら、全土での反乱が起こる。一方で米国が自制したら、占領当局が基本的に欠陥を持っているという弱さを露呈する危険を招く」―六日付のUSAトゥデー紙は一面トップに掲載した論評記事で、ブッシュ政権が直面している矛盾をこう紹介しました。

 占領当局による行き当たりばったりの対応やブッシュ政権の計画の無さを批判する論調もみられます。

 六日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、サドル師を支持する新聞を発禁処分にした行為を「騒動を招いただけの無謀でまずい考え」と酷評、同日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説は、ブッシュ大統領は六月三十日という主権移譲の日時をいうが、「この日に何が起きるのか、米国が依然として考えを持ってないことに比べるとタイミングはあまり重要ではない」と主張しました。

批判に変化も

 イラク侵略と占領への批判――。米国内では量とともに質的な変化もみられます。七日、議会で発言にたった民主党のバード上院議員は、「(イラクで起きていることを)ベトナムの繰り返しと感じているのは私だけではないことは明白だ」と指摘。同党のケネディー上院議員は五日、ワシントン市内で講演し、イラクの事態を「ブッシュのベトナム」とまで表現しました。

 これまで一部の反戦団体が唱えていた言葉を、開戦直後にはほとんどの議員が戦争に賛成した民主党の有力者まで使い始めています。

 五日、民間調査機関、ピュー・リサーチ・センターが発表した世論調査では、ブッシュ大統領の支持率は43%と調査開始以来最低を記録。イラクでの事態がさらにエスカレートすれば支持がさらに落ち込むことは確実です。

 (ワシントン=遠藤誠二)

イタリア
野党が撤兵要求

 イラク各地でイスラム教シーア派住民と占領軍との衝突が激化するなか、南部ナシリヤでは六日、イタリア軍と住民との間で銃撃戦が発生、イラク人十五人が死亡しました。

根本的な疑問

 銃撃戦のニュースは、イタリアのベルルスコーニ右派政権が主張する「復興支援のための派兵」という口実に根本的な疑問を抱かせ、野党は改めて撤兵を強く求めています。

 「情勢は平和と安定に向かっていない。イラク駐留のイタリア軍の将来について、政府が明確かつ緊急に発言するよう求める」。野党中道左派連合「オリーブの木」のルテリ代表は六日、銃撃戦の報道を受け、こう強調しました。

 イタリアは現在、イラクに約三千人の部隊を派遣しています。国民の半数以上は派兵に反対しており、政府は「人道復興支援のためだ」と繰り返して派兵を正当化してきました。しかし六日の銃撃戦ではイタリア軍がイラク住民に銃を向けて殺害、イタリア兵も十二人負傷しました。この様子はマスメディアでも詳しく報じられ、「人道支援」という「大義」を揺るがしています。

 右派政権の閣僚らは相次いでマスメディアに登場し、「派兵はイラク国民のため」との弁明に躍起になっています。

 一方、野党側からは撤兵論が噴出しています。

戦争が戦争呼ぶ

 「オリーブの木」の主要政党、左翼民主(党)のファシノ書記長は「戦争が戦争を呼んでいる」と強調。国会での釈明を首相に求めると同時に、占領終結と国連による解決のためのイニシアチブをとるよう迫りました。同党の一部議員らは、占領終結と国連中心の復興への切り替えを求める動議を準備中といいます。

 共産主義再建党のベルティノッティ書記長は、欧州全体が「占領軍の即時撤退と国連中心の関与」を求めるよう訴え、平和運動をいっそう飛躍させることを呼び掛けました。

 緑の党も「住民の蜂起は軍事占領が平和をもたらさないことを確認した」と指摘し、即時撤兵を主張しました。

 平和勢力は六日から、下院前で即時撤兵を求める座り込みを開始、三月二十日の二百万人デモに続く新たな行動も検討中です。

 (島田峰隆・国際局員)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp