日本共産党

2004年4月10日(土)「しんぶん赤旗」

戦争状態に逆戻り

撤兵は屈服でない

日本人拘束

世界の政治家も指摘


 日本人三人を拘束したテログループの「ムジャヒディン旅団」が自衛隊のイラクからの撤退を求めていることについて、小泉首相は、「自衛隊は撤退しない」と主張、撤退がテロに屈するとの立場を強調しています。これはブッシュ米政権と同じ主張です。

 しかし、イラクからの撤兵は、国際的に見てもテロへの屈服などではありません。例えば次期首相が派遣部隊の撤退を主張しているスペインをみてみましょう。

 スペインでは、三月十四日の総選挙でイラクからの撤兵を政策にかかげたサパテロ書記長率いる社会労働党が圧勝しました。米英に同調してイラク派兵をつづけるアスナール政権が敗北したのです。

 この問題で米政権は「(イラクからの撤退は)テロの恐怖に屈している」と攻撃しました。これに対して、サパテロ氏は、テロ後、国民は「テロと立ち向かい民主主義を強化するために街頭に出た」と述べつつ、「このような描き方は愚劣だ」と反論しました。

 また、欧州連合(EU)のプローディ欧州委員会委員長(元イタリア首相)は、イタリア紙コリエーレ・デラ・セラに掲載された書簡で、イタリア軍撤退について「だれもこれらの立場をテロを前にした弱い態度と読み取る権利はない」と語り、「撤兵」と「テロへの屈服」を同一視することの誤りを指摘しました。

 イラクで活動する日本の非政府組織(NGO)からも、自衛隊が来ることで、人道援助活動がかえってやりにくくなったと、自衛隊派兵を厳しく批判する声が出ています。松本眞志記者

ロシア紙「連合ぐらぐら」

 【モスクワ=田川実】ロシアの各紙は、情勢が深刻化する中で迎えた「バグダッド陥落」一年の九日付で、イラク問題を大きく扱い、日本人らの人質事件にも触れました。

 「イラクで本当の戦争が始まった」と大見出しを掲げたのはイズベスチア紙。「米軍は一年前、発砲することなく諸都市を攻略したが、いまそれらは放棄された」と書きました。

 「人質を取ることは弱点を突き、精神的打撃を与える効果的手段」となっており、人質事件や情勢の不安定化は広がると予測しています。

 「米副大統領の訪問を前に日本と韓国の市民がイラクで人質に」との東京発の記事を載せたのは独立新聞。「日本の世論は急速に変わりつつある。多くの国民は、米国が事態を収拾できないだけでなく、状況の分析とそれに基づく対応ができないとの疑念を持ちだしている」と述べています。

 コメルサント紙は「連合はぐらぐら」と指摘。「ノルウェーから日本にいたるいわゆる有志連合国内では、軍撤退を求める声が大きくなっている」と指摘しました。

仏紙「米の誤った決定 原因」

 【パリ=浅田信幸】米国主導の「連合軍」の攻撃によるイラクのバグダッド陥落から一年の九日付仏紙ルモンドは、占領に抵抗する戦闘が一気に広がり情勢が急激に悪化しているのは米国の「誤った決定」に原因があるとする解説記事を掲載しました。

 同紙は、シーア派民兵組織マフディ軍団との戦闘にかんする「最も理解しがたい」米国の決定として、「確かに暴力をあおったが、誰も読んでいなかったサドル師の新聞の閉鎖」「宗教的行事のさなかの月におけるナジャフでのイマムの逮捕」、一年前の殺人事件を理由としたサドル師の逮捕命令などを列挙。

 その理由を見いだせないイラク人が引き出す結論は「米国は支配し殺すことしか知らない」「米国はわれわれを決して尊重せず、自由にしてくれない」ということだと指摘しました。

 またバグダッド陥落後、「政治的空白と不可避的な混乱があるにしても、イラク国民は米国よりはるかにうまく戦後を秩序立てられることを理解しなかった」こと、「イラクに奉仕するよりも、正当性のない不人気な指導者たちとともに掩蔽壕(えんぺいごう)に閉じこもった」こと、「暴力の呼びかけに対して暴力で応えている」ことを米国の「誤り」だと断定しています。

イラク

占領軍、2都市で統制失う

4日以降 イラク人死者450人超す

 【カイロ=岡崎衆史】イラクでは九日、米主導の占領へのイラク住民の抵抗に対し、米軍が激しく攻撃、戦争状態に逆戻りともいえる状況になっています。四日からのイラク人死者はすでに四百五十人を超えました。バグダッド西方では九日、米軍車両や石油輸送車などの車列が武装勢力に襲撃され、少なくとも九人が死亡し、米兵など占領軍兵士の死者も五十人を超えました。

 現地からの報道によると、米軍は、バグダッド西方のファルージャをFA18攻撃機や武装ヘリも使って大規模に攻撃。しかし、住民の反撃を受け同市を制圧できていません。

 イスラム教スンニ派が多数のファルージャでの戦闘について、連合国暫定当局(CPA)のブレマー文民行政官は九日、同日正午に軍事攻撃を一時停止したと発表しました。しかし、カタールの衛星テレビ・アルジャジーラの現地特派員は、その三十分後には、米軍機が空爆を行ったと伝えるなど、戦闘は続いています。ファルージャでは七日、市中心部のモスク(イスラム教礼拝所)を米軍が空爆、四十人の死者がでていました。

 一方、占領軍は九日までに、中部の二都市ですべてもしくは主要部の統制を失いました。シーア派指導者サドル師支持の民兵は九日、中部クーファの全域とシーア派聖地のナジャフの中心部を支配下に置いているといいます。

 中部のクートでは、ウクライナ軍が市内から郊外に撤退したため一時サドル派民兵が支配しましたが、米軍は九日までに同地を制圧したもようです。

 アルジャジーラが八日現地の医療当局者の話として伝えたところによると、中部カルバラでは八日夜から九日朝にかけてサドル師の民兵と占領軍が交戦し、イラク人十五人とイラン人六人が死亡しました。

 ナジャフに滞在するサドル師は九日、クーファのモスクで代読されたメッセージで、ブッシュ米大統領を「敵」と名指しし、「イラクからの撤退を忠告する」と述べました。

バグダッド

宗派の垣根を越えて集会

反占領闘争へ連帯

 【カイロ=岡崎衆史】米軍など占領軍に対する反占領抵抗闘争が激化するイラクで、数千人規模のデモや集会が相次いでいます。デモはイスラム教シーア派、スンニ派の垣根を越えて広がっています。

 アラブ首長国連邦(UAE)の衛星テレビ・アルアラビアなどによると、イラクの首都バグダッドで八日、反占領闘争を続けるシーア派とスンニ派双方への連帯と支援を呼びかける集会が行われ、約四千人が集まりました。集会参加者は、イラク中南部を中心に反占領武装闘争を行うサドル師の写真を掲げて連帯を示すとともに、バグダッド西方のスンニ派地域ファルージャで米軍に対してたたかいを続ける住民に、医療物資や食料を届けようと訴えました。集会は、イラクの各部族の代表によって組織され、シーア派、スンニ派双方の住民が参加しました。

 一方、カタールの衛星テレビ・アルジャジーラによると、数千の人々が八日、バグダッドからファルージャ方向に向けデモを行い、ファルージャ住民に対して医療支援を行わせるよう米軍に対して求めました。イスラム系組織が主催したものです。

 現地からの報道によると、ファルージャを封鎖する米海兵隊は、外部からの医療や食料の支援を厳しく制限しているといいます。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp