2004年4月11日(日)「しんぶん赤旗」
「なぜ首相は会ってくれないのか」。願っていた首相との面会はこの日も実現しませんでした。迫る期限。焦り。命を救うためにできうる限りのことをしたい。イラクで拘束された日本人三人の家族は十日も、必死の訴えを続けました。記者会見では、国内で世界で広がる「命を救え」「自衛隊は撤退を」の運動や声に「励まされている」と話しました。
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夕方の会見。「見捨てないでほしい。国家を優先せず、三人の命の重さを考えて、将来を考えていただきたい」。今井紀明さん(18)の母親、直子さん(51)は言葉につまりながらこたえました。
「一番先に家族が会いたいのは国の代表、首相です。まず会って、直接声を聞いていただきたい」。郡山総一郎さん(32)の母親、きみ子さん(55)は、憔悴(しょうすい)した表情でいいました。
この日、家族が望んだのは、首相に会うことでした。が、午前十時四十五分、家族のもとには「会えない」の連絡が入りました。
首相が九日、派兵を決めた政治責任を問われ「私自身の問題ではない」とこたえた報道に、家族は「信じられない」といら立ちを募らせました。
高遠菜穂子さん(34)の妹、井上綾子さん(30)は、“デリケートな問題だから会えない”という小泉首相からの返事に「デリケートだからこそ、米軍の特殊部隊に頼るのは、大きなリスクを背負うことになる。なぜ、そのことが選択肢になり、自衛隊撤退が選択肢にならないのか」と、眼鏡をはずし、ハンカチで涙をおさえました。
今井さんの父親、隆志さん(54)は、「ナイフをつきつけられた息子の姿をみるたびに、心配になる。外務省はどうして誠実な対応をしてくれないのか。(自衛隊を撤退してほしいという)意思に変わりはない。他の方法が見えない」。
高遠さんの弟、修一さん(33)は「三人に一分でも、一秒でも早く、安全に、安心してもらいたい。(そのための)具体的な方法は撤退しか思いつかない。われわれもできうる限りのことをします」。
家族らは、イラクの平和を願って活動し、仕事をしてきた三人の姿をイラクの国民に、犯行グループに知ってほしいと、午後、アルジャジーラ放送のインタビューにも応じました。
「あきらめない」。家族を支えつづけているのは、世界や国内に広がる運動と励ましの声です。
今井直子さんは午前の会見で「絶望的とも思える中で、NGO、NPO、報道、周りの方がぎりぎりの時間がないなかで動いてくださって、励みになっています。息子に無事で帰ってきてもらい、みなさんにありがとうといってもらいたい」。
高遠修一さんは姉に呼びかけるように「あきらめんなよ。おれたちもあきらめない。ナオが救ってきた世界の人の命があります。そのお返しを、おれたちが世界の人とするから」といいました。