日本共産党

「しんぶん赤旗日曜版」2004年4月11日号

4月スタート

国立大学法人化でどうなる

国の予算減らされ、外部資金頼り

研究者からも不安の声


 全国89の国立大学(短期大学を含む)が4月1日、国の直接運営から各大学ごとの法人運営に変わりました。1949年の新制大学発足以来の“激変”です。いったいどうなるのでしょうか。坂本 健吾記者



国立大学法人が不安を抱えながらスタートしましたが…(写真は東京大学)

 文部科学省は、法人化について「各大学の自由度は大幅に拡大される」とバラ色の宣伝を繰り広げてきました。

 しかし、昨年まで大都市の国立大副学長を務めたある教授は、「政府は国立大に自主性を持たせてよくすると言っていたのに、予算を減らしていくというのでは元も子もなくなる」と危機感を強めます。

 それには理由があります。法人化後、国はひきつづきお金(名前は「運営費交付金」)を出しますが、専任教員の人件費以外は毎年1%ずつ減らすことにしたからです。年に92億円、2005年度から5年間で計460億円。中小の大学10校分の運営費交付金が消えてしまう規模です。

 「民間など外部資金をより積極的に導入しなければ、研究ができなくなる。基礎研究も、すぐ産業に応用できるものでないといけない。理系のお金のかかる基礎研究は、真っ先に危機を迎えるのではないか」

 こう話すのは、千葉大文学部教授の小沢弘明さん。早くから法人化の問題点を訴えてきました。

 「大学を産業界の要請に沿った研究を中心に行う組織に変える。学生も、産業技術力を身につけた人材の育成が主な役割になる」(小沢さん)。これでは、財界・大企業の“下請け”です。

 マスコミからも「自主性がどれだけ確保されるか懸念も残る」「産業と結び付かない研究分野が取り残される不安も払しょくできない」(中国新聞3月29日付社説)との声があがっています。

 そのうえ6年後には、各大学が掲げた中期目標に則して、文科省がつくる機関から“通信簿”をもらいます。ただの“通信簿”ではありません。内容次第では、大学組織の「改廃・統合」もあるというのです。

 こうした中、国公私立大学の評価のあり方を考えようと、3月末に「大学評価学会」が発足しました。同学会事務局次長で龍谷大助教授の細川孝さんは、「いま進められている大学評価は、経済的視点が一面的に強調されていますが、これでは研究も教育も目先だけになってしまいます。大学とはどういうものかを踏まえた評価を検討していきたい」と話します。

■授業料が高騰!?  

 心配なのは、学費です。国会は法人化にあたって、「学生の進学機会を奪うこととならないように」と決議しました。

 文科省は、各大学の判断で10%増までの引き上げを容認。このため、大学や学部によって、05年度から学費が上がる恐れがあります。

 4月から始まった法科大学院の授業料は、国立大法人で年80万円。他学部・院生の年52万円を大幅に上回りました。

 先の副学長経験者は、「教育費用のかかる医学系などの授業料を高くせよという主張は必ず出る。そうすると、これは授業料の高騰を招きかねず、さらに授業料を高くすれば私学との差が縮まり、国立大の民営化の話が出てくるだろう」と警告します。

■大学病院差額ベッド増!? 

 「予想を遥かに超える厳しい内容」――1月の「東京大学病院だより」に、運営費交付金削減に対する病院長の“悲鳴”が掲載されました。

 法人化にあたり、05年度から病院収入を毎年2%増やすよう義務づけ、達成できなければ運営費交付金を削るとしたからです。この方針では、東大病院では05年度5億円、第1期中期計画が終わる09年度には25億円が削減される計算に。「今の診療体制ではさらなる増収の余力はそれほど残されていません」と病院長は訴えます。

 全国大学高専教職員組合(全大教)書記次長の藤田進さんは、「経営効率化だけを優先すると、大学が研究費として負担している高度・先進(健康保険が適用されない)医療や、SARS(新型肺炎)など難治性患者を受け入れることが難しくなります。差額ベッドも増やさざるを得なくなる。すでに、全病床の半分まで差額ベッドを増やす計画の大学病院もあります」。

■官僚の天下り先に!?

 法人化は、文部官僚の天下り先確保のためだった!? 3月31日の衆院文部科学委員会の質疑で、こんな実態が浮き彫りになりました。

 取り上げたのは、日本共産党の石井郁子議員。国立大法人化に伴う新設ポストである経営協議会の学外委員のうち、23大学に文部官僚OBが就任することを暴露したのです。その顔ぶれは、国立大法人法制定時の遠山敦子文科相や同省事務次官、高等教育局長ら幹部がゾロゾロ。さらに、法人運営を直接担う理事は、26人も同省関係者が天下っています。

 石井さんは、法人法案の審議の中で天下りに対する懸念が党派を超えて出され、国会の付帯決議で「節度を持って対応する」としたことを指摘し、「これを節度があると容認するのか」と追及しました。


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