2004年4月12日(月)「しんぶん赤旗」
イラクでは日本人人質が解放されたとしても武装勢力が外国人を拘束して米軍に撤退を求める事件が相次いでいます。ドイツ人殺害が伝えられるなど情勢は依然深刻さの度合いを深めています。
これまでに人質になったと伝えられる人たちの国籍は米国、イタリア、日本、ブルガリア、イスラエル、スペイン、韓国、英国、カナダなど。すでに解放された韓国人七人、解放すると声明が発表された日本人三人を除いても、なお七カ国の二十人あまりが人質になっているもようです。
英紙サンデー・テレグラフ(電子版)は十一日、イラク国内で行方不明になっていたドイツ人二人が七日に殺害されていたと報じました。同紙は、殺害された二人のものとされる遺体の写真を掲載しています。
ドイツのテレビは先に、同国大使館の交代職員の乗った車列が中部のファルージャ近郊で武装集団の襲撃を受け、警護担当の対テロ班メンバー二人が誘拐され行方不明になったと報じていました。
同紙によると、車列はヨルダンのアンマンからバグダッドに向かう幹線道路で襲撃され、二人は銃撃戦で殺害されました。
また、衛星テレビ局アルジャジーラは十日、「サラヤ・アル・ムジャヒディン(戦士旅団)」を名乗るイラクのグループが送り付けてきたとする映像を放映し、米軍がファルージャの封鎖を解かなければ米国人人質を殺害すると警告しました。
同グループは、米軍が十日午後六時(日本時間十日午後十一時)から十二時間以内にファルージャの封鎖を終えるよう要求。いれられなければ、「彼(米国人人質)は(三月に)ファルージャで殺され、焼かれた者たちよりもひどい扱いを受けることになる」と述べました。
映像の中で米国人人質の男性はトーマス・ハミルと名乗り、イラクの連合国当局と取引のある民間企業で働いていると語りました。映像は、男性がイラク国旗を背に顔をカメラに向けているところを映し出しました。
このほか、アラブ首長国連邦の衛星テレビ、アルアラビアは十日、日本、ブルガリア、イスラエル、米国、スペイン、韓国の三十人を拘束しているとする武装組織のビデオ映像を放映しました。
画面上では、「英雄殉教者シェイク・アハメド・ヤシン旅団」と名乗る八人の覆面姿の人物が「米軍がファルージャの封鎖を解かなければ人質を殺す」「米軍と同盟軍の撤退を求める」と主張しました。
カタールを拠点にする衛星テレビ局。一九九六年十一月に設立。中東・アラブ諸国を中心に三十以上の都市に支局を置いています。米国のCNNとも比べられますが、アラブの立場からの報道や分析が売り物。イラク戦争の最中にも爆撃されるバグダッド市内の被害状況などを克明に放映しつづけました。そのなかで米軍の攻撃によって記者が殺されました。アルカイダ指導者のウサマ・ビンラディンやフセイン元イラク大統領の声や姿を放映、米国にとって都合の悪い事実も大胆に報じています。そのために米政府からにらまれています。