日本共産党

2004年4月13日(火)「しんぶん赤旗」

自衛隊イラク派兵

イラク、アラブ社会で日本への見方はどう変わったか


 イラクでの日本人三人の拘束は日本に衝撃を与えています。自分たちの要求を通すために人質をとるようなやり方は絶対に許せません。その一方で、事件を通じて浮き彫りになったのは、日本への見方が今、イラク国民をはじめアラブ・イスラム諸国で変わってしまったことです。いったいなぜなのか―。伴安弘記者

米軍の蛮行、その中で  

 日本人拘束事件は米軍によるイラク中部の都市ファルージャでの包囲攻撃や中南部でのシーア派勢力に対する武力弾圧が激化している中で発生しました。

 事件発生現場に近いとみられるファルージャでは米軍が米国人殺害事件への報復として大規模な軍事作戦を展開。武装ヘリ、F16を使った空からの作戦と米海兵隊の地上作戦で、これまでに六百人ものイラク民間人を殺りくする激しい弾圧を加えています。これがイラク全土で情勢を一気に悪化させています。

 一年前の戦争の再現ともいえる状況のなかで、イスラム教スンニ派、シーア派の宗派の違いを超えた占領反対のイラク国民の共同のたたかいが展開されはじめているのが現在の局面です。

 拘束事件の背景にあるのは、こうした蛮行を行っている米軍と、自衛隊を派兵した日本が同列にみられていることです。

 ファルージャを最近取材したフリーのジャーナリストの綿井武陽さんは、若者たちから「ヤバニ(日本人)?日本はもうイラクの友人ではない。米国も英国もアラー(神)の敵だ。米国に協力するやつらはみな敵だ」とののしられ、石まで投げつけられたといいます。

 ファルージャだけではありません。バグダッドなどイラク各地で同様の体験をもつ日本のジャーナリストが増えています。

「親切な日本人」のはずが

 犯人グループの声明は、「(日本は)われわれの友情と真心を拒否し、異教徒の米軍を補給面で支援し、(米軍)兵士たちがわれわれの神聖な土地を侵すのを助けた」と述べています。こうした見方はアラブ・イスラム諸国では今や共通の見方になっています。

 「イラク占領への日本の参加は、たとえそれがわずかな数による軍隊でも、日本がこれまで他国との外交関係をつくるうえで、親切で平和的な国として自らを演出してきた努力を台無しにするものだ」

 これは「親切な日本人よ、さようなら」と題したアラブ首長国連邦(UAE)のアルバヤン紙(二月十四日付)の論評です。

 同紙はさらに「復興支援というスローガンは、米国がイラク占領のためについているうそに新たなうそを付け加えるものでしかない」「日本は現在イラクで米国に協力することで、過去に(日本がアジア諸国で)犯したのと同じ過ちを繰り返そうとしている」と述べていました。

 オマーンの新聞アルワタン(三月十七日付)も次のように指摘していました。

 日本はイラク戦争で米軍の兵たん支援を行い、さらに自衛隊を派兵し、中東地域への「軍事的参入」を開始した。日本は「西側(欧米諸国)が過去と現在行っている歴史的な誤りを共有している」。日本が中東で望んでいるのは、米国の一国主義の世界秩序に組み込まれ、米英の尻にくっついていくことなのか。

 こうした感情はまさにイラク国民の感情そのものになりつつあります。

 アラブ・イスラム諸国での日本に対するかつてのイメージは、第二次大戦で米国の原爆投下で被爆した国、平和憲法をもつ平和な国、経済協力に積極的な国でした。日本の侵略の犠牲になったアジア諸国のそれとは異なっていました。しかし、日本が米国のイラク侵略に加担することによって日本をはっきり敵対者とみなすようになっています。アラブ諸国への経済協力も中東の“石油ほしさ”からでしかないことが見ぬかれるようになっています。

現地では「占領軍の一部」

 一月末、エジプトのカイロで本紙のインタビューに応じたイラク人のナイーム・シャブウト・フワエシュさん(39)=バグダッド近郊在住=は、「(イラク南部)サマワの多くの住民は自衛隊が占領軍(の仲間)だということを知っている。自衛隊が雇用問題などでイラク人に約束したことが実現できないと分かれば、市民の不満は直接自衛隊に向けられるのではないか」と語っていました。

 同氏はさらに、自衛隊は「占領軍の一部」という見方がイラクでは一般的で、米英軍などと同様の攻撃を受けるだろうと警告していました。

 ファルージャなどに対する米軍の軍事作戦に、今、多くの国が非難の声をあげています。

 ロシア外務省は九日、「病院、住宅建設物、宗教施設が攻撃を受けている。罪のない人々が殺害され、その中には老人、女性、子どももいる」として、占領軍に「軍事行動の停止」を求める声明を発表しました。

 アナン国連事務総長は十日に発表した声明で、イラクの民間人の犠牲が増えていることなどについて「重大な憂慮をもって事態を見守っている」と懸念を表明しました。

 ところが、小泉首相は日本人三人の生命がかかる問題で“自衛隊の撤退はない”と、米国追随の姿勢をあらわにしました。イラク国民をはじめアラブ諸国は、派兵国のなかから引き揚げを表明する国が出始めているなかでの日本政府のこうした姿勢を、米国の蛮行を支持しているだけでなく、米主導の占領体制に参加しているとみているのです。


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