2004年4月14日(水)「しんぶん赤旗」
イラクで武装勢力に人質とされた日本人三人の救出を願って短期間で数十万の署名が集められるなど、“政府は人質解放に全力をつくせ”の声が広がっています。
そうしたときに、竹内行夫外務次官が十二日、「外務省は今年に入ってイラクからの退避勧告を十三回も出している。それでも出掛ける人がいる」としたうえ、「安全、生命の問題であり自己責任の原則をあらためて考えてほしい」などとのべました。
外務次官といえば、邦人保護に責任を負う外務省の事務方の最高責任者です。人質の解放にむけ、一刻を争うときに、邦人保護の責任者が口にすべきことでしょうか。
しかも、NGO(非政府組織)や個人によるイラクでの人道復興支援活動を危険にさらしたのは、小泉内閣が国民世論の反対を押し切って強行した自衛隊派兵ではありませんか。自衛隊派兵以前から、日本のNGO五団体はイラクでの給水や医療活動、学校などの修復活動などにあたってきました。また、人質となった高遠菜穂子さんらも、イラクの子どもたちを救う活動をおこなってきました。
自衛隊のイラク派兵は、もともと憲法をふみにじるもので大義はありませんでした。その大義なき派兵で、NGOなどの行動を危険にさらすことは、以前から指摘されてきたことです。
アフガニスタンの人道援助などを進めてきた前田朗・東京造形大教授は「米英軍の軍事占領の現場への自衛隊派遣によって、自衛隊員だけではなく、イラクで活躍をするNGOやジャーナリストなど日本社会構成員も、反感と敵意と憎悪の対象にされてしまう」と指摘していました。(昨年七月十八日参院外交・防衛委)
陸上自衛隊の幹部自身、「民間人が狙われることは想定はしていた」と発言したと報じられています。(「毎日」九日付)
政府がいまやるべきことは、人質三人の「自己責任」を問うことではなく、三人の救出に全力をあげることです。そして、政府の行為によって民間人を生命の危険にさらすような状況を一刻も早く解消することです。 (藤)