2004年4月14日(水)「しんぶん赤旗」
イラク中部の都市ファルージャを包囲し千数百人の住民を無差別に殺傷している米軍に対して、アラブ諸国のメディアはナチスやイスラエルの残虐行為と比べつついっせいに非難の声をあげています。またイラク占領に加担する小泉政権も批判しています。(カイロ=小泉大介)
「米軍は現在、イラク中で市街戦に乗り出しており、事実上の第二次イラク戦争を開始している」(レバノンのデーリー・スター紙十二日付)。
イラク駐留米軍がファルージャで集中爆撃を行い多数の民間人を殺害していることに関し、アラブのメディアは、事態はまさに戦争状態だと指摘するとともに、米国が掲げたイラク戦争の口実さえもかなぐり捨てた暴挙だと非難しています。
エジプトの政府系有力紙アルアクバル十一日付は、「イラク解放を掲げた米軍はいまや、街を包囲し、家やモスクを爆撃し、女性や子どもを含む民間人の大量処罰を行う者へと変わった」「抵抗に直面した米軍はイラク人の意志をくじくために暴力とテロに訴えたが、結果は、イラク人のさらなる激しい抵抗をもたらし、占領軍にたいする怒りと憎しみの感情を強めるだけとなっている」と強調しています。
同国の日刊紙アルワフド十一日付も「新たなナチズム」と題する記事を掲載。「イラクの街は民間人への恐るべき大量虐殺と戦争犯罪の現場へと変わった。それは戦闘から避難していた民間人が集まっていたモスクに対する爆撃で始まった」「この攻撃は米軍の占領と陰謀にたいするイラク人の拒絶の気持ちを高めるだけである」と述べています。
アラブ首長国連邦(UAE)のアルカリージ紙十日付は「アパッチヘリやF16戦闘機によるファルージャおよび他都市への攻撃は真の大惨事であり破局に通じるものである。これにより、占領軍が使う自由と民主主義というスローガンのうそが明白となった」と指摘。
アラブ諸国では、米軍のイラクでの軍事作戦とイスラエルによるパレスチナ国民弾圧との共通性を指摘する声も高まっています。
ヨルダンの有力紙アッドストール十二日付は、一昨年春にイスラエル軍がパレスチナ自治区ジェニンに侵攻し大量虐殺を行ったことと比較し「両者にどのような違いがあるのか」「もし違いがあるとすれば、イスラエル政府はパレスチナ人の自由や権利や民主主義の必要性について語ることがないということである」と述べ、イスラエルとともに米軍の蛮行を痛烈に非難しました。
汎アラブ紙アルハヤト十日付は、イラクのフセイン政権崩壊一周年に関する記事で、「米軍はますますイスラエル軍と同じ方法を使うようになっている。米軍のF16戦闘機はイスラエル軍がガザを侵攻するのと同じようにファルージャを破壊した。一年前、独裁者サダム・フセインの銅像が崩れ落ちたが、昨日は『解放者』としてのジョージ・W・ブッシュの銅像も崩れ落ちたのだ」と述べています。
米軍の今回の攻撃がイラク人の統一したよりいっそうの激しい抵抗を呼び起こすとの指摘も少なくありません。「米国はついに、シーア派とスンニ派を占領反対で結び付けてしまった」(先のデーリー・スター紙)、「米国はイラクでベトナムよりもより大きく危険な事態に直面している」(汎アラブ紙アルクッズ・アルアラビ十二日付)などです。
さらにアラブ紙の一部は、米軍によるファルージャ爆撃と同時期に発生した日本人三人の人質事件をとりあげ日本政府を批判しています。エジプトのアルアクバル紙十一日付は、「民間人を人質に取ることは犯罪であるが、占領はそれ以上に醜いものだ。日本人誘拐の責任は、米国の圧力に負け占領に参加している弱い政府にある」と述べています。