2004年4月14日(水)「しんぶん赤旗」
「ポーランド部隊のイラク撤退を求める署名にご協力ください」―ワルシャワの中心部、メトロ・ツェントルム前広場で元気な声が響きました。毎週土曜日に欠かさず続けているポーランドの草の根平和団体「ストップ・ザ・ウオー・イニシアチブ」の宣伝署名行動です。(ワルシャワ=片岡正明 写真も)
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復活祭直前の十日はいつもより人通りが少なかったものの、署名用紙はしだいに埋まっていきます。「ストップ・ザ・ウオー・イニシアチブ」の活動家の一人、アーニャ・オシペンツァさん(28)が「イラク情勢の悪化で、ポーランド兵がまた三人負傷しました。ポーランドはイラクから撤退すべきです」と訴えると多くの青年が立ちどまります。小さな男の子を連れたイザベラさん(27)は「この子が戦争にいくようなことのない世の中にしてほしい」と署名しました。
イラク情勢の悪化で、ポーランド部隊の駐留するカルバラを中心とする地域でもひんぱんに戦闘が起きています。ポーランド部隊の駐屯地はイスラム教シーア派住民が住む地域で比較的穏やかな安全な地域のはずでした。しかしここ数日で情勢は急激に悪化。六日にはポーランド兵三人、ブルガリア兵二人が負傷。八日、ポーランド部隊は二十人のイラク人を殺しました。まさに戦場となっています。
ポーランド部隊には対テロの特殊部隊も含まれており、「テロリスト」拘束の任務に携っています。
ポーランド最大の日刊紙「選挙新聞」九日付は、兵士の家族の意見を特集しました。「いったいイラクで何が起こっているのか。電話で息子は何も答えてくれない」「軍事衝突から三日目、イラクに行った恋人は陣地から一歩も出られないといっている。早くすべてが終わって、帰国した彼の胸で泣きたい」―悲痛な家族の叫びが伝わってきます。
ポーランド国民の多数はイラク戦争反対、イラクからのポーランド部隊撤退に賛成です。しかし、ポーランドには二〇〇二年九月まで、市民の声を伝える草の根の組織がなく、政治家の権謀術数によって平和の願いはしばしばもみ消されてきました。北大西洋条約機構(NATO)加盟が問われた一九九九年にはわずかに民族主義的右翼がNATO加盟に反対しただけ。「NATO加盟反対」の運動は起きませんでした。
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二〇〇二年九月に米国のイラク先制攻撃戦争が起こる可能性が強まった時に、「どうしても米国の戦争を止めなければ」という思いから結成されたのが「ストップ・ザ・ウオー・イニシアチブ」です。
旧体制崩壊から初めて結成された草の根平和運動は、大きな組織からの援助がない中で、二〇〇三年二月十五日には一万人デモ・集会を開催。今年の三月二十日の「国際イラク反戦デー」にも二千人の集会を組織しました。毎週土曜日の宣伝署名活動は百回を超すにいたっています。
代表者のフィリップ・イルコフスキさん(28)は「東欧諸国では、人びとは戦争に反対していても、長く続いた強権主義と民主主義の未発達のために、自分の行動が政治を変えられるという確信を持つまでにはなっていません。でも運動はだんだんと大きくなっています。もっと多くの人が参加すればそれだけ大きくポーランド政府にも影響を与えられます」と語ります。
次の大きな平和行動は、首都ワルシャワで予定されている欧州経済サミット(ダボス会議を開催する世界経済フォーラム主催)開催中の四月二十九日です。