2004年4月15日(木)「しんぶん赤旗」
「定年まで40年働いても、年金では暮らしていけませんね」
「働き続けると、少ない年金が、さらにカットされるというし…」
定年退職を間近にした労働者たちの会話です。
2003年内閣府の世論調査では、「公的年金だけで老後暮らせますか?」の問いに60%の人が「日常生活費もまかなえない」と答えています。「年金だけでは暮らせないとき、あなたはどうしますか?」という問いには41%もの人が「働く」と回答しています。
ところが、働きながら老齢厚生年金を受給すると、在職老齢年金となって、暮らせないような低額の年金でも現在の仕組みでは減額されてしまいます。
この在職老齢年金の仕組みについて考える前に、確かめることがあります。働くといっても多様なケースが考えられるからです。あなたは、どんな働き方をしますか?
(ア)週30時間未満の、パートか嘱託で働く
(イ)厚生年金制度のない個人経営の事務所などで働く
(ウ)自分で起業し、自営業者になって働く
(エ)今までの会社の再雇用制度で引き続き正社員として働く
(オ)正社員として再就職し、厚生年金に加入して働く
(ア)(イ)(ウ)のケースでは、働いていても再び厚生年金の被保険者にはなりませんから、在職老齢年金には該当しません。賃金と年金を全額受け取ることができます。
再び厚生年金の被保険者になって働く(エ)(オ)のケースだけが、在職老齢年金の対象になり、年金がカットされたり全額支給停止になったりするという仕組みです。
65歳未満で働く場合――65歳前に受給する老齢厚生年金は、現行では必ず2割がカットされます(審議中の政府案では改定されます)。そのうえで、賃金と年金の合計額に応じてさらにカットされる仕組みです。(早見表1参照)
65歳以上で働く場合――02年4月から、厚生年金は加入上限年齢が65歳から70歳未満に引き上げられました。それに伴って65歳以上70歳未満の人も、新たに在職老齢年金の対象者とされました。ただし一律2割カットは行われず、老齢基礎年金は全額支給されますので、65歳前よりは緩やかな仕組みとなっています。賃金の額と老齢厚生年金の合計額が月48万円を超えた部分の2分の1がカットされる仕組みです。
早見表2でみてみましょう。たとえば賃金の額が30万円で年金月額が20万円の場合、合計で50万円になるので、48万円を超えた2万円の2分の1(1万円)がカットされます。在職老齢年金は20万円から1万円引いた19万円になります(早見表2の、賃金の額30万円と年金月額20万円が交差するところが19万円)。
それでは、来月60歳で定年退職するB太郎さんが、新しい会社に正規社員として再就職し〈(オ)のケース〉、厚生年金に加入して、月収20万円(賞与なし)で働く場合の在職老齢年金の見込み額を、図と早見表1・2を参考にしながら算出してみましょう。
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B太郎さんの60歳時の年金見込み額は報酬比例部分(図(1))だけです。62歳になると定額部分(図(2))が加わってきます。同時に配偶者の加給年金額(図(3))も加算されます。B太郎さんの厚生年金加入期間は20年以上あり、扶養されていた妻の厚生年金は20年未満だったので、加給年金は妻が65歳になるまで月額約3万3000円が支給されます。加給年金は本体部分が一部でも支給されればカットされません。B太郎さんの60歳から受け取れる在職老齢年金見込み額(計算表)は月額8万円、62歳からは14万1000円、65歳からは17万円です。
老後や暮らしへの不安がつのります。年金支給開始年齢の65歳繰り延べスケジュールを元にもどさせることや、今国会で審議中の年金改悪法案を廃案にして、最低保障年金制度を創設させましょう。
(社会保険労務士 鈴木 静男)
*毎週一回掲載します。