2004年4月16日(金)「しんぶん赤旗」

前文書き換え、「戦力不保持」削除

改憲で「論点整理」の素案

自民

　自民党憲法調査会の「憲法改正プロジェクトチーム」（杉浦正健座長）は十五日、同党の憲法改正案作成の土台となる「論点整理」の素案をまとめました。

　前文を含め憲法全体を見直し、焦点の九条「改正」では自衛のための軍隊の保有、集団的自衛権の行使を認める方向が示されました。六月までに調査会で正式決定し、今秋から論点整理にもとづき憲法「改正」案要綱の作成に着手する方針です。

　憲法前文についての共通認識として、(1)憲法前文は書き換える(2)前文の議論は、最初に議論し、各条文の議論を経て最後に再び議論する―ことを明記。

　前文に「盛り込むべき事項」として、「現行憲法の国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の三原則」「わが国の歴史・伝統・文化・国柄、健全な愛国心（わが国のかたち、アイデンティティー）」「誤った平和主義、人権意識への戒め」「第９条の見直しを反映させる」ことなどを列挙しました。

　九条については、「自衛のため、国際協力のための軍隊は必要。第二項を改正すべき」として、現行の「戦力不保持」規定の削除を明確にし、「自衛権の中で個別的・集団的自衛権があり得ると認めるのが当たり前」としています。

　憲法裁判所の設置の検討や道州制の推進のほか、環境権やプライバシー権、「知る権利」にかんする憲法規定の検討もかかげています。

　論点整理はこれまでの同プロジェクトチームでの議論を踏まえ、憲法の各章、条項ごとに「改正」の方向性や検討項目を示したものです。

自民チームの論点整理素案　（要旨）

　自民党憲法調査会プロジェクトチームがまとめた論点整理素案の要旨は次の通り。

　【前文】憲法前文は書き換える▽国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則やわが国の伝統や健全な愛国心などを盛り込む▽誤った平和主義、人権意識への戒め▽第九条の見直しを反映させる。

　【国会と内閣】二院制は賛否両論、首相公選制は反対が多数意見だった。

　【司法】憲法裁判所の設置は幅広く検討すべきだ。

　【国民の権利及び義務】環境権とプライバシー権は新しい権利として共通する▽知る権利を充実させてほしい。

　【地方自治】道州制は進めるべきだ。

　【安全保障】九条一項はこのままでよい▽自衛、国際協力のための軍隊は必要で、九条二項を改正すべきだ▽自衛権の中で、個別的・集団的自衛権を認めるのが当たり前だ▽集団的自衛権の内閣法制局の解釈は承知できない▽フルサイズの集団的自衛権は国民的コンセンサスは得にくい。

　【天皇】天皇制はあえて元首と書かなくてよい▽元首と明記し、権力と切り離すべきだ。

　【改正】憲法改正の発議要件を過半数とすべきだ▽国民投票の手続き法を早急にまとめ、国会に提案すべきだ。