2004年4月16日(金)「しんぶん赤旗」
イラク情勢重大局面 |
今井さん、高遠さん、郡山さんの三人の解放を受け、いま私たちが考えるべきことはなんでしょうか。
イラクでは今、全土で戦争といっていい状態がつづいています。それを象徴するのが首都バグダッドに近いファルージャです。人口二十万人のこの町は、米軍の包囲下にあり、市民が毎日殺されています。ほぼ一週間の間に女性、子ども、老人など市民六百人以上が米軍によって殺害されました。
ファルージャの最近の様子について、十四日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、ファルージャの診療所に医薬品を届けるために町に入った女性ボランティア、ジョー・ワイルディングさんや市民の話をこう伝えています。
「二人の子どもが頭を撃たれて横たわっていましたが、まもなく死にました。もう一つの部屋には腕を撃たれた年老いた女性がいました。手には白旗が握られていました」
ワイルディングさんは、住民とともに、町のなかに散乱する遺体を収容してまわりました。
「銃を手にした死体もありましたが、ある家の入り口では老人がうつぶせになって倒れ、そばで小さな女の子が『おじいちゃん! おじいちゃん!』と泣き叫んでいました。
救急車がサイレンを鳴らし走ってきましたが、突然銃撃を受けました。発砲してきた方角を見ると、住宅の屋根の上に陣取った米海兵隊の姿が見えました」
同紙の記者は、攻撃がやんだ合間に町を脱出してバグダッドにやってきた市民と会いました。
四歳の男の子アリ・ナサル・ファディル。やっとバグダッドの病院にたどりついたものの、医師はその子の父親にいいました。「助かる見込みはほとんどない」
米軍は町を脱出する市民にも発砲したといいます。重傷の父親にかわって十歳のワエド・ホダ君がいいます。「ファルージャから出たらアメリカの狙撃兵が撃ってきたんだ。車から飛び出して近くの家に逃げ込んだ。町はもうめちゃくちゃになっている」
十四日、日本の国会。
党首討論で、日本共産党の志位委員長は、小泉首相に次のように迫りました。
イラク全土で占領軍とイラク国民の衝突という事態が広がっており、その最大の焦点がファルージャだ。首相と私はイラク戦争の大義については立場を異にしているが、こうした国際人道法をも無視する戦争行為について許さないという立場をはっきりとるべきではないか。「こういうやり方は支持できない」と言明すべきではないか。
小泉首相はいろいろいいながらも認めました。「戦闘状況においてたいへん遺憾な状況が起こっているのは事実だ」
小泉首相は、民主党の菅代表の質問にこう述べています。
「ファルージャの状況は厳しいものがある」「(人質問題は)そういう方面と密接にからんでいる状況もある」
「遺憾な状況」という認識に立つならば、ファルージャの「町をめちゃくちゃに」する米軍の軍事作戦をやめさせるために行動を起こすべきです。ファルージャでの米軍の蛮行をやめさせること、たんに一時的な「停戦」だけでなく戦争行為をやめさせ、包囲も解く、それがこれ以上の市民の犠牲を食い止め、頻発する人質問題を解決する道でもあるはずです。
ブッシュ米大統領は日本時間十四日、ホワイトハウスで記者会見を行いました。内容は新たな戦争継続の表明でした。
「われわれは正しいことをしている」「必要なら決定的な軍事力を行使する」
ブッシュ大統領は相変わらず「テロとの戦争」といいます。しかし、いまファルージャで米国の横暴に抗議し、イラク各地で反米闘争に立ちあがっているのは、シーア派とかスンニ派などの垣根をこえて手をとりあうイラク国民そのものです。ブッシュ大統領はそういうイラク国民を敵にして新たな戦争を行っているのです。
日本の自衛隊はこの戦争を米国とともに行う「連合」軍の一員、有力な応援団です。以前は日本をもっとも友好的な国とみてきたイラクの国民が、日本に厳しい批判の目を向けている理由はそこにあります。報復戦争の拡大のなかで、自衛隊の撤退はこれまでにも増して急務となっています。
川口外相は十一日、武装組織に三人の解放を訴えたメッセージのなかでこういいました。「あなたがたが人質にしている三人は純粋の民間人でイラクの友人です」「日本の国民はイラクの人々に敬意と友情をもっています」
それならば、日本の国民と日本政府が、本当に「イラクの友人」となるためにどうしたらいいのか。そのことをいまこそ考えてみるべきではないでしょうか。
三浦一夫記者