2004年4月16日(金)「しんぶん赤旗」
【ワシントン＝遠藤誠二】十三日夜にブッシュ大統領がおこなった記者会見では、十五人の記者が大統領に質問をぶつけました。質問のすべてがイラクもしくは同時多発テロでの政権の対応にかかわるもの。その内容も、辛らつでした。記者会見嫌いで知られるブッシュ大統領の回答は、これまで数多くあった失言のたぐいはなかったものの中身がありません。厳しい質問に四苦八苦するブッシュ大統領の姿がありました。
最初に突き付けられた質問は「バグダッド陥落後、四月は最も犠牲者の多い月だ。イラクをベトナムに例えて泥沼化をいう人がいる。世論調査をみてもあなたの政策への支持は減っており、いまでは半数以下だ」。
大統領は「その例えは誤りだ。自由は簡単には達成できない」と開き直りました。
「米部隊は解放者として歓迎される、われわれは大量破壊兵器がどこにあるか知っている―どのようにこんなに間違って理解したのか。国民にどう説明するのか」と詰め寄る記者もいました。
ブッシュ大統領の答えは「サダム・フセインは大量破壊兵器を使用した。彼は生物・化学兵器をつくる能力を持っており危険だった。イラク国民はフセインを取り除いたことを感謝している。かれらは治安維持のためわれわれに援助してほしいのだ」と使い古されたものばかりの内容です。
ある記者からは、このままでは秋の大統領選挙に勝てないとまで指摘されました。
「あなたはイラクでの作戦を継続すると明確にされた。しかしますます多くの米国民が疑念を抱いている。今年は選挙の年だ。職を追われようとしてもやる価値があるのか」
ブッシュ大統領はいきりたちました。「私は職を失うとは思わない。国民が私を支持してくれると信じている」
同時多発テロ以前、ブッシュ政権は対応を怠ったとして、大統領に反旗を翻したクラーク元大統領特別補佐官に関しては、「クラーク氏はテロの遺族に謝罪したが、米国民はこのような謝罪をあなたからも受けるべきか」と質問が出ました。ブッシュ大統領は、「テロ攻撃の責任を負うのはビンラディンだ」とはぐらかしました。
激しい質問攻勢に、落ち着かない様子で、言葉を探して黙り込む一幕も。
最後の質問は、大統領の国民への説明責任に及びました。「大統領はよく演説をするが、内容は大同小異で、支持率は落ち込んでいる。国民との意思疎通に失敗していないか」。答えに窮した大統領は、「分からない…」と一瞬考え込み、「それは十一月の大統領選挙で、有権者が決めることだ」といら立ちを隠しませんでした。
ブッシュ米大統領が十三日、ホワイトハウスで行った記者会見の要旨は次の通りです。
質問 バグダッド陥落以来、四月はイラクでもっとも犠牲者の多い月になりつつある。イラクをベトナムに例えて泥沼化と言う人たちがいる。このベトナムとの比較にどう答えるか？
ブッシュ その例えは誤りだと思う。私はまた、その例えがわれわれの軍隊に間違ったメッセージを送り、敵に間違ったメッセージを送るのではないかと考える。これは困難な仕事だ。専制政治によって窒息させられていた国で自由を前進させるのは困難なことだ。しかし、われわれはこの方向にとどまる。それは、最終結果がわが国の利益になるからだ。
質問 米軍がイラクにどれだけ駐留しなければならないのか。軍隊を増派しなければならないのは、正当な評価か。
ブッシュ それはアビザイド将軍しだいだ。彼はいっそうの軍隊を求めていることを明確に示している。もし彼がそれを望むのなら、彼はそれを得る。
通常、われわれはイラクに約十一万五千人の軍隊を置いている。ある師団から次の師団へと切り替えた結果、現在は十三万五千人が駐留している。もしアビザイド将軍が援助のためにイラクに軍隊を維持したいと望むのなら、私は、イエス、アビザイド将軍、と言う準備が十二分にある。
質問 イラクは大量破壊兵器を持っていただけでなく、ラムズフェルド国防長官は、われわれはそれがどこにあるか知っていると言っている。どのようにしてあなたはそれほど間違って理解したのか。大統領は米国民に対してどう説明するのか。
ブッシュ つい先ほど帰国したイラク調査団のトップであるチャーリー・デュルファー氏が、最近の現地訪問で興味深い発見を報告した。サダムが生物・化学兵器を生産する能力があったこともチャーリーは確認している。つまり、彼（サダム）は危険だったのだ。国連に未申告だった長距離ミサイルを持っていた。
質問 大統領は、イラクでの任務をあくまで継続するということを今夜明確にされた。
しかし、ますます多くの米国民が疑念を抱いている。今年は選挙の年だが、たとえこのために職を失ったとしても、やる価値があると思うか。
ブッシュ 私は、職を失うつもりはない。私は米国民に対し、テロとの戦争に勝利する計画を持っていることを伝えるつもりだ。国民が私を支持してくれると信じている。
質問 あなたのイラクでの政策への国民の支持は低下しており、過去二、三カ月間に大きく低下した。
この問題でなんらかの形で失敗したと感じているかどうかだ。あなたは多くの演説をおこなってきたが、その多くは同じような文句が入っており、それぞれほとんど違いがない。
あなたは、アメリカの国民に正当性を主張するうえで、なんらかの失敗をしたのか。
ブッシュ 政治的文脈においてみれば、それは今年十一月に有権者が決定する種類の事柄だ。そのための選挙だ。
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。