2004年4月18日(日)「しんぶん赤旗」
政府の年金改悪法案が今、国会で審議されています。この年金改悪法案が成立させられると、小泉内閣のもとで相次ぎ強行されてきた負担増は、全体でどうなるのか。小泉内閣がはじめて予算編成をした二〇〇二年度からみてみると、積み上がった負担増は、〇六年度には年間七兆円を超えます。
山田英明記者
「百年安心」どころか… |
「百年安心できる」(公明党)と鳴り物入りで政府が提案した年金制度「改革」関連法案。しかしその中身は、「百年安心」どころではありません。小泉首相の総裁任期とされる〇六年度に限っても、保険料引き上げだけで年間約二兆円(平年度ベース)もの国民負担増になります。
政府案は、国民年金保険料と厚生年金保険料を一七年度まで毎年引き上げるとともに、給付を自動的に引き下げる制度を盛り込みました。将来にわたって負担増、給付減のレールを敷こうとしています。
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その「痛み」働き盛りも |
〇四年度予算で決めた内容を含めると、小泉内閣がこれまでに決めた国民負担増は、〇六年度には、年間五兆円に達します。その「痛み」は、働きざかりからお年寄りまでに及びます。
医療、介護、雇用などの改悪に加え、配偶者特別控除(所得税)の廃止、消費税免税点引き下げなどの庶民増税はすでに実施されました。三月二十六日に成立した〇四年度予算では、さらに、高齢者にたいする年金課税の強化や住民税均等割の増税、生活保護費の給付削減などを盛り込んでいます。
減税すすめ大企業優遇 |
小泉内閣は発足以来、国民に負担増を強いる一方で、大企業を優遇してきました。〇四年度税制「改正」でも、大企業グループの減税につながる「改正」(連結納税制度の付加税の廃止)などを盛り込みました。
法人税収は、不況と減税によって年々低下してきました。
〇四年度予算では、消費税収(地方消費税1%分を除く)約九兆六千億円にたいし、法人税収(国税)は約九兆四千億円しか見込んでいません。政府税調の石弘光会長は、「法人税の税収は今や、消費税より少ないよ。だから法人税なんて、将来の基幹税じゃないのさ」(「日刊工業」三月二十六日付)と言いきっています。
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消費税増税競う民主党 |
「租税負担と社会保障負担を合わせた企業の公的負担を抑制する」(日本経団連、昨年九月)との財界の要望に答え、大企業の負担を軽くする一方で、国民に負担増を強いる小泉内閣。「『もうこれ以上、予算を削減するのはやめてくれ』というときに初めて財源がないから、消費税を上げるというなら分かる」(昨年九月)という小泉首相の発言どおり、消費税増税に向けたレールが敷かれつつあります。
自民、公明両党は、〇四年度税制「改正」大綱で、〇七年度をめどに「消費税を含む抜本的税制改革を実現する」と明記。与党幹部が相次いで「消費税のことも含めて(年金の)財源を考えていきたい」(自民党・額賀福志郎政調会長、三月二十一日、NHKの討論番組)、「社会保障全体の財源として消費税を考えている」(公明党・北側一雄政調会長、同)と発言しています。
民主党は、現行の消費税にさらに3%を上乗せする年金目的消費税を、〇七年度から導入することを打ち出しました。
社会保障財源の確保を際限ない国民負担増と消費税増税に頼るか、空前の利益をあげる大企業に応分の負担を求める道を選ぶか、今、政治が問われています。 時事通信社の調査では、東証一部上場企業の22・5%にあたる二百三十七社が、三月期に過去最高の経常利益を上げる見通しです。 しかし、日本の企業の税と社会保障の負担率は、ヨーロッパ諸国の五―七割にすぎません。企業の利益に応じて、フランス並みの負担を求めると新たに約二十五兆円の財源が生まれ、イギリス並みにするだけでも新たに十兆円を超える財源が確保できます。 日本共産党は、公共事業、軍事費の削減などで財政のムダを減らすとともに、道路特定財源の一般化で当面の社会保障財源を確保することができると考えています。さらに、大企業に応分の負担を求めることで、将来の社会保障財源を確保することを提案しています。 焦点となっている年金改革でも、同様の考え方に立てば、基礎年金の国庫負担をただちに二分の一に引き上げ、「最低保障年金制度」を実現し安定的に維持することができます。 |